045. 魔力継承
◆ レオンは目を覚ますと、一本の大樹の下で眠っていた。大樹の周りを取り囲むように大きな川が流れている。
「ここはどこだ?」
「あ、起きた」
レオンが目覚めたことに気が付いたのは、紫色の髪の少女だった。その少女は白いワンピースを着ており、頭には花飾りをつけている。その子が誰なのかは思い出せない。
でもなぜか懐かしい感じがした。
「……君は誰だ?」
「あぁ、もう忘れちゃってるんだね。私はレーヴァテインっていうの」
この子の名前を聞いた瞬間、ズキンっと頭が痛くなった。まるで何かを忘れているような感覚に襲われる。
「俺の名前は……」
名前が出てこない。俺は一体誰なんだ? 自分が何者なのかわからない恐怖に体が震えた。そんなレオンを見てレーヴァテインは心配そうにこちらを近づいてくる。
「……レオン・ステラ」
「はい、よくできました。でも、完全じゃないね」
「どういうことだ?」
「記憶の一部が失われてるみたい。まあ、私は残りの役目を果たすだけだから、これより新たな従者を決めるの」
「待ってくれ!君は何を知っているんだ!」
「それは自分で思い出してみてよ」
そう言うと、レーヴァテインは空に向かって手を掲げた。すると、黒い霧のようなものが集まり始める。闇の力はレオンを取り囲んで柔らかく包み込んだ。
「どう、思い出したかな?」
「あぁ、次の従者ってどういうことだ」
「そのままの意味だよ。貴方が死んでしまったから次の拠り所を探さないといけないの。候補はいるけどね。でも、次の人は二人分の魔力を受け継ぐことになる」
「えっ……それって」
「ふふっ、レオン・ステラは闇魔法を完全に克服し、使いこなせるようになった。また、レイナ・アルフォードの光魔法も同時に継承することになる。こんな魔力を受け継ぐ器なんて限られた人間しかいない」
「まさか、次の依代は……」
「うん、その通り。貴方の妹――、」
「そうか……、そうなのか」
風魔法使いは亡くなった瞬間に、次の第に魔力が継承される。今回は、レイナと俺はこのレーヴァテインとの契約で繋がった。そして、俺が死んだ今――、次は妹の番というわけだ。
「安心していいよ。君のように脆くない。君たち先祖が受け継いできたものは幸いにも王女殿下の魔法と交わったことで最強になった。君の妹、サラ・ステラは歴代最強の風魔法の使い手になるでしょうね」
「…………」
「そんな顔しないで、大丈夫だから」
「えっ?」
「あの子は私が護るよ。それに、私もあの子のことは君の次に気に入ってるから」
「そっか……。ありがとう」
レオンは自分の身体の中に何か温かいものを感じた。これが自分の中に流れている魔力だと理解する。レーヴァテインは目を閉じてレオンの手を握った。
「契約は履行される。何か思い残すことはない?」
「じゃあ、手紙だけサラに渡して欲しい。何か書くものないか」
「はい、これで良い?」
レーヴァテインが差し出した紙には『サラへ』と書かれている。レオンはそれを受け取ると、さらさらっと文字を書いていった。書き終わると、それをレーヴァテインに手渡す。
「これを妹に渡して欲しい」
「わかった。まあ、渡すのは私じゃなくてクリスティーナだけどね」
「クリス……?」
「あぁ、もう時間がない。お別れの時間だよ」
レーヴァテインがそう言った途端、辺り一面が真っ白になり何も見えなくなった。
気が付くとレオンの意識は一瞬で遠い彼方に消えていく。




