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推しを幸せにしたすぎて、漫画の中まで押しかけてしまったみたいです  作者: えくれあ


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第18話

 

「凛、そっちは選ぶの終わった?」

「うん!結芽は?終わった?」

「うん、こっちも終わったよ!」


 しっかり選び終わって、店内をただ眺めて回っていた凛の元へ、結芽が駆け込んでくる。

 結芽はすぐさま、自身が選んでくれたものを見せてくれた。


(わ、漫画と全く一緒)


 選ばれたのは、バスケットボール、それからバスケのゴール、そして1位といえば金メダル、ということから優勝できるようにと選ばれた金色のアルファベット。

 結芽と悠のはイニシャルのYが、凛と凌空には同じくイニシャルのRが選ばれている。


(すごい、漫画と同じやつ、しかも凌空とお揃いのやつが、私もゲットできちゃうんだ)


 読者の1人としては、この上なく嬉しいことである。

 凛は浮かれてしまいそうになるのを、結芽の手前ということもあって必死に耐えた。


「素敵だね」

「ほんと?凛も気に入ってくれたなら、よかった」


 結芽は安心したように笑うと、きょろきょろと辺りを見渡す。


「ね、凌空は?」

「あ、凌空は、私たちの方、作りに行ったの」


 このお店では選んだものを持っていくと、会計後キーホルダーやチャーム等にして渡してくれるシステムである。

 凌空がまとめてやってくると申し出てくれたため、凛は一人店内でぶらぶらとしていたのだ。


「そっか。じゃあ、私も4人分作ってこよっ!」

「え?凌空には、見せなくていいの?」


 悠はおそらく、結芽が選んでいる間、傍で見ていたはずだから内容は確認済みだろう。

 けれど、凌空は結芽が何を選んだか、把握していないはずである。


(任せるって言ったんだし、駄目だとは言わないだろうけど)


「凌空は駄目って言わないでしょ、そもそも、任せるって言ったんだし」


 今、まさに凛が考えていたことと、同じようなことを結芽が言葉にして発した。

 タイミングの良さもあって、凛はつい笑ってしまう。


「そうだね。大丈夫だよね」


 4人でのお揃いになったら、凌空も使ったりするだろうか。

 そんなことを考えながら、凛は結芽の後ろ姿を見送った。




「次はどうする?」


 出来上がったキーホルダーを受け取った悠が、皆へと訊ねた。


「うーん、どうしよう……」


 結芽は首を捻っている。

 凌空は何も言わない。

 どうやら、誰も、これ以上どこか周る予定を考えてきてはいないようだった。


(私は、ちょっと、休みたいかも)


 以前の凛であれば、まだまだはしゃいで遊んでいたことだろう。

 だが、今の身体はどうにも疲れやすいらしい。

 身体が疲労感でいっぱいで、非常に重く感じていた。

 ちょっと、カフェにでも入ろう、そう提案でもしてみようか、凛がそんなことを考えていた時だった。


「特に決まった予定がないなら、ゲーセン行かない?前に行った時は、途中ではぐれちゃったし」


 先に悠がそんな提案をしてしまったため、凛は提案できずに終わってしまった。


(そうだよね。中途半端なまま、はぐれちゃったもんね)


