039. 戦闘
◆ 刻龍の姿を見て、ノアは興奮していた。
なんて素晴らしい。こんなに強い力を持った魔物は初めて見た。
ノアは昔から戦いを好んでいた。でも、ノアの力は強すぎるため相手がすぐに壊れてしまう。
今度の玩具は王国最強だ。なんせ、その力で一個の国を滅ぼすことができるとまで言われているのだからな……。
ノアはこの国の生末など興味がない――、エアリスも、エヴァンも、王国を滅ぼすために行動していたが興味はない。
人間の考えることなど悪魔の自分にとっては興味のないことだ。
戦いにしか興味のないノアにとってはこの状況は願ってもない至福の瞬間である。
「もっと見せてくれよ、お前の力を」
刻龍は、ノアに向かって走り出すと、そのまま拳を振り下ろす。その攻撃は大地を割り、巨大なクレーターを作った。
龍の巣に着地していた刻龍はバランスを崩し、再び空を飛ぶ――、
「おいおい、そんなもんかよ」
刻龍の攻撃を避けながら、ノアは刻龍に語りかける。
「お前の力はその程度なのか?!」
刻龍が全力のブレスを放ってきた。
「おっと、危ないなぁ」
刻龍はその後も、様々な攻撃を行ってくるが、どれも大して威力はない。
「はぁー、つまんねぇな」
ノアはため息をつく。すると、刻龍は黒いオーラを放ちだす。
気づくと下には魔法陣が発動されていた。龍脈の霊力をノアも肌で感じていた。
「おいおい。なんだよ、まだ本気出してなかったのか」
霊脈の力を得た刻龍の魔力は今までとは打って変わって凄まじいオーラを放っている。
「グオオォオオッ!!!」
刻龍が吠えると同時に、突風が巻き起こった。
「すげぇな、ここまで強い奴と戦うのは何年ぶりだろうな」
刻龍は、再びノアに攻撃を仕掛ける。だが、ノアは刻龍の攻撃を軽々と避け、
「おらっ!!」
刻龍に向けて攻撃を放つ。だが、刻龍の硬い皮膚に阻まれ、ダメージを与えることが出来ない。
硬い皮膚は魔法が効いていないというよりかは無効かされているように思えた。
「くそ、これでも駄目なのかよ」
刻龍が、黒い炎を吐いた。黒い炎は、徐々にノアを包み込んでいく。刻龍の炎には魔力を吸い取る効果があるらしい。
ノアは自分の魔力が吸われるのを避け、大きく後方に回避した。
「面白れぇな……」
「ガアァッ!!」
刻龍がノアに突進してくる。
ノアは、刻龍の攻撃を魔法陣で受け止めると、そのまま弾き返した。刻龍の巨体が吹き飛び、地面に叩きつけられると、地面が大きく揺れた。
そうノアが認識した瞬間――、体が元の場所に戻された。
「なにっ!!」
魔法陣で受け止めることも叶わず、刻龍の重い一撃で洞窟の岩場に一瞬で吹き飛ばされる。
なんだ……、今の。
「くそ、俺に傷を負わせるとはやるじゃねえか」
刻龍は、立ち上がり吠えた。すると、ノアは再び元々立っていた場所に巻き戻され、刻龍の体がノアの体を吹き飛ばす。
そうか……、分かった。
「これは面白い」
空間を巻き戻すことができる魔法か……。
ノアはニヤリと笑うと、両手を広げ詠唱を始める。
「我、世界を創り給いし神々に願い奉る。我が求めに応じ、今ここに顕現せよ。其は、全ての終わりを告げる者なり。出でよ、終焉の業火」
詠唱が終わると同時に、ノアの足元から真っ黒な渦が現れ、そこから、無数の槍が出てきた。
それは、全て刻龍を狙っている。
「これで死ね!!」
ノアは手を前に突き出すと、一斉に槍が放たれた。刻龍も対抗するように、口から闇属性のブレスを放ち、無数の闇の矢を飛ばしてくる。2つの力がぶつかり合い、辺り一面が爆煙に包まれた。
やがて、視界が晴れると、刻龍が無傷で雄叫びをあげた。
刻龍は吠えた後、ノアの頭の中に声が響いてきた。
『お前の負けだ』
その言葉を聞いた途端、ノアの魔法は無効化され、黒いブレスに体を焼かれて地に落ちた。




