044. 消滅
◆ 目を覚ますと――、自分の体が地面に横たわっていた。その隣にはレイナがいる。自分の体を俯瞰してみている自分がいる。そして、同じようにレイナも俯瞰している。
目の前のクリスティーナは何かを叫んでいた。
だが、何を言っているのか分からない。
すると、自分の抜け殻の横に誰かが立っていた。
あれは――、誰だ?
紫色の短い髪、綺麗な白い肌をしている。とても美しい女性だった。
彼女はレオンを見て微笑むと、姿を消した。
俺は一体どうなったんだ……。ここはどこなんだ……。
「レオン……、これからどうなるんだろうね」
隣にいたレイナが不安げに話しかけてきた。そんなレイナを抱きしめながら、大丈夫だと囁く。
すると、遠くから足音が聞こえてきた。
バルバロッサが王都の魔物を片付けて戻ってきたらしい。
そして、暫く自分の抜け殻を見ていると、白い光が辺りを包み込んだ。
眩しくて目が開けられない。
光が消えると、レオンの元の体は完全に消滅していた。
「私、レオンに伝えたいことがあるんだけどいいかな?」
隣で自分の体が消滅していったのを確認したレイナがレオンの手を握った。
「あぁ、いいぞ」
「あのね――、」
レイナはゆっくりと言葉を紡いでいく。
「レオンのことが好き」
「ありがとう。俺もレイナのことが好きだ」
「嬉しい……」
レイナの目には涙が浮かんでいた。それを指で拭ってあげる。
「レオン、大好き」
「俺も大好きだ」
二人は見つめ合い、自然と唇を重ねた。それからしばらくして、レイナの体が薄くなっていく。
自分の体も同じように薄くなっていく。
◆ 丘にはレオンの剣と白いローブが残ったまま、それ以外は消えてなくなった。
クリスティーナは一人、丘の上で佇んでいる。
「なぜレオンの剣だけ……。私はまた大切な人を失ったのか……」
剣を拾い上げようとした時、背後から気配を感じた。
振り向くとそこにはバルバロッサが立っていた。
「…………」
バルバロッサは何も言わずに、ただ黙っている。
騎士として、レオン・ステラという人物は尊敬に値する人物だった。
バルバロッサはレオンとレイナがいた場所を見つめながら……。
「レオンは死んだのか?」
「はい……。申し訳ありません」
「お前のせいじゃないではない。それにしても、王女殿下も一緒にか……」
第一王女が死去となると――、国王は間違いなくまた冷静さを失うだろう。
クリスティーナは拳を強く握った。
「この国はどうなるんだろうな……」
「今は考えるのをやめましょう。まずは生き残った人たちの安全を確保することに専念します」
「そうだな……」
「それと……」
クリスティーナは剣を見ながら呟いた。
「この剣は私が預かってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、構わない……」
クリスティーナはその剣を預かった。自分には扱えないが……、正当な所有者に渡すべきだと思ったからだ。
その役目は私が担いたい。




