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羅刹狩り  作者: HasumiChouji
第1章:歪な牙(クータダンティー)
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(17)

 あの3人が居なくなった事に関しては、表向きは、海部(かいふ)を、いじめ自殺に追い込んだ事の自責の念による退学、という事になっていた。

 同時に、真偽は不明だが……真佐木によって再起不能にされた格闘技教官も自殺したという噂も広まっていた。

 だが、多分……この学園に生徒として入り込んでいた「羅刹」は少なくとも4人。……水原・河合・杉田……そして、海部。そして、この4人は最初から互いが「羅刹」だと知っていた。

 そこに、運良くだか運悪くだか……「羅刹」にとっての「ご馳走」が出現した。

 深い絶望に陥いった、強い「気」を持つ人間……あの格闘技教官だ。

 それを海部が「抜け駆け」して「食って」しまい、残りの3人から制裁を受けた……。

 そんな所だろう。

 だが……本当に4人だけなのか? いや、生徒だけなのか?

 訓練と座学に明け暮れ……数週間が経ち……「そんな事を気にして何になる?」「判った所で何になる? 俺に何が出来る?」……諦めと自棄(やけ)っぱちの入り混じった感情が、いつしか、俺を日常に戻していた。

 よくよく考えれば、猛獣と一緒に、この閉ざされた「学園」の中に押し込められている可能性が有る訳だが……猛獣が本当に居たとしても、何もしない内なら……いや、本当に「何もしない」のか? そもそも、あの4人は、何の為に、この学園に入り込んだ?

「何を読んでんだ?」

 昼休み中に真佐木が小難しそうな分厚い本を読んでいた。

 ページをめくる手は異常に早い。

「歴史と宗教に関する本だ……トンデモに近い内容だがな」

「へっ?」

「死んだ『おばあちゃん』の家に有った」

「どんな事が書いてあるんだ?」

「インドと仏教の歴史に関する、ある仮説だ。元々は、英語の本で、書いたのは……インドがイギリスから独立した後の最初の法務大臣の弟子みたいな人らしい」

「はぁ?」

「紀元前二千年ごろに、インドにアーリア人と呼ばれる集団が侵入し、それ以前からインドに住んでいたドラヴィダ人と呼ばれる集団を征服した。で、今で言う白人に近い人種だったアーリア人はインドの上位カーストの人々の先祖となり、征服された方は下位カーストの人々の先祖になった」

「まぁ、よくある話だな」

「で、今のヒンドゥー教や、その起源であるバラモン教は、このアーリア人の宗教だった訳だが……」

「何か有るのか?」

「どんな宗教にも、大抵は、善神と悪魔・悪神が居る。その宗教での『善い事』を象徴するのが善神で、その宗教での『悪い事』を象徴するのが悪神・悪魔だ」

「そりゃ、そ〜だろ〜なぁ……でも、何が言いたい?」

「しかし、そうじゃない悪神・悪魔もまた、大概の宗教に存在する……その宗教における善と悪の枠組みの外に有る存在だ。言ってみれば、最初に言った『悪』が『何が善で、何が悪か?』という『御約束』の中で、善なる存在と対立しているとすれば、2つ目の『悪』は『何が善で何が悪かを決める基準そのものを破壊しかねない悪』だ」

「は? どういう事?」

「2つ目の悪は、その宗教が広まる以前に信仰されてた『古い神々』だよ。現在の善悪の基準によって駆逐された、古い善悪の基準を象徴する存在だ。けど、善悪の基準がいくつも有り得るなら、本当に正しいのは……どの善悪の基準だ?」

「なるほど……えっと……つまり、自分達がやってる事を法律違反だと自覚した上で、法律を破ってる悪人と……」

「本人達に悪意が無くても、存在してるだけで『今の法律は間違っているかも知れない』『今の法律をちゃんと守る奴が多ければ多いほど、社会は悪くなる一方かも知れない』って疑いを振り撒いてしまいかねない『誰か』って事だな」

「おい、そんな奴らが本当に居たら、その内……」

「ま、社会はマズい事になりかねないな。そして、バラモン教やヒンドゥー教では、善神に対する単純な悪神・悪魔……『何が善で何が悪か?』の『御約束』内での悪神・悪魔はアスラ……日本でいう『阿修羅』で、『古い神々』が悪神や悪魔と見做されるようになったのが……」

「何か、大体、オチが見えてきたけど……」

「そうだ。ナーガつまり蛇や龍の姿をした神や悪魔……そして、夜叉や羅刹だ」

「で、仏教やヒンドゥー教でいう『羅刹』と俺達が戦う事になる『羅刹』が同じモノなら、その……何だ? えっと、羅刹ってのは、古代に神様扱いされてたが、今じゃ悪魔扱いされてる連中だとでも言うのか? 待てよ……『人喰い』を神様扱いする宗教って、ロクなモノじゃねえだろ?」

「いや、もし、『劣った人種は滅んだ方が人類の未来の為だ』なんてロクデモない考えを抱いてる奴らが社会的影響力を持ってた……そうだな、ナチスが支配してた頃のドイツみたいな状況だと、どうなる?『人喰い』どもに『劣った人種』を『淘汰』してもらおうなんて考える奴も出てくるかも知れないぞ」

 たしかにそうかも知れない……。たまたま俺達は、そんな考えがトンデモないって思われてる時代に生きてるだけで……。

「で、話は、更にややこしくなる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()知ってるか?」

「インドだろ、そりゃ。仏教はインド発祥だ」

「違う、()()()()だ。釈迦の出身地は……()()()()()()()()()()()()()()()だったらしい」

「だとしたら……何だよ?」

「インドの上位カーストは、人種的にはいわゆる『白人』に近い。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、何って言うか……古い言い方だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「おい、話がややこしくなってきたけど……結論を言って……」

「トンデモ半分の話だと思ってくれ。インドの辺境で……人種的にもインドの他の地域とは違っていた……。そんな釈迦の出身部族が信仰していた『神々』はバラモン教以前の『古い神々』じゃなかったのか……ってな」

「えっ?」

「それが、この学校を出た奴らが戦う事になる……そして、この学校を運営している『組織』が戦っている『羅刹』と同じモノかは判らない。けど……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……それこそが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である可能性が有る。どの程度確かな話かは……言ってる当の私にも見当も付かないけどな……」

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