(10)
「4人か……全員、座学棟の階段を登っている」
そこから……いじめられていた奴は飛び降り自殺した……。
監視カメラに写っている4人の内、3人は、クラス内で、自殺の原因となったいじめっ子グループと目されてた奴ら。名前は、水原一晃、河合清輝、杉田悠介。
そして、最後の1人は……もちろん、真佐木。
「何かが変だ……何故、もし、真佐木が、この3人を呼び出したのなら……何故、3人は呼び出しに応じた?」
嶋崎先生は、そう言った。
「あいつら3人のいじめが……海部が自殺した原因だって証拠を握ってるとか?」
俺と嶋崎先生は、宿直室を出て、走りながら、そう話す。
「あの3人は、お前や真佐木ほどじゃないが、上位成績者だ。言いたくはないが……その程度の事では、あいつらの弱味にはならん」
「じゃあ……?」
「行ってみて問い詰めるしか無いだろうな……そうだ……」
嶋崎先生はスマホでどこかへ連絡。
他の先生を応援に呼ぶつもりらしい。
あとは……何かが気になる……。
真佐木は……たしか……いや……喉元まで出掛かっているのに……言葉にならない。
いや……まさか……でも……。
「先生……」
「どうした?」
「この学校に……羅刹が入り込んだ事は有りますか? この学校の生徒を食う為に、人間のフリをして、生徒に紛れ込んで」
ごくり……。
嶋崎先生が唾を飲み込む音が聞こえたような気がした……。
いや……嶋崎先生が……呼吸法で自分の心を落ち着けようとしているのが判る。
その時、既に、俺達は屋上のドアの所まで辿り着いていた……。
嶋崎先生は……。
「噂しか知らん……俺がお前ぐらいの頃にも……そんな事が有った……と」
そう言いながら……嶋崎先生は、何かを覚悟したような表情で、屋上のドアを開け……。
「驚いたな……」
その瞬間、真佐木の声……。
「3人の内の1人だけかと思ったが全員とはな」
自分の予想が外れた事を淡々と告げてるだけの……ほんの少しの動揺も感じられない口調だった。
「違う……4人だよ」
声の主は……3人の1人……水原。
「俺達が自殺に見せ掛けて殺した海部も……俺達の同族だ」