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『魔法少女の初仕事』⑥

『魔法少女の初仕事』⑥

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「だから、最短でお前を殺す!!」


 ヴィランの行動は何も変わらない。

 ただ、その力とスピードにまかせて殴りかかって来るだけ。


 でも、今回は最小限で避けるというわけにも行かない。

 余裕を持って、少し大袈裟なぐらいに。

 当然カウンターでの攻撃なんて不可能だ。


 この炎……


 どういった効果があるのかは知らないが、単純に攻撃の範囲が広がっているというそれ自体が厄介だ。

 拳って案外攻撃範囲が狭くてどうしても点での攻撃になるから。

 今の所ただ拳に纏っているだけでそれ以外の用途に使う様子はないが、ただそれだけで攻撃範囲としては2倍近い。


 威力が高いのか、高温なのか、魔力に引火するなんて可能性もある。

 黒い炎……、当たったが最後消えない炎だったなんてことになったら最悪だ。

 特殊な色の炎なんて掠りすらしたく無い。


 だが、ヴィランも相当に消耗すると見て問題無いだろう。

 だからこそ、無力な市民相手に暴れてるだけの時は使わなかったわけで。

 たとえ魔法少女が現れたとしても、新人と分かれば一旦温存さえした。


 僕にそれなりのダメージを受け、多少の危機感を覚えたから使用したってところだろうか。

 あくまで全部想像でしかないけど。


 ……これを使わせずに倒すのが理想だったな。

 今更言っても仕方ない事だが。


 さて、だとしてもどうするかだよな。

 戦闘は硬直状態だ。

 しかも、その硬直はどちらかといえば僕に不利。


 いくら消耗が激しいと言っても、ヴィランが消耗し切るまでずっと攻撃を避け続けるというのは現実的じゃない。

 相手はただ殴りかかってくるだけで、多少消耗があると言ってもそれだけ。

 どう考えても、掠ることすら許されない攻撃を避け続けるという繊細な作業を要求される僕の方が先にミスを犯して攻撃を避けきれなくなるのが落ちだ。


 それに、消耗を無視すればただ拳に纏うだけではなく応用のような事ができるかもしれない。

 例えば、炎を剣のように変形させたりとか、炎を飛ばしたりだとか、攻撃を受ける瞬間その部位に炎を纏わせられたりとか……

 いくらでも可能性がある。


 さっきの、ヴィランが拳に炎を纏う前の空間の歪みが魔法の前兆だとしても、それを見たからといって何がくるのかわからなければ対応困難だ。

 第一、すでに拳に纏っている炎を変化させるのにその前兆が現れるとも限らない。


 まぁ、今の所は単純な攻撃ばかりでそんな様子はない訳だけど。

 出来ないのか、やらないだけなのか……

 いくら魔法少女になっているとはいえ、戦闘経験のない僕がこんな状態で奴相手に攻勢に出るのは厳しいし。


 その点で言うと黒い炎は分かりやすく使ってくれて助かったか。

 こういう特殊能力とか完全に未知だし、不意打ち気味に使われたら拳に纏わされてる今の状態ですでにやばかったはず。

 本当に、あまり頭を使わないタイプで助かるよ。


 でも……


 これ以上白戦で行くのは無理がある、か。

 ただでさえ魔法少女ってものに慣れていないのに、魔法やらなんやらそれ以上慣れていないものに手を出して余計な隙を晒す真似はしたくなかったんだけど。

 そのリスクよりメリットに賭ける方が健全そうだ。


「マスコットさん!」


「な、なんじゃ!?」


 戦闘が始まってからどこにいるんだか分からなかったので、適当な方向に向けて叫ぶと瓦礫の隙間からマスコットが這い出てきた。

 そんなところに隠れとったんか、お前。


「何か現状を突破できそうなもの無いの? 遠距離攻撃とか、それこそ魔法とか」


 こう言う会話、本来敵に聞こえるように話すべきではなのだろうが……

 現在進行形でヴィランの猛攻を交わし続けてる最中なので、こっそり話すなんて余裕はない。


「……必殺技じゃ! 必殺技を放つのじゃ!」


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