表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
羅刹狩り  作者: HasumiChouji
第1章:絆を断ち切る者(ビラムバー)
4/8

(3)

 この世界には「羅刹」と呼ばれる、人にそっくりな……そして、人に混って暮している「異類」が居る。

 もっとも、普通の人間には、その「羅刹」の存在は秘匿されているが。

 奴らは、「気」と呼ばれる生命力や精神力と深い関連が有るらしい未知なる超常の力を生まれながらに操る事が出来る。

 正確には、ほんの少数の「羅刹」達は例外だが。その「気」を操る能力を欠いた「羅刹」達は……人間で喩えるなら「日常生活に支障が有るどころか、高度な医療の恩恵を受けなければ生きる事さえままならない先天的身体障碍者」のようなモノだそうだ。つまり、「気」を操る能力が無い「羅刹」が生まれたとしても、人間で言う思春期まで生存出来る可能性は、ほぼ(ゼロ)らしい。

 この「気」と呼ばれる力は、人間も操る事は出来る。ただし、先天的な素質と凄まじいまでの努力の両方が揃った場合のみだ。

 そして、俺達人間が殺人的な訓練の末に、ようやく獲得出来る能力を生まれ付き持っている恩恵の代りに……「羅刹」達は、とんでもなく「燃費」が悪い。

 「羅刹」どもも、人間と同じ食料を食べる必要が有るが……自分の生命を維持するには、それだけでは不十分で、他者を殺して「気」を奪う必要が有る。しかも、その「気」は……一般的な動植物の「気」では何故か駄目らしく、人間か同族の「気」である必要が有る。

 とは言え、「羅刹」どもにとっても、流石に「同族喰い」は人間にとっての「人肉食」のような異常行為で、同族を捕食している「羅刹」は、今の所、一体しか確認されていない。それも、今の時代は一体しか居ないの意味ではなく、判っている限りでは、今、この時代に「同族喰い」をやってるたった一体を除いては、過去のある程度以上の信頼性が有る記録にも、そんな「同族喰い」は見当らないらしい。有るとしても真偽不明の昔話だけだ。

 「羅刹」が他者から最も効率良く「気」を奪えるのは、相手がネガティブな感情に囚われて死んでいく時だ。ネガティブな感情と言っても色々な意味が有るが……憎悪や怒りのような一般的に「ネガティブ」と呼ばれる事も有るが、それが殺人のような人間社会の基準で許し難い悪事であっても「何かを成そうとする」事につながるような積極性の有る感情は「羅刹」にとっては「死にゆく者から気を奪う」事の邪魔になる。

 絶望や恐怖のような消極的で無気力や諦めに近い感情……そんな感情に囚われて死んでいく者こそ、「羅刹」にとって「骨の髄までしゃぶり尽せる獲物」に他ならない。

 俺も、子供の頃に、親を羅刹に殺された。

 俺は、親が恐怖に囚われ、羅刹に命を吸い付くされる光景(さま)を自分の目で見る羽目になった。

 だが、その羅刹も、羅刹どもを狩っている「組織」の戦士により、同じく俺の目の前で倒された。

 そして、俺は、両親を殺した羅刹を更に殺した「組織」の中でも最強の戦士・緒方徹真(てつま)の養子になり、そして名字も、実の親の「堤」から養父の「緒方」に変っている。

 今、俺は、羅刹を狩る者達や、その支援要員を養成する「組織」の学校に通っている。

 毒親だった実の親から、俺を救ってくれたのは、ある意味で、あの羅刹だったのに……何故、羅刹を狩る者を目指そうとしているのか……。

 自分でも良く判らない。

 気取った言い方をすれば、俺は養父(おやじ)以外の目指すべき大人(ロールモデル)を見付けられなかったのだろう。

 ……でも……自分でも説明が付かない。そんな消極的な理由で選んだ道なのに……何故、ここまでの努力が出来るのだろうか?

 自分で、自分の事を「努力している」と評するのは、よくよく考えればダサいが……夜中に目が覚めて……そして、さめた目で……ここで言う「さめた」は漢字だと「醒めた」と「冷めた」のどっちが近いかは別にして……自分のこれまでの人生を振り返った時に、何故、ここまで熱心になれるのか自分でも判らなくなる事が有る。

 だが、この「組織」の養成校は、ある意味で、異常な世界だった。

 「組織」の存在そのものが一般社会には知られていない。

 おそらく、「組織」は何らかの政府機関なのだろうが、では、「組織」を管轄している省庁とか大臣とかが何または誰なのかは……俺達には知らされていない。

 そして、この学校での実習中に何かの事故が……それこそ、人が死ぬレベルのものでさえ……起きても、一般社会は、その事を知る事は無い。

 冷静に考えたら、いつ腐り果てた無法地帯と化してもおかしくない、この学校に「秩序」をもらたしているモノ……それは、生徒1人1人が持つ、「組織」への忠誠心や「羅刹を倒す」という使命感だ。

 だが、よりにもよって、俺の同期に……その「秩序」を、あっさり破壊しかねない奴が居た。

 忠誠心も使命感も欠いた……この「学校」から、さっさと逃げ出す事しか考えていないのに……才能だけは、この学校の歴史上でも有数の化物が。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