(1)
いつしか、俺達が、この「学校」の中で過ごす最後の数ヶ月になっていた。
真佐木は相変わらず「問題児なのに優等生」「学校一冷静な学校一の狂犬」のままだ。
しかし、それでも……「戦士」となる覚悟を、いつの間にか決めていたようだった。
一応、学年成績1位は俺だが、少なくとも、本気であいつと戦ったら……30秒間持てば運が良いって状態だろう。
真佐木の「おばあちゃん」が残したノートの解読は……全く進んでいなかった。
手掛かりとなるのは……ノートに挟まれていた、一枚の古びた写真……大昔の中高生男子が「男向けの格好いい服」と思うだろう感じの革ジャンを着ている女の子の写真だった。
女と言うより「女の子」と呼んだ方がしっくり来る……大概の人間が10代半ばだと判断するような……少なくとも、高校を卒業した年齢には見えない女の写真。
その「女の子」の背後には、興味が無い俺でも、かなり昔の型式だと判るバイク。
履いてる靴もバイク向きのモノらしいんで、多分、この女のバイクなのだろう。
ただ、真佐木が言うには「おばあちゃん」の若い頃の写真とは似ても似つかないらしい。
「まさか、『おばあちゃん』の恋人が未成年だったとはな……」
見ちゃいけないモノを見てしまったかのようなゲンナリした表情で真佐木は、そう言った。
「いつの時の恋人なんだよ?」
「20代後半だそうだ」
「その時の恋人が……その……」
「外見からして中学の終り頃か、高校の初めだ。ああ、クソ。相手が大人になるまで、一線は超えてなかったと信じたい」
「でも……『羅刹』に関して何かが書かれてるノートに挟まってたなら……えっと……」
「だとしたら……こいつは、わざわざ、秘密の記録に残さなきゃいけない特別な『羅刹』なのか?」
「え……えっと……そうかも……」
その話をした後、俺も真佐木もしばらくの間、考え込んだ。
「この『学校』は『羅刹』と戦う人間を養成する為のモノなのに……どうやら、『羅刹』に関する情報をロクに生徒に教えない方針らしい……。さもなくば、『組織』そのものが、私達が思ってるより遥かに『羅刹』について無知か……」
「え……えっと……何が言いたい?」
「遠い外国で、テロ組織が使ってる少年兵と同じよ〜な事だよ」
「はっ?」
いや……俺も、薄々、その事に気付いていたのに、あえて、その可能性から目を背けてたのかも知れない。
「お前……たとえば、30とか40まで『戦士』を続けられたとして……そんな齢になったお前からして、子供にしか思えない外見の『羅刹』をブチ殺す自信は有るか? いい齢した大人になって、子供にしか見えない相手を何人も殺す羽目になったら、正気を保ち続けられる自信は有るか?」




