040. 元騎士団幹部
◆ レイナは、教会に群がる影に恐怖していた。クリスティーナは剣を構える。すると、剣に反応した影が一気に襲い掛かってくる。
「光よ、我が敵を撃て!」
光の玉が飛んでいき、影を消滅させる。しかし、すぐに別の影から攻撃され、クリスティーナは回避に専念しなくてはならなかった。
集まっていた影が段々とクリスティーナに消滅させられて露わになった人物にレイナは叫び声をあげる。
「レオン!!」
レイナはレオンがいる方向にそこにはレオンがいたが、もうレオンは私のことを見てなかった。
もう一度、レオンの方を見てレイナは呼びかける。
「レオン!私だよ!!レイナだよ!?」
しかし、レオンは反応しない。レイナは涙を流しながら必死に声をかけ続ける。
「ねぇ、お願いだから……返事をしてよぉ……」
レイナの悲痛な声を聞いても、レオンは全く動かない。その様子にクリスティーナは心が苦しかった。
すると、教会の奥の方で爆発音が聞こえてきた。そして、煙の中から人が出てくる。
「おや?まだ生き残りがいましたか?」
出てきたのは神父服を着ている男だった。
「おやおや、クリスティーナじゃないですか!」
男は嬉しそうに笑みを浮かべていた。クリスティーナは剣を構えなおして警戒する。
騎士団幹部の生き残り――、名はミザリー・クルシュ。
「お前……、生きていたのか……」
「えぇ、まぁ。まさか、こんなところで再会できるなんて思ってませんでしたよ。エヴァンも、エアリスも死んでしまったんですが残念ですね。当時は閃光と呼ばれていた貴方も随分と腕が落ちましたね」
ミザリーは笑みを浮かべたまま話し続ける。
「黙れ……。貴様だけは絶対に許さない……!!」
クリスティーナの怒りに満ちた表情を見たミザリーは首を傾げる。
「ノア様に最初に提言したのは――、私だ。アルフォード家が潰えれば全てが変わる。あの腐った王様と取り纏めの貴族を皆殺しにすれば、王国は変わるだろう。ユグドラシルは魔物の支配されて何年経つのか知らないわけもないだろう。そろそろ、この国を変えなければならないんだ。人を殺し、魔物を殺してくれる龍の存在は、この世界にとって必要なものなんだ。私はそれを提案しただけに過ぎない!」
ミザリーの独白にクリスティーナは耳を傾けるしかなかった。
「エアリスが死んだのは想定外だった。この男――、レオン・ステラの存在が無ければもっと早く事を進められたはずだ」
ミザリーは悔しそうな顔をしていた。しかし、すぐに笑みに戻る。
「だが、今はそんなことはどうだっていいんですよ。ただ、目の前にいる奴らを殺せればいいだけのことですからね。それに、レオン・ステラはもうほとんど死んだようなものだ。闇に支配され、快楽の魔物になった。コイツもまた同様に我々と同じように人を殺すことしか考えていないでしょう」
「違う!!レオンはそんなんじゃない!!」
レイナは叫んだ。ただ、ミザリーはその言葉を嘲笑うかのように――、
「第一王女――、貴方には分からないかもしれませんが、彼はもうダメなんですよ。今の彼に何を言っても無駄です。エアリスを倒すための攻撃で彼の自我は完全に崩壊しているはずですよ。現に、今もこちらを見向きもしないまま影を放ち続けている続ではないですか」
レイナは何も言えなかった。しかし、心の中で否定し続けた。
(そんなことない!!)
その時、後ろから足音が聞こえてくる。振り返るとそこには修道服を着た女性がナイフを持ってレイナに襲い掛かってくる。
その光景を見たクリスティーナは――、瞬時に剣を抜き光の魔法を唱える。
放たれた光の槍が修道女を手を貫く。手を貫かれた女はナイフを床に落として倒れこむ。
「大丈夫ですか!?」
「うん……」
レイナは涙目になりながらも返事をする。クリスティーナはすぐに倒れた女性の元に駆け寄る。
よく見ると――、胸元に教会のペンダントをしている。この教会のシスターか……。
クリスティーナは女性を気絶させて、壁に持たれさせておいた。
「ここは私が何とかします!レイナ様は――」
そうレイナに指示しようとしたが――、レイナはレオンの元に向かってしまった。
さっきの話だと……、レオンは既に自我がない。ならば、今ここで止めなければ……。
「待ってください!危険です!!」
「レオン?」
レイナが呼びかけても反応がない。
「レオン?」
もう一度呼んでみたけど、やっぱりレオンは私の声を聞いてくれない。
「レオン……、レオン……」
レイナは立ち上がって、無意識にレオンの方に向かっていった。
「駄目です。レイナ様、近寄っちゃ駄目だ!」
「レオン……」
レイナが近づいた瞬間――、レイナの腕が掴まれ引っ張られた。レイナが抵抗しようとしたが、レイナの力ではどうすることもできなかった。
掠れた声がレイナの耳にはハッキリと聞こえた
「ニゲロ……、レイナ……」
腕を引っ張るレオンは苦しげにそう言った。聞いたこともない苦しそうな声にレイナは何もできない。
「レイナ……、コッチニキテハダメダ……」
レイナは苦しそうなレオンを放っておくことは出来なかった。レイナがレオンの手を握る。すると、レオンはレイナの手を握り返し、レイナを引き寄せる。
「グァァアアアアアアア」
レオンが突然苦しみ出した。レイナの握っている手が段々冷たくなっていくのを感じる。
「レオン、しっかりして!!」
レイナは必死に叫ぶが、レオンは答えない。それどころか、呼吸すらしていないように見える。
「嫌、こんなの……。お願いだから目を覚まして……」
レイナは苦しむレオンの顔を撫でるが、それでも何も変わらない。
「レイナ……、ニゲロ……」
レイナの耳元で、小さな声で囁かれた気がした。
次の瞬間、レイナは腹に突き刺さるような痛みを感じ、そのまま気を失った。
「レイナ様――!!」
クリスティーナの悲痛な叫び声は二人には全く届かなかった。ミザリーは笑みを浮かべながら呟く。
「やはり、こうなってしまいましたね。まぁ、当然の結果でしょう。エアリスも、第一王女も……。皆、死ぬ運命だった。まさか、自分の騎士に殺されることになるとは思っていなかったでしょうね」
ミザリーの言葉にクリスティーナは激怒する。
「貴様ぁぁあああ!!」




