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風魔法使いの兄妹は、王女殿下に恋をする  作者: ともP
第四章:レオン・ステラ
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033. ノア

◆ レオンは、レイナのいる部屋に戻ってくると、レイナは嬉しそうな顔で迎えてくれた。


「レオン、おかえりなさい」


「ただいま戻りました」


「あの、レオンにお願いがあるのですが、いいですか?」


「なんですか?」


「王都に一緒に行って欲しいんです」


「もちろんいいですよ」


「ありがとうございます」


レイナは、嬉しそうに微笑んでいる。


「それでは、出発しましょうか」


「はい」


レオンは一旦部屋に戻り、手入れをしていた剣を腰に下げた。そして、レイナと一緒に王宮を後にした。



◆ レイナと共に王都に向かう道中、レイナが話しかけてくる。


「レオンは、どうして冒険者になられたんですか?」


「それは……」


レオンは言葉に詰まった。今まで誰にも話したことのない過去だ。


「ステラ家は魔法を次の代へ伝承するという役目がありまして……、俺は風魔法の後継者として、育てられました」


「それで、風魔法を……」


「はい、俺が十歳の時、魔物の大群に襲われたんです。その時、父は俺を守る為に命を落としました。結論から言えば、風魔法使いは従者が死んだ際に、魔力を引き継ぐんです。風魔法の一族はそうやって魔力の継承をし、力を付けてきました」


「そう……、ですか」


「それからです。父の役目であった冒険者の仕事を引き受け、妹と生きていくことを決意したのは」


「そう……、だったんですね」


「でも、今はレイナがいる。俺はレイナを死なせない」


「レオン……」


レイナの目には涙が溜まっていた。本当に涙脆い王女様だとレオンは思った。


「レイナ、泣かないで。レイナにはいつも笑っていて欲しい」


「はいっ」


レイナは袖口で目元を拭うと、満面の笑みを見せた。


「もうすぐ王都ですね」


「わぁ!凄く賑やかですね」


王都は相変わらず人で溢れていた。


「レイナ、俺から離れないで」


「はい」


レイナが返事をした瞬間――、どこからか視線を感じた。


「誰かに見られている気がします」


二人は周りを見渡したが、怪しい人影は見当たらなかった。


「気のせいでしょうかね……」


「とりあえず、街を歩こう」


「はい」


レオンたちは街を歩き出した。すると、またしても何者かの気配を感じる。


「まただ……」


「私も何かを感じます……」


「レイナ、少しだけここで待っていて」


「分かりました」


レオンはレイナを残し、人気のない路地裏に移動した。


「誰だ!」


レオンは、振り返ると、そこにはフードを被った人物が立っていた。


「エアリスの仲間か?」


「……」


その人物は答えなかった。


「もう一度聞く、お前はエアリスの仲間か?」


「……」


「答えないか……、なら力ずくで聞くまで!」


レオンは、腰につけている剣を抜き放つと、勢いよく斬りかかった。しかし、その人物の姿は一瞬で消え、レオンの攻撃は空振りに終わった。


「消えた?」


レオンは警戒しながら、辺りを見渡す。


「君は王女殿下の護衛かい?」


「!?」


レオンは後ろを振り返ると、目の前に短刀が迫ってきていた。


「くっ」


レオンは咄嵯に剣で防いだが、その衝撃に耐えられず吹き飛ばされてしまった。


「なんだ、今のスピードは……」


「君は人間なのに強いね。でも、まだ僕の足元にも及ばない」


「どういう意味だ?」


「そのままの意味さ」


「ふざけるな!」


レオンは再び攻撃を仕掛けるが、その攻撃は全てかわされ、逆に強烈なカウンターを喰らってしまう。


「ぐっ」


「どうしたんだい?そんなんじゃ、僕には勝てないよ」


「お前は一体……」


「僕の名前はノア。君たちの言葉でいうところの悪魔だよ」


「お前がエアリスを……」


「そうだよ。彼女は素晴らしいね。これからもっと多くの人を殺すだろう」


「黙れ!!」


レオンは地面を蹴り上げ、一瞬で間合いを詰めると、渾身の一撃を放った。


「無駄だよ」


しかし、ノアはその攻撃を難なく受け止めた。


「これが君の全力かい?」


レオンは、何度も斬撃を放つが全て受け止められてしまう。そして、レオンは風魔法で、竜巻を作り出すと、ノアに向かって放った。


「へぇ〜。面白い魔法を使うね」


ノアは、余裕そうな表情で、レオンが作り出した竜巻を観察している。


「まあ、こんなものかな」


ノアは片手を前に突き出すと、魔法陣が現れそこから巨大な火柱が飛び出した。そして、レオンが生み出した竜巻は簡単にかき消されてしまった。


「馬鹿な……」


レオンは自分の魔法をあっさりと打ち破られ動揺していた。


(落ち着け……。相手はまだ本気を出していない)