 しかも、わざとである。

 そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいにもなるし、せっかくの提案を断るのも申し訳ない。

 凛は、そう考えて、悠の提案を受け入れることにした。


「いいね、行こうか。大きいぬいぐるみとか、取れるかな」

「あ、UFOキャッチャー?どうだろう、試してみようか」

「うん、じゃっ、行こう!」


 悠と笑いあって、行先であるゲーセンに向け歩き出そうとした時だった。


「悪い、結芽と2人で行ってくれ。凛とちょっと用があるのを思い出したんだ」


 凌空がそう言って、凛の手を引いた。

 手を掴まれた凛も、その隣にいた悠も、ただただ驚いたように凌空を見上げる。


「え?用……?後じゃ、だめなの?」

「うん。今じゃないとだめ」


 この前はぐれてしまったからこそのゲーセンなのに、今度は最初から行かないなんて、さすがに悠に申し訳ない気がしてならない。

 しかし、凌空は一切引いてくれる気はないようだ。

 せめて用件が何かわかれば、もう少し説得材料もありそうな気もしたけれど、凌空は頑なにとにかく今じゃないと駄目な用だとした言ってくれない。

 結局、凛が折れるしかなかった。


「って、ことだから、結芽」

「しょうがないなぁ……、悠、行こうか」


 ごねるかと思った結芽は、あっさりと悠と連れ立ってゲーセンに向かう。

 未だ凌空にしっかり手を掴まれたまま、凛はただ、呆然と2人を見送った。


(これも、2人っきりにする、ため……?)


 気になるのは、漫画では、このエピソードではそんなシーンなどなかったことである。

 結芽は、今回は、お揃いをゲットしたことで満足していたから、凌空に二人っきりにして欲しいなんて言わなかったのだ。

 またしても原作とズレてしまった気がして、凛はまた少し不安を覚えた。




「ねぇ、凌空、用っていったい何なの?」


 こんな場所で、今じゃないとだめだという急ぎの用なんて、あるようには思えない。

 凛は、そう思いながら凌空に問いかける。


「ん?あー、とりあえず、その辺の店入って、お茶でもしながら休憩、かな」

「え?」

「疲れてんだろ?」

「あ……」


 全て見抜いたような凌空の視線が、凛を貫いた。

 凛は、ばつが悪そうに目をそらす


「気づいて、たんだ……」

「まぁな。休みたいなら、そう言えばいいだろ、ったく」

「り、凌空こそ、それなら用なんて言わず、皆で来ればよかったのに」

「あの状態で、俺がカフェ行こうって言ったって、おまえ、ゲーセンの後にしようとか言うだろ?」

「それは……」


 否定は、できなかった。

 悠が先に提案してくれたのに、それにわざわざ割り込ませてまで、休みたいという気持ちを優先させなかっただろう。

 それに、幼馴染という関係性のおかげか、悠と凌空なら凌空の方が断りやすい、というのもある。


「とりあえず、あそこに入ろうぜ」

「う、うん」


 凌空が指刺す先にあるのは、よく見かける大手チェーン店の看板だった。

 特にそこが気に入っている、とかではなくおそらくそこが一番近いお茶できそうな場所、だったからだろう。

 凛が頷いたことで、どちらともなくそちらへ向いて歩きはじめた。


「結芽も、気づいてた、かな……?」

「たぶんな」

「そっか」


 だから、あんなにあっさりと引き下がったのだ。

 ようやくそのことに気づき、なんだか自分だけが察しが悪いような気がして、凛は少し落ち込んだ。




 店内は先にカウンターで注文をしてから、席につくタイプの店である。

 凌空は凛に先に座って席を取っておくように告げると、そのまま注文に行ってしまった。


(席を取っておけ、なんて言ってたけど、早く座って休めるように、だよね……)


 店内はそれほど混雑しておらず、席に余裕もある。

 二人でカウンターに並んで注文しても、座る場所がなくて困る、なんてことにはならなそうだった。

 それでも、疲労感でいっぱいだった凛にとっては、凌空の言葉はありがたかったので、それに従った。


(でも、私が何飲むか、わかってるのかな……)


 2人分注文してくる、と言ってカウンターに並んだ凌空は、凛に何が飲みたいか、一切聞かなかったのだ。

 もしかしたら、途中でそのことに気づいて、慌てて凛に確認に来るかも、とか、スマホからメッセージで伝えた方がいいかも、とか凛は待っている間にいろいろ考えた。

 しかし、凌空は結局最後まで凛に何も確認することなく、2人分の飲み物を持って席についた。

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