(14)
「俺が新人の時に師匠代りになった先輩が……言ってみりゃ、あの人の最後の弟子だった」
久し振りの養父との再会の場は……真佐木の……早い話が子供の頃に「お祖母ちゃん」代りだった人の葬式だった。
俺は、クラスを代表してクラスメイトの親類で「組織」にとっては「伝説級の戦士」の葬儀に参列していた。
葬儀の参列者は少ない。結構な金持ち一族の1人で……「組織」の中でも伝説だった人だったにしては……。
そんなに大きくない寺でも、余裕で入る位だ。
「これから火葬場だ。行って来る」
背後から真佐木の声。
「あの……家族は……?」
「結婚してなかったし、子供も居なかった。死んだ後の後始末は、私の親がやる事になってる」
「そうか……」
「若い頃に、恋人は居たらしいがな……同性の……」
「えっ?」
「身近に、そんな人が居たから……小学校の頃、初恋ってヤツをした時に『自分は異常じゃないか?』なんて悩まずに済んだ。……恩人だ、私にとっては」
「そうか……」
真佐木と両親、そして、祖父母が車で火葬場に向かい……参列者も散って行った。
「どれ位、強い人だったの?」
俺は、養父に、そう訊いた。
「さっき言った、新人の頃の師匠に言われた事が有る。俺が上級戦士になったばかりの頃だ」
親父は、ため息を吐くと……遠くを見るような眼差しになった。
「『最盛期のあの人を山の頂上だとするなら……俺は、3合目辺りで脱落した。お前ほどの奴でも、5合目まで行けるかどうか』……ってな」
「実際さ……えっと……」
「ちょっと、やって見るか……軽い練習試合だ」
そう言って、親父は構えを取り……。
だが……。
判らない。
頭が真っ白になる。
まず、どう構え、どう動けばいいのか?
それさえも……。
「一度だけ、あの人に会った事が有る。引退して、最盛期を過ぎてた、あの人に、俺もそんな感じになった」
「えっ……?」
「最盛期の俺と、最盛期のあの人の差は……多分、今の俺とお前の差……どころじゃなかっただろう」




