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Villains  作者: 吉川 虎
光と影
1/6

影の異端者

悪者を倒す物語は大抵英雄がいる

悪役は倒されるだけの登場人物なのか

じゃあ英雄だけが主人公なの?


問一 悪役とは?

魔法社会が広がり、国という世界の境界線の撤廃と共に世界はひとつのエーデンという楽園になった。かつて、日本と呼ばれた地、サンランドでは世界三大魔法都市として発展し、人々は平和に暮らしていた。温かくて美味しいごはん、フカフカのベッド、変わらない普通の日常。そんな中、この平和な世界を嫌い日常を壊そうとする者達が、陰ながら暮らしていた…。



鬼頭(きと) 翡翠(ひすい)17歳。彼にとって世界とはただの作り物でしかない。神の創造物、与えられた宿命、そんなものただのお遊びでしかなかった。魔法なんて言うよく分からない物と一生向き合わなければならない、そんな社会が大嫌いだった。


強い魔法が使える者が勝ち組、弱小魔法じゃ歯が立たない。生まれた瞬間からこの世界は不平等だ。この世界の当たり前だと、使える強い魔法はただ一つ、相当才能があれば二つも三つも使えるかもしれない。そもそも強い魔法と言っても上から火・水・氷・電気・筋力増加系・風と言った所か。それに世界でいちばん多い得意魔法が防御魔法じゃ攻撃系の得意魔法を持った時点でほぼ勝ち組だ。世界のバランスはどうなっている。不平等にも程かある。ふざけるな。もっとおかしいのは勝ち組の奴らを贔屓して、クリミナルポリスなんて言う警察だか何だか分からない魔法を使って犯罪を犯す犯罪者と戦う組織を作った奴らだ。そいつらのおかげで世界は平和かもしれない。でも、そんなのおかしい、バカげてるおかしいと思わないのか。

「なんでだ。」

「ん?何が?」

独り言のつもりがどうやら誰かいたようだった。彼女、草薙(くさなぎ) 明璃(あかり)は俺たち異端者の中でも最強だ。得意魔法だって二個あるし運動神経抜群で、おまけに顔もいい。どうしてこんな異端者の集まりにいるのかよく分からない。彼女程の強さならクリミナルポリスに入れば、精鋭と言われても不思議では無い。勝ち組なのに。変なやつ。

「草薙はなんでこんな異端者の集まりにいるんだよ。もクリミナルポリスになればもっといい生活出来んだろ。」

何度も聞いた質問をもう一度投げかけてみた。ずっと答えは変わってないんだろう。素直で優しいこいつのことだ、一生変わらないんだろう。

「何回目?その質問。…何となくだよここなら私が私でいられる気がするから。」

いつもと同じ答え。いつもと同じで微笑みながら彼女は答えた。彼女は素直で優しいが時々とても悲しそうな、辛そうな顔をする。まっすぐな瞳の奥に、真っ暗な世界が広がっていそうな、そんな目をする。聞いてみたいそんな気もするが、どうしても聞けない。いや、聞いたらダメな気がした。草薙 明璃という、一人の人間が壊れてしまいそうだった。世界を壊したい俺でさえ明璃を壊すことだけは自分の手では出来ない。いや、明璃を壊したくない、ただの願望だ。

「あっ!そうだ。君に誕生日プレゼントをやろう!お姉さんからの大事なプレゼントだよ。」

明璃はそう言って自分のバッグから綺麗に包装されたプレゼントを出した。素直に受け取ると、明璃らしいなと思いながらも俺の悪い所が出る。

「お姉さんって、お前何歳だよ。」

照れると隠そうとしてこういう言葉ばかりが出てしまう。自分の不器用さに呆れる。でも明璃は気にすることなくすぐに返す。

「秘密だよ。」

「本当は三十路のおばさんなんじゃねぇのかよ」

「まさか。女子高生って言ってもバレない気がするけどなー。」

「100年生きたババア魔法使いの方が似合っけるけどな。」

冗談交じりの会話をしていると部屋に仲間が入ってきた。

「あれ、先客か珍しい。」

異端者の集団は意外とユーモアなセンスがあるやつが多い。世界を壊す事を望む俺たちでも、常に重い空気は流石に疲れる。冗談も大事なコミュニケーションだ。彼、遠野(おとの) 友樹(ともき)も冗談が好きなやつで呑気な奴だが実力は確かだ。俺と明璃と友樹は歳が近いからか自然と三人でいることも多い。

「遠野。おっすー。」

明璃は明るく友樹とグータッチをする。これもコミュニケーションの一環だろう。俺も友樹とグータッチをすると、友樹はソファに座ってくつろぎ始めた。明璃も座ると全員がマイワールドに入り明璃はスマホ、友樹は昼寝、俺はゲーム、という完全に自己中心的な行動が始まった。ここまで来ると、誰かが来ない限り三人はマイワールドを貫く。それが暗黙のルールというものだ。

1時間程たった頃だろうか。残りのメンバーが入ってきた。

「あれぇ。みんな来てたの?気づかなかった。」

この小さな集まりのメンバー、肥田野(ひだの) 京香(きょうか)がニヤニヤ不気味な笑みを浮かべて言った。彼女は不気味な性格で、考えている事がよく分からない真の異端者だ。得意魔法は闇で、暗闇を好む特性がある。

「ふーん。みんなお揃いか。俺たち遅刻?やべー。」

と最後のメンバー、墓前(はかまえ) 龍騎(りゅうき)がダラダラ入ってきた。彼は一言で言うチャラ男で髪もちゃっかり金髪に染めている。最近はピアスまでつけるようになった。得意魔法は洗脳でいかにも犯罪者らしい魔法だ。

「なぁ、いい情報手に入れたぜ。」

いきなり龍騎が俺の隣に座ると自慢げに言った。正直、龍騎が持ってくる情報とやらはどうでもいい物ばかりでそんなに期待はしていなかった。

「二日後、クリミナルポリスの結成記念日祝典で新たに追加されるメンバーが決まるらしい。」

どうでもいい話にあくびが出そうだが我慢していると、龍騎の口から

「ぶっ壊そうぜ。」

という言葉が聞こえてきた。一瞬空耳かと思ったが龍騎の目が本気だった。いい意味で期待を壊されたというのか。確かに出来るものならぶっ壊したい。でも、準備もしないで行ったってクリミナルポリスに捕まって俺たちは刑務所生活だ。そんなの絶対に御免だ。

「爆弾の用意はしておいたぜ。俺と京香で。どうする?」

「やるに決まってんだろ」

気味悪くつり上がった口から出た俺の言葉で全員が頷いた。


二日後の午後二時

俺たち異端者の集まり『時雨(しぐれ)』は、クリミナルポリスの結成記念日祝典に乗り込み、祝典をぶっ壊す。

問一の誰かの回答 影の異端者

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