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羅刹狩り  作者: HasumiChouji
第1章:絆を断ち切る者(ビラムバー)
9/13

(8)

 その事件が起きた後、真佐木の奴が珍しく沈んでいた。

 多分、普通の学校に通っていたとしても、起きたような……痛ましいが、ありふれた事件だ。

 いや、普通の学校よりも、ある意味では「閉鎖社会」であるここでは……より起きる確率が高くなりそうな事だ。

 早い話が、いじめによる自殺者が、俺達のクラスから出た。

「おかしな事を考えるんじゃないぞ」

 俺は、隣の席の真佐木に、そう声をかけた。

「安心しろ。楽で現実的な道を選ぶのは、私の主義に反する」

「だから、楽で現実的な道を選べって言ってるんだ」

 真佐木はサイコ野郎なりに、自分に課してる倫理が有る……らしい。

 だた、その倫理が、どこかブッ壊れてるだけで……。

 死んだのは、真佐木と特に親しい奴でもなかった。

 真佐木にとっても俺にとっても、死んだ奴は「クラス全員の名前を言え」と言われた時に「うっかり言い忘れる奴」のベスト5(ワースト5かも知れないが)に入ってそうな……そんな感じの奴だった。

「楽で現実的に見える道の先が地獄でもか?」

「時には妥協し……」

 そう口に出した途中で気付いだ。

「お前さ、本当に『結果的に、自分がいじめを見逃したせいで、人1人死んだ』事に罪悪感を感じてるのか?」

「何言ってる?」

 本気でキョトンとした表情(かお)と口調。

 ふざけてる時ほど、大真面目に思える表情(かお)や口調になる奴が……この表情(かお)と口調。

 今度は、俺が頭を抱える番だ。

 マズい……。

 退()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のか、俺は?

 しかも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ここで人を殺して退学になっても……その後、一般社会で、進学や就職の際の履歴書に堂々と「犯罪歴:無し」と書いても、倫理的にはともかく、法律上は嘘を言ったとは見做されない。

 ここは、そういう……冷静に考えると……異常な場所だ。

 まぁ、これまた冷静に考えると、俺達は「実態は『人喰い』だが、一般人にとっては普通の人間と見分けが付かない」化物を殺す為の人間になる事を期待されてる訳なので……結局、俺達の行き着く果ては「正常な社会を護る異常者」なのだろうが……。

 皮肉な話だ。俺達の中で、自分が「正常な社会を護る異常者」になる未来を避けようとしてるのが……元からの異常者だってのは……。

 ポン……。

 横で、真佐木が「いい事、思い付いた」って感じて手を軽く叩く。

「お前……案外、頭いいな」

 うるせえ。

 こっちは、これから、お前が今からやろうとする事を防ぐ為に、頭を……そして多分体もフル回転させなきゃいけないんだ、こんチクショウ。

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