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『僕、魔法少女になる』⑤

『僕、魔法少女になる』⑤

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 視界が真っ白になる。

 なんとなく、中に浮いているかのような浮遊感を感じる。

 どこか自分という存在を客観的に見下ろしているような感覚。


 白い空間に漂う僕が見える。

 上も下もなく、ゆったりと漂っている。


 下腹部がぼんやりと光を発する。

 徐々に熱を持ち始め、光もそれに伴い強く発せられていく。

 瞬間それが弾け、僕の体が光に包まれた。


 熱は感じない。

 人型の光、それが今の僕だ。


 少し既視感を覚えた。

 それは数日前テレビで見た映像に似ていたから。

 魔法少女の変身の再現映像、それにそっくりだ。


 あれ、結構再現度高かったんだな。


 ……ちょっと、待て。

 なんか嫌な予感がする。


 いや、まさか。


 光が変形し、独特なシルエットを形作る。

 手首と太ももにはフリル施され、色もいつの間にかピンクに染まっていた。


 そこは別にいい。

 いや、よくは無いんだけど。

 些細な問題だ。


 これ、明らかに……


 下腹部から、ピンクに染まった光がボディーラインを離れ膝上辺りまでゆったりとした膨らみを作成している。


 形成が終わったのか、光が弾けピンク一色だったソレが服として認識できるようになった。

 僕の格好は、言うなればピンクを基調とした明るめのゴスロリ衣装。

 当然下はスカートだった。


 ……


 いやまぁ、魔法少女って基本的にはスカートだし。

 少し考えれば分かることではあった。

 僕が魔法少女になればどんな格好をする羽目になるかなんて。


 男の僕でもなれるとか言われて、僕は重要な事を確認し忘れてしまっていたらしい。

 魔法“少女”なんだから、当然だよな。


 客観視出来るこの空間で、視線の先に浮かぶゴスロリ姿の自分をみてため息を吐きたくなる。


 どうすんだよ、これ……

 僕に女装して喜ぶ趣味なんて無いんだが?


 変身するための空間だったのだろう。

 変身が終わるとあっという間に元いた場所に戻ってきた。

 妹の部屋。


 実はさっきのはただのイメージ映像で今から衣装決めたりとか、なんて現実逃避しかかった思考を視界の端にうつるひらひらとした布が現実を見ろと許してくれない。

 確認こそしていないが、きっと今の僕の格好はさっきの空間で目にしたゴスロリ姿そのものに違いない。

 女装した兄が妹の部屋にいるとか、完全に事案では?


 妹に文句の一つでも言おうと思っていたのだが、部屋の中にはすでにいなかった。

 あの世界に入る前、ついさっきまで手を合わせて向かい合っていたわけだが、今は手のひらにその感覚が残っているだけ。

 部屋には僕とマスコットの2人きり(人と呼んでいいのかは知らないが)である。


「シズは?」


「お主が変身してる間に何処か行っちゃったのじゃ」


 えぇ。

 何処かって……


「ちっ、シズの奴こうなる事分かってて逃げやがったな。今度あったら覚えてろよ」


「まぁ、まぁ」


「それにしても、もしかして変身って結構時間かかるの?」


「初めてじゃからな。2回目からは一瞬じゃ」


 そりゃそうか。

 ヴィランの前でそんな悠長な隙晒してたら危ないし、街の被害も拡大しちゃうもんな。


「しかし、本当に男とは思えないぐらい可愛いのじゃ。さすがはあの娘のお兄ちゃんじゃな」


「それ褒めてるつもり?」


「もちろんなのじゃ!」


「……」


 僕、この格好で活動するのか?

 魔法少女になった以上、街を守らないとだし。


 はぁ。


 変わると意気込んだけどさ、別にこう言う方向に変化するつもりはなかったんだが?


 ……本当に、これからどうなることやら。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『僕、魔法少女になる』ー完ー

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