(16)
カチャリ……。
今度の鍵も……あっさり開いた。
そして……台座はまるで引き出しのように……。
「乾燥剤……あと除虫剤か?……それも、5年とか10年前に入れられたモノじゃないみたいだ」
「誰かが……って、お前の話では、1人しか『容疑者』は居ないが……その人が、定期的に……メンテみたいな事をやってて……そのメンテか……その中に入ってるモノを、お前に引き継がせたかった訳か」
「だと思います」
養父の指摘に、真佐木はそう答える。
そして……中に入っていたモノを取り出した。
「油紙か……」
「これで封がされ……どうしました?」
真佐木が指差した赤い何かを見て……養父の表情が厳しくなった。
「封蝋ってヤツだな。昔の西洋では、溶かした赤い蝋で封筒を閉じて……そして、蝋が固まる前に、判子みたいなモノを押してた」
「それが……どうか……し……ん? この梵字みたいなモノの意味が判るんですか?」
たしかに、養父の言う「封蝋」には、判子みたいなモノが押してあった。
判子は単純な形だった。
○の中に……真佐木の言った通り……字が一文字だけ……。これまた真佐木の言う通り、多分、梵字なのだろう。
「その梵字が、仏教の神仏を表わすモノなら……羅刹天って神を表わす梵字だ」
お……おい……。
「つまり……こいつの『おばあちゃん』は……『羅刹』どもに関する、何か危険い情報を握ってて、その情報を、こいつに受け継が……」
「いい推理だ。でも、お前が想像してる危険さを遥かに上回る可能性が有る」
「えっ?」
「羅刹天って呼ばれてる神は、日本や中国では、男の神様の姿で絵に描かれたり像に刻まれたりするが……インドでは……女神だったんだ」
「それが……どうかしたの?」
「そして、インドでの呼び名はニルリティ。唯一無二の『X級』……アンタッチャブル・ゼロの別名の1つと同じだ。そして……よくよく考えたら……その別名が、どこから湧いて出たのか、俺も聞いた事が無……」
「あ……あの……」
その時、真佐木の戸惑ったような声。
「盛り上ってる所、悪いんですが……余りに酷いオチです……」
「どうした?」
「読めません。見た事も無い字です」
そう言って、真佐木は、油紙の中から出て来た、古びた大学ノートの中身を俺達に見せ……。
「な……何だ? このミミズがのたくったような……いや、でも、どこかで見た事が……有るような……無いような……」
養父も戸惑っていた。
異常に下手な字……では説明が付かない……。明らかに日本語とは違う……そして、アルファベット、ハングル、梵字、アラビア文字……読めはしないが、見た事だけは有るモノも含めて、俺が知っている文字のどれとも違う……たしかに養父が言った通り……「ミミズがのたくったような」字が、延々とノートに書かれていた。




