041. 閃光の騎士
◆ クリスティーナは光の剣を顕現させ、ミザリーに対峙した。そして、ミザリーは薄気味悪い笑みを浮かべながら十字架を握りしめた。
「まさか、貴方と再び戦う時が来るなんて思ってもいませんでしたよ。しかし、貴方も運が悪いですね。私が生き残っているなんて思ってなかったでしょうね。ただ、刻龍復活の儀式はもう既に終わり、無事に復活した。王都の戦力ではもうどうすることもできない。国と一緒に死ぬか、このまま全てを放り投げて一緒に来るか選べ」
「黙れ……。お前のような奴についていくわけがないだろ!」
クリスティーナは剣を構え、いつでも戦える体勢をとる。
「フッ……。貴方はそういう人でしたね。私はノア様に力を与えられた存在。ただの人間である貴方が敵う相手ではない」
「黙れ!!」
クリスティーナは光を纏ったまま、ミザリーに斬りかかった。ミザリーはそれを余裕の表情で避ける。
ミザリーは十字架を握り、クリスティーナに掌を向ける。
「天にまします我らの神よ。我が手に宿るは神の炎。神罰を与え給え――、『裁きを顕現せよ』」
ミザリーの掌から巨大な火球が発射される。クリスティーナは咄嵯に横に回避するが、ミザリーはすかさず追撃を行う。
両手から同時に同じ大きさの火球を放つ。クリスティーナは剣を振るい、二つの火球を同時に切り裂いた。
「ほう、中々やりますね。流石は『閃光の騎士』と呼ばれるだけはありますね」
悪魔に魂を売ってもなお神の魔術に頼るなんて……、どこまで腐ってるんだ!
「はああっ!」
クリスティーナは剣を振って、光の斬撃を飛ばす。しかし、それはミザリーに簡単に避けられてしまう。
横たわっているレイナの状況をすぐに確認したいが……。目の前にいるコイツを倒さないと……。
「心に迷いがあるようですね」
「黙れっ!」
クリスティーナは光の剣を何度も振るい、光の刃を飛ばし続けるが、全て避けられてしまう。
クリスティーナは更に大きな光の斬撃を飛ばした。その一撃がミザリーに直撃したかに見えたが――、
「そんなものですか?」
ミザリーは無傷だった。それどころか、服に汚れすらついていない。
「無駄ですよ。所詮は人の力でしかないのですから」
「ミザリー、今からならまだ間に合います。今すぐ、闇との契約を解除して降伏しなさい。さもなければ、ここからは手加減できない」
「ふふ、何を言ってるんですか。私はノア様に選ばれた使いですよ。契約破棄などする必要もない」
「そうですか……、なら仕方ないです。剣よ、クリスティーナの名のもとに命じる。我に従え――、顕現せよ。神々の光を以って、悪しき者を討ち滅ぼせ!!『執行、光剣』」
クリスティーナは魔法を唱え、剣を振りかざす。すると、クリスティーナの周りに無数の光の剣が出現し、一斉にミザリーに向かって飛んで行く。
光の剣はミザリーに突き刺さるが、ミザリーは平気な顔で傷を修復する。
だが――、クリスティーナの狙いはそんなものじゃなかった。
光の剣は修復された傷から再びミザリーに突き刺さったまま、拘束具のようにミザリーを締め付けた。
「何のつもりだ……」
「王国は悪魔狩りの準備を長い年月をかけて整えて来ました。貴方が蔑む王国はちゃんと準備をしてきたわけですよ。喰らいなさい。王国の力を!!」
ミザリーは必死に振り払おうとするが、拘束は外れない。
「神よ――、私たちの罪をお許し下さい。そして、どうかこの者に裁きを与えたまえ――」
クリスティーナが詠唱を始める。
「やめろぉおお―――!!」
ミザリーは必死に抵抗するが、もう遅かった。
「神よ――、我らの罪を許したまえ。そして、我らに赦しを――、『断罪の十字架』」
クリスティーナは十字架を取り出し詠唱を終える。そして、十字架の形をした光がミザリーを貫き、そのまま十字架を伝って光が全身に広がっていった。
「グアァアアア!!」
ミザリーが苦痛の声を上げる。
「お前には地獄に行ってもらう。お前が今まで殺めた命の数だけ、お前は苦しんで死んでいけ!!」
「嫌だ……。こんなはずでは……。私は選ばれた人間なのに……。何故……。グァァアア!!」
ミザリーは床に突っ伏して倒れる。クリスティーナはエヴァンにしたように体を全て燃やそうとするが――、
「死ねぇえ、クリスティーナ!!」
突然、倒れていたはずのミザリーが起き上がり、クリスティーナに襲いかかってきた。
しまった……。油断した……。
「ぐぅっ……。」
クリスティーナは壁まで吹き飛ばされる。
「はぁ……。はぁ……。」
ミザリーは自分の体に刻まれた傷を見て、苦笑いを浮かべた。
「完全に魔力の供給するパスが破壊されてしまいましたね。困ったものです。まぁ、いいでしょう。刻龍が復活した以上、もう私の仕事はないでしょうし」
ミザリーはそのままゆっくりと歩いていき、教会の扉を開けて外に出る。
「待てっ……、何処に行く」
「フッ、私はノア様の元へ帰りますよ。レオン・ステラも第一王女レイナ・アルフォードも死んだ。だから、私がここにいる理由はもうない。ボロボロの騎士に構ってるほど私も暇じゃないんですよ。それに、私はあの方のように戦闘することがあまり好きではないのでね。戦いは見守っているのが一番ですよ」
「逃がさないぞ……、ミザリー」
クリスティーナは立ち上がり、ミザリーを追いかけようとするが、体が上手く動かなかった。
「ふふ、無駄ですよ。今の貴方は立っているのもやっとの状態。私のことを追いかける気力もない。それに、ここの教会のシスターには洗脳魔法が施してある」
クリスティーナの背後から忍び寄る足音が聞こえる。そこにはシスター服を着た少女が立っていた。
手にはナイフを持っており、その切先をクリスティーナに向けていた。
「それじゃあ、クリスティーナお元気で生きていたらまた会いましょう。生きていればね」
「くっ……」
クリスティーナは剣を構える。ミザリーは教会から出て行き、そのまま一瞬で姿を消した。
それと、同時に洗脳されていたシスターが襲ってくる。
「さようなら、クリスティーナさん」
クリスティーナは背中に刃を突き立てられ、その場に倒れた。
「あははっ! やった! これであたしの勝ち!」
「刃というのは、急所を刺さないと意味がないんですよ」
クリスティーナは刃が刺さったままの状態で剣を振るい、刃をへし折った。
「うそ!?」
クリスティーナは口から血を吐きながら、微笑んだ。
そして、シスターに向かって思いっきり拳を握りしめ、殴りかかった。
「きゃああ!」
殴られた衝撃で、手に持っていた刃物が飛んでいく。シスターは床に頭を殴打し、動かなくなった。たぶん、死んではいないと思う。
クリスティーナはその衝撃で床に倒れこんで気絶した。少し強がり過ぎた。流石に限界だったみたいだ。
「レイナ様……」




