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『魔法少女という存在』⑦

『魔法少女という存在』⑦

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「うち、魔法少女を辞められるって言われて。それで……」


 ……は?


 彼女の口から語られた言葉は、僕の想像とは全く違うものだった。

 てっきり人質を取られてるとかそう言う類い、弱みを握られて仕方なくみたいなものだと思っていたのだが。

 ちょっとこれは、予想外。


「魔法少女を、辞められる?」


「はい……、言うこと聞いたら辞めさせてやるって。だからうち、その、こんな事……」


「それで僕を殺そうとしたんだ?」


「っ、本当にごめんなさい、反省してるんです。許して……ください」


 そう言って魔法少女は地面に頭を擦り付ける。

 土下座なんてリアルで見たのは初めてかもしれない。

 こんなに無様な格好なのか。


 まぁ、だからと言って別に許しはしないのだけど。


 なんだったか、ごめんで済んだら警察はいらないだっけ?

 警察を頼る気は微塵も無いが。

 人を殺そうとしておいて許してもらおうなんて虫のいいやつだ。


 それにしても、魔法少女を辞められる、ね。

 いくら数が減りすぎたら困る仕事だとはいえ、そんな事になってたのか。

 自衛隊とかも辞めるの大変だって話は聞いた事あるけど。


 でも、それで殺しか。

 随分と……


「魔法少女を辞める方法、それ以外無かったの?」


「い、いえ。その……」


 代わりを用意しないと辞められない、か。

 ブラックなバイトかよ。

 分かってはいたが、魔法少女ってシステムろくなもんじゃねぇな。


 誰も彼もがハイ喜んでと魔法少女を変わってくれる奴ばかりでも無いだろう。

 こんな裏の事情はほとんど知られていないだろうが、それにしたって魔法少女って仕事が危険なのは誰もが知っていることだ。

 憧れではあるのだが、同時に自分には無理だと考えるのも自然だ。


 魔法少女は元はただの少女、騙すのは大変だ。

 マルチやら詐欺師やら、その道のプロではないのだから。

 それに近しい人を騙す後ろめたさもあるのだろう。


 その結果、ほとんどの魔法少女はヴィランに殺されて終わり。

 魔法少女と一緒に人生も引退だとさ。

 それがニュースにすらなってないあたり、どこまでグルでやってるのか……


 マスコミだけって事は無いだろ。

 少なくとも国家ぐるみか。

 はぁ、一体全体どうしてこんな事になっているんだか。


 彼女はそれを知って焦って代わりを探したらしいがなかなか見つからず、そんな時に命令聞くなら魔法少女を辞めさせてやるってマスコットに囁かれたと。

 初めは簡単な命令だったようだ。

 普段活動してる場所よりちょっと遠くで発見されたヴィランの退治とかそんなもの。


 しかし、最後には僕を撃ち殺すように言われて……、と言うことらしい。


 妹が言った魔法少女を代わりにやってくれってのもそう言うことだよな。

 厄介なもの押し付けやがって。

 思い返してみれば、妹にしてはやたら喋り出しが重かったし話の歯切れが悪かった気がする。


 ま、妹もただの人だったって訳か。


 死ぬのが怖くて、誰でもいいから魔法少女って役目を押し付けたかった。

 近くに騙しやすそうな僕がいた。

 それだけ。


 こいつがどうしようもなくなって殺人に走ったように、僕を生贄にしたと。

 なんでだろ。

 酷い話なはずなのに、ちょっと嬉しくすらある。


 僕の兄妹らしくてと言えばいいのだろうか?

 追い詰められた結果そんな行動に走るのが。

 どれだけ完璧に見えても、結局は僕の妹って話だ。


 しかも、代わりを用意した妹はどっか攫われたみたいだし。

 結局まともに辞められてないっていう。

 ブラックバイトどころかヤクザやら半グレの類いだな。


 ん?


 攫われたってのはマスコット情報だっけか。

 まぁ、だからどうしたって話だが。

 現状、行方不明なことには代わりないし。


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