レオンは冷静に状況を分析しながら、次の一手を考えていた。


「今度はこっちから行くよ」


ノアがそう言うと、レオンの視界から姿が消える。


「なに!?」


レオンが驚いている隙に、ノアは背後に現れ、レオンの首に向かって短剣を突き出していた。反射的に短剣から避けたが白いローブが切り裂かれ、レオンの肩からは血が滲んでいた。


「ハハハ、君の魔法面白いと思ってたけど君自身の方が興味深いね。闇に堕ちたら、どんな風に強くなるのか楽しみだよ」


そう言って笑うと、再び姿を消した。


レオンは目を閉じて神経を研ぎ澄ませると、微かに足音が聞こえてきた。


「そこだ!」


レオンは、音を頼りにノアの位置を捉えると、風魔法を使ってノアを吹き飛ばした。


「おっと!やるね〜」


「まだまだ!」


レオンは、ノアの居場所を捉えると、魔法を駆使して追撃を仕掛けた。


「いいねー、やっぱり戦いは面白い」


ノアは楽しそうに笑いながら、レオンの攻撃をかわしていく。


「そろそろ飽きてきたから終わらせようか」


ノアは、今までとは比べ物にならない程の速さで動き回り、レオンを翻弄する。


「くっ」


レオンは、なんとか食らいついていたが、徐々に押されていく。


「これで終わりだ」


ノアは、レオンの背後に現れ短剣を振り下ろした。レオンは、振り下ろされる短剣を見ると、瞬時に身体強化をして横に飛んだ。予想外だったのか、ノアが驚いたように声を出す。


「よくかわしたね」


「お前は速いが、目で追えないほどじゃない」


「そうみたいだね。だけど、これならどうかな?」


そう言うと、再び姿を消す。レオンは気配を感じ取ろうとするが、その気配すら感じ取れなかった。


「ここだよ」


レオンの耳元で声が聞こえると同時に、首筋に冷たい感触を感じた。


「チェックメイトだ」


レオンは必死に抵抗するが、全く身動きが取れなかった。


「無駄だよ。この状態で動ける人間は今までいないよ」


「くっ……」


(やるしかないか)


レオンは覚悟を決めると、全身に魔力を流し込んだ。すると、ノアの腕に鋭い痛みが走った。


「ぐっ……」


ノアは腕を押さえると、レオンの拘束を解いた。


「闇よ。我が身を護り、敵を滅ぼせ」


レオンは詠唱を唱えると、黒いオーラのようなものに包まれた。


「それが君の切り札か……」


ノアは再び姿を消し、レオンに攻撃を仕掛ける。しかし、レオンはそれを難なく防ぐ。


「なるほど……。確かに厄介な力だね」


ノアは一旦距離を取ると、再びレオンに襲いかかった。


「だが、それだけでは僕には勝てない」


ノアは再びレオンに攻撃を仕掛けるが、先程と同じように防がれてしまう。


「君は強い。でも、まだ君自身が本当の強さを知らない」


レオンは、無言のまま剣を構えていた。


「今日はここまでだね」


ノアはそう言い残して姿を消した。レオンは周りを見渡したが、その姿を見つけることは出来なかった。裏路地から戻ると心配そうにレイナが駆け寄ってきた。「大丈夫ですか?」


「えぇ、なんとか……」


「肩から血が出てますよ。手当てをしますから待っていてください」


そう言うと、バッグの中から包帯を取り出した。


「いつも持ってるんですか?」


「レオンが怪我をした時の為に常備しているんですよ」


レイナはレオンのことを咎めるような表情を浮かべている。


「な、なるほど」


レオンは、傷口を消毒してもらうと、レイナに包帯を巻きつけてもらう。


「それで、何があったんですか?」


「実は……」


レオンはノアと出会った経緯を説明した。エヴァンとエアリスを魔物に変えたのは、悪魔だということも説明した。


「そんなことが……」


「はい。もし、本当だとしたら大変なことになります」


「そうですね……」


二人はその後しばらく黙っていたが、沈黙を破ったのはレイナだった。


「王宮に報告が必要ですね」


「王都に悪魔が現れたと知れたら大騒ぎになりますね……」


「私も一緒に戻ります」


「買い物はいいんですか?」


「えぇ、またレオンが付き合ってくれる


でしょうし」


「そうですね。買い物はまたの機会にってことで」


「はい」

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