(3)
今更、親に甘えるような年齢でも無いし……第一、ずっと親とも思いたくもない本当の親に……自分で言うのも何だが……ネグレクトされてきたので、慣れているが、冬休みの間、養父と過ごせたのは大晦日から1月3日の間だけ。
3日の夕方には、親父の車で学校の寮まで送ってもらった。
「すまん……無神経な事かも知れんが……」
「何?」
親父の運転する車から下りた時、親父が、そんな事を言い出した。
「色々と有ったのは知ってる。でも……たまには、本当の御両親の墓にも行ってやれ」
「……わかった……」
そう返事をした自分の声は……自分で言うのもなんだが……「義務的」という単語がしっくり来る感じだった。
部屋に荷物を置いて、ジャージに着替え、体育館へ行くと……真佐木が居た。
黙々と……空手か何かの型を続けている。
学校で習ったモノじゃない。一体全体……どこで覚えたのか?
「練習に付き合うか?」
俺に気付いた真佐木は、そう声をかける。
「お手柔らかにな……」
「ああ、隠し武器は使わん。目と金的と喉……その辺りの急所への攻撃は無しでOKか?」
「それでいい」
だが……。
「構えなくて……いいのか?」
「まあな……」
リラックスしているのは判るが……でも、パッと見、つっ立っているだけ。
こっちも、どう構えれば良いか判らない。
す……っ。
気付いた時には、真佐木が俺に向かって歩き出していた。
思わず、突きを放つ……あくまで、牽制のつもり……だった。
「い……痛……」
あっさり、その突きを受け止められ手首の関節を極められ……。
思わず、真佐木の頭を狙い廻し蹴り……だが……。
天井と床が引っくり返った。
軸足を払われ……腕を極められたまま投げられた。
「相性の問題だ。私の戦い方と、お前の戦い方では、技量は、ほぼ同じでも、私の方が有利になる」
くやしいが……こいつの言う通りだ。
俺は自分から攻撃を仕掛けるのが性分に合ってるが、こいつは返し技の方が得意。
特に、体の小さい真佐木は……ずっと、相手の力を逆用するテクニックを磨いてきた。
「じゃあさ、お前が俺だったら……どうしてた?」
「さっきの最初の一発……それを放つのが早過ぎた……と思う。ギリギリまで引き付けた方がいい。あと、打撃中心でいくなら……動きは小さくとも、威力が有る……」
轟……。
そんな音が響いたような気がした。
たしかに、動きそのものは小さいが……全身の筋肉を総動員した回転。
そこから繰り出される肝臓撃ちが、俺の体に命中する寸前で止まる。
「撃ち方を工夫しろ」
何と言うか……こいつより強くなれる日が、ひょっとしたら来るかも知れない。
でも……コーチとか……そういう人に何かを教える事に関しては……こいつに勝てる日が来そうにない……。




