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風魔法使いの兄妹は、王女殿下に恋をする  作者: ともP
第四章:レオン・ステラ
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046. 冒険者と第二王女

◆ ゆっくりと目を開けるとそこは見慣れた天井だった。起き上がると、窓の外はまだ薄暗い。まだ起きるような時間では無いはずだが、妙に目が冴えて眠れなかったのだ。


サラは馬車の音と共に誰かがやってきたのに気が付き、ベッドから出て扉の方に向かう。

ガチャリとドアノブを回す音がして、そこに立っていた人物に心当たりはなかった。


「これを貴方に届けに来たの。あと、君のお兄さんからの手紙」


「これは……?」


目の前の少女から渡されたのは一枚の手紙と綺麗な便箋に入った手紙だった。宛先を見ると、『愛するサラへ』と書かれている。サラは渡された白いローブと剣を受け取り、最後に貰った手紙の便箋の封を切る。


「読んでも良いですか?」


「どうぞ」


サラはその手紙を読み始めた。最初は何が書かれているのか全くわからなかった。しかし、読み進めているうちにサラの目から涙が零れ落ちてくる。


「兄さんは死んじゃったんですね」


「ごめんなさい」


少女は俯きながら謝る。彼女は悪くないとサラは首を振った。レオンが帰ってこないかもしれないという話はシンに聞かされていたが、遂に現実になってしまった。


これも王都の災害と何か関係しているかどうかは全く分からない。でも、この人が謝ることじゃないとサラは思った。


「ううん、貴方のせいじゃないわ。きっと、兄さんは私たちのために命をかけて戦ってくれたんだわ。だから、私は兄さんの思いを無駄にしたくはないから……」


「サラ、誰か来てるのか?」


別の部屋から起きてきたシンが扉の近くまでやってくる。騎士団のペンダントを見て、シンは眠たそうな顔から一気に真面目な表情に変わった。そして、サラの表情をみて全てを察した。


「……あぁ、そういうことね」


シンはどこか寂しそうな表情を浮かべていた。相棒だと思っていた男は遂に帰ることなく死んでしまった。それがどれだけ辛いことなのかはシンが一番よく知っている。


一番辛いのはサラのはずなのに、心にぽっかりと穴が開いたような感覚がシンを襲った。

シンはサラの頭を撫でると、優しく抱きしめる。サラは何も言わずに小さく泣いていた。


「レオンは俺たちの誇りだよ。あいつが頑張ってくれたおかげで俺達は生き残っている。だから、泣くなとは言わないけど、これからは前を向いて生きていこうぜ」


「……うん」


サラはこくりと小さくうなずいて、泣き止む。クリスティーナは王国へ事後報告があるとのことですぐに旅立っていった。サラは受け取ったローブを羽織り、剣を腰に差して剣を抜いた。


「レーヴァテイン」


そう呟くと、剣の柄の部分に埋め込まれた宝石が眩しく輝く。まだ、サラには見えていないが、紫色の髪を持った少女がサラのことを抱きしめながら微笑んでいた。


◆ 王都襲撃から1ヶ月後――、Aランクの冒険者が、異例の早さで誕生した。彼女の名前はサラ・ステラ。

後に風魔法の使い手として名を馳せる女性である。

サラ・ステラは、レイナ・アルフォードとレオン・ステラの二人の魔力を引き継いだ唯一無二の存在。風魔法と光魔法と闇魔法の魔力を持ち合わせた最強の魔法使いだ。彼女は兄の死を乗り越え、今ここに立っている。


「サラ、そっちに魔物が……」


「風よ、刃となりて切り裂け!」


サラが放った風の魔法は見事にゴブリンに命中して、その首を切り落とした。シンはサラの魔法を見ながら、自分も負けていられないなと日々思っていた。結局、兄貴はこの子に剣を託したわけだ。


「流石だな、サラ」


「ありがと」


「ちょっと、討伐早すぎて私の手柄残ってないじゃない」


後から合流してきたユリは頬を膨らませて文句を言う。


「ごめん、次からユリの分の敵は残しておくね」


◆ 王都では王女殿下の葬儀が行われた。国民は皆、悲しみに暮れていた。まだ、真新しい丘の墓地に、第二王女ティナ・アルフォードは来ていた。


ティナは誰もいない丘の上で、一人墓石の前に立っていた。


「お姉様の代わりがわたしってこと?」


「えぇ、そうです」


突然、後ろから声をかけられても驚かなかった。ティナには誰が来たのかわかっていたからだ。

ティナにしかそれは見えない。大精霊と呼ばれる存在がそこにいる。


「そんなの無理だよ。だって、お姉さまが居なくなってまだ数ヵ月も経ってないもの……。継承権は王族であれば誰でもいいのでしょう。だったら、わたしである必要は……」


大精霊――、彼女は光の精霊と呼ばれている。

名前はアスタルテ。美しい金髪を靡かせ、彼女は静かに佇んでいる。


「貴方がレイナ・アルフォードの妹であり、姉の意思を継ぐのであればこの力を国のために使いなさい。別にこの国が嫌いならこの力を以って国を変えてみなさい。貴方の姉がそうしようとしていたように……」


「……うん」


「では、また会いましょう」


そう言うと、アスタルテは金髪を靡かせてどこかに消えて行ってしまった。

過去編で一旦完結させていただきます!

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