037. 都喰らい
◆ 王都、フォーリナーは刻龍によって壊滅状態に陥っていた。刻龍の圧倒的な力の前に、誰も抗うことなどできなかった。人々は逃げ惑い、泣き叫ぶ。その光景を、刻龍は嘲笑いながら眺めている。
刻龍は思う。なぜ人間というのは脆いのだろうと。自分よりも遥かに劣る存在。刻龍にとっては、ただの塵に過ぎない。
「グルルル……」
刻龍は、【龍の巣】に向かっていた。そこには、龍脈がある。それを手に入れれば、失われた魔力が復活し、より強くなれるはずだ。
刻龍は、王都フォーリナーを破壊しながら進んでいく。
◆ 王都は大混乱に陥っていた。王国騎士団のバルバロッサは、必死に指揮を取り、戦力をフォーリナーに集めるように指示を出す。
「急げ! この王都には、まだ多くの市民がいるんだぞ!」
バルバロッサは、部下の騎士たちに激を飛ばす。騎士たちは急いで行動を開始する。そんな中、一人の若い男がバルバロッサに声をかける。
「隊長」
「なんだ?」
「あの……、さっきから気になっていたんですけど……、あそこにいる女の子は誰なんですか?」
男は、瓦礫の上に腰掛けて、足をぶらぶらさせている少女を指し示す。
「ああ……、第二王女ティナ・アルフォード様だ。お前はティナ様を安全な場所に連れて行くんだ。それと、第一王女であるレイナ・アルフォード様とレオン・ステラの生存が確認できない。こちらも早急に探す必要がある」
「えっ!? お姫様なんですか? それに、レオン様も消息不明なのですか?」
「そうだ……。だが、まずは魔物の討伐が先だ。あの龍は王都を滅ぼすつもりだ。俺はクリスティーナと共にフォーリナーに向かう。兵を集めてすぐに出発するぞ!」
「分かりました」
男はすぐに走り出す。バルバロッサはクリスティーナと合流し、王宮からすぐに王都の中心へと向かった。そして、そこで信じられない光景を見ることになる。
「あんな化物どうやって対峙するつもり?」
「どうやら、あれでも全力じゃないらしい。龍っていうのは龍脈から力を得ている。だから、龍の巣の龍脈を破壊すれば被害は抑えられるはずだ」
「それまで、王都が持てばいいけどね」
バルバロッサとクリスティーナはフォーリナーに到着する。すると、刻龍はすでに王都に侵入していた。
「くそっ! もうここまで来ているのか!」
刻龍の姿を見たバルバロッサは、怒りの声を上げる。刻龍は二人に目をくれることもなく、黒い炎を市街地に放つ。
「なんてことをするのよ!」
「落ち着け! まずは、住民を避難させることだ。それから、奴の注意を引く」
刻龍に近づくにつれ、その圧倒的な存在感に押しつぶされそうになる。刻龍の力は圧倒的だった。生存している住民を騎士団で誘導し、住民の安全を確保する。
「よし! 行くぞ!」
二人は同時に動き出した。刻龍に向かって攻撃を放つ。しかし、二人の攻撃を刻龍は全く意に介さない様子だった。そして、刻龍は遂に王都の半分を一気に焼き払った。
街からは悲鳴が上がり、人々の恐怖は最高潮に達する。刻龍は、その声を聞いて大きな雄たけびを轟かせる。
「グオオオォー!!」
刻龍の攻撃により、街の建物が次々と破壊されていく。刻龍の動きを止めるために騎士団は必死に攻撃を仕掛けるが、全く意味がなかった。
刻龍はひとしきり破壊しつくすと【龍の巣】の方向へ向かっていった。
「あれで、本来の力じゃないってただの化物じゃない」
黒龍の攻撃をなんとか防いだクリスティーナが……、顔を青ざめさせながら呟いた。
◆ その頃、王城では緊急会議が開かれていた。議題は刻龍への対応についてだ。国王は刻龍をこのまま放置することはできないと判断し、対策を考えることにしたのだ。
「まさか……こんな事態になるとはな……」
「この王都を守れると思うか?」
「正直に申し上げますと……難しいでしょう。刻龍の強さはそれほどまでに桁違いなのです」
ギルド本部の言葉を聞き、国王は大きなため息をつく。
「王都は騎士団が守っている。このままでは王都外にも被害が及ぶだろう。そうなれば、国そのものが崩壊する。やはり、刻龍を倒すしかないようだな……」
「そうですね……」
「だが……勝てるのか? あの化け物に?」
会議室には重苦しい空気が流れる。刻龍に対抗する手段を考えなくてはならないが……、有効な手立てが全く思い浮かばなかった。
会議は膠着したまま何も決まらずに時間だけが刻一刻と過ぎ去っていった。




