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『ヴィランという存在』①

『ヴィランという存在』①

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 例のマンションまで来た。

 街にこれだけ警察やら消防が溢れていると言うのに、この建物の周りだけ車両が一つも止まっていない。

 やっぱり、ヴィランが居るのは分かった上で放置してるって事か。


「あ、アキさん……」


 後ろから、少し遅れて先輩が着いてくる。

 辺りを異様にキョロキョロと見回していて、腰が引けているのか歩き方もちょっとおかしい気がする。

 警戒してるつもりなのだろうが、そんなんじゃ見つかるものも見つからないって。


 敵地だし、怖いのは分かるけど……


 警察に見つかったら職質待ったなし、純度100%の不審者だ。

 まぁ、年齢的に落ち着いてても補導されるんだけども。

 それ言い出したら先輩既に魔法少女に変身済みだし、そもそも向こうから積極的に関わってくる事はないか。


 電気が死んでるのか、ボタンを押してもエレベータは反応しなかった。

 こんだけでかいマンションなら予備電源の一つでもありそうなものだが、周りに比べればマシってだけでマンションが傾くって結構な事だもんな。

 予備があったとして、それが壊れてたとしても何もおかしく無いか。


 数日でも居座るんだったら、綺麗に残しておけば良かったのに。

 この感じ、多分残った建物の中から適当に選んだだけなんだろうな。

 元々ここを拠点にしてたって可能性は低そうだ。


 エレベーターが停まってる以上は仕方ない。


 階段を登る。

 最上階か、電気の止まったマンションでわざわざそんな所に住みやがって。

 別に疲れはしないが、面倒臭いのは面倒臭いのだ。


 ヴィランが居るのは……

 多分、この部屋だな。


 ピンポーン


「ひぃ! ちょ、ちょっとアキさん」


「何?」


「そんな正面から……」


「別に戦いに来たわけでもないんだし、インターホン押す以外に選択肢ないでしょ?」


「で、でもぉ」


 ここで下手な事する方がまずい。


 正面以外って……

 例えば、忍び込むとかか?

 ありえない。


 忍び込んでおいて話がしたいって、そんなの会話になる訳ない。

 相手からしたら、不意打ち以外の何ものでもない。

 話しかけようと声を出した瞬間、即刻戦闘になるのが目に見えている。


 会話をしたいなら正面から正々堂々行くのが一番だ。

 敵意は見せない。

 分かりやすく態度で示さないと、まずそこまで辿り着けないのだ。


 それにしても、このインターホン電気止まってるのに音なるんだな。

 これ、電池式なのか?

 意外な真実、まぁどうでもいい事ではあるんだけど。


 なんか、予備電源は無いんだか壊れちゃってるんだかで使えないし、インターホンは電池式だし、このマンション見た目の割にだな。

 都会じゃないとこんなもんなのか。

 別にタワマンって訳でも無いんだろうけど、見掛け倒しが過ぎるな。


 それに、街一つをここまで盛大に破壊したヴィランが居着いてる割にって感じもする。


「大丈夫だって、ちゃんと手土産も持ってきたから」


「ちょ、それあんまうちに見せないでください」


「これ、先輩を魔法少女にした仇でしょ? 無惨な姿見れて、清々しい気分になったりしないの?」


「……グロいのは苦手なんです」


「グロいの苦手なんて、変な殺人鬼」


「……っ」


「どうしたの?」


「い、いえ何でも無いです」


 何か、引かれてる気がする。

 先輩があんまりにも心配するから安心させてあげようと思ったのに。

 失礼な先輩である。


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