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風魔法使いの兄妹は、王女殿下に恋をする  作者: ともP
第四章:レオン・ステラ
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032. 闇魔法

◆ レオン達は、王都に戻るとすぐに王宮に向かった。


そこには、国王が騎士団に囲まれ、席に座っていた。


「まずはレオン、無事で何よりだ」


「はい」


「今回の件は、申し訳なかった。エヴァンは腕利きの騎士だった。それがまさかこのようなことを起こすとは思わなかったのだ」


「陛下のお気持ちはよく分かります」


レオンは、『ナイトメア』を倒した後について話し始めた。


エヴァンの死体は、クリスティーナが炎魔法で完全に燃やしてしまったので、肉片ひとつ残っていない。


同期が起こした責任は、自分が取るべきだとクリスティーナが言ったからだ。


「クリスティーナには、騎士を引退しても迷惑をかけてしまったわけか」


国王は残念そうに言うと、レイナが一歩前に踏み出した。


「父上、騎士団に在籍していて失踪したのはエヴァンのみですか?」


「どういう意味だ?」


「エヴァン以外の仲間も同じように姿を消したのではないのですか?」


「……そうだ。エヴァンを含め、騎士団の幹部が、ある日突然姿を消し、捜索隊を出したが見つからなかった」


レオンはエアリスと呼ばれていた女性の事を思い出し、思わず声を上げた。


「国王陛下、エアリスという名前にお心当たりはありますか?」


「あぁ、あるぞ。エアリス・ハーネット、彼女もまたエヴァンと同じく騎士団に所属していたひとりだな」


「やはり……」


「しかし、彼女もまた逃亡者のリストに入っているが、どこにいるかまでは分からんな」


「そうですか……」


「何かあったのか?」


レオンは、先日起こった出来事を話し始めた。


「実は――」


レオンの話を聞き終えた国王は険しい顔で考え込んでいた。


「エヴァンは魔物堕ちしており、エアリスも同じように魔物になっている可能性が高いということだな」


「はい、そう考えるのが妥当だと思います」


「だとすれば、危険すぎるな。今すぐ、騎士団で討伐隊を編成する必要がある」「お願いします」


「うむ、任せておきなさい」


レオン達が部屋を出ようとすると、国王が最後に口を開いた。


「レオンよ、レイナのこと頼んだぞ」


「勿体ないお言葉です」


レオンは、深々と頭を下げると、そのまま退室した。


◆ レオンは、自分の部屋に戻ってくると、椅子に座りため息をついた。


「疲れましたか?」


その様子を見ていたレイナが心配そうにこちらを見つめていた。


「あぁ、流石にな」


「お茶でも飲みますか?」


「そうだな」


レイナは、お茶を入れてくれた。一口飲むと、身体が温まり、ホッとする。


「美味いな」


「ありがとうございます」


レイナは嬉しそうに微笑んでいる。


「これからどうするんですか?」


「エヴァン達の情報を集めるつもりだが、まだ時間がかかりそうだな」


「そうですね」


騎士団が動いているのであればレオン達の出る幕はない。レオンは、ひと眠りしようとベッドに向かうと、レイナに声をかけられた。


「レオン、一緒に寝てもいいですか?」


「えっ!?」


「ダメ……、ですか?」


レイナは悲しそうな顔をしている。


「いや……、別にいいけど」


レオンは恥ずかしさを我慢して、レイナの提案を了承した。


「ありがとうございます」


レイナは無邪気に喜んでいた。そして、レオンの隣に横になる。


「ナイトメアとの戦闘でレオンが使っていたのは闇魔法ですよね?」


「あぁ、闇魔法は、魔力を凝縮し、闇を具現化することができる力だ」


魔力が多ければ多いほどその力は強くなる。


ただ、古来から風魔法の使い手は魔の手にに堕ちやすいとも言われている。闇魔法を行使し続ければいずれは精神を崩壊させる。


正当な風魔法の後継者がいなくなっているのは……、つまりそういうことである。


王族同様の魔法行使をできる代わりに自身の身を崩壊させる。まさに、諸刃の剣といってもいい魔法が闇魔法である。


「あの力、私はちょっと怖いです」


「そうだな、俺も使ったのは初めてだ」


レオンの脳内で知らない単語が流れてきたと思えば、いつの間にか詠唱を終わらせていた。恐らく無意識に闇魔法の詠唱を行っていたのだろう。


正直なところ、闇魔法の力は長い王国の歴史の中でも解明されていない部分が多すぎる。極めて危険な魔法ではある。


「闇は全てを呑み込む。まるで底なし沼のようだな……」


「何か言いましたか?」


「何でもない」


「そうですか……」


レオンがしばらく黙っていると、隣から可愛らしい寝息が聞こえてくる。


「本当に無防備だよな……」


レオンは、そっとレイナに毛布をかけてあげた。



◆ 翌日、レオンは王宮から呼び出された。謁見の間に入ると、国王が玉座に座っていた。


「レオン、昨日はよく休めたか?」


「はい」


「それは良かった。早速本題に入るが、王国外部の洞窟で、エアリスと思われる目撃情報があった」


「本当ですか?」


「あぁ、ただ、エアリスを目撃した者は全員殺されており、詳しいことは何も分かっていない」


「そう……、ですか」


「騎士団にはエアリスを見つけ次第、処刑するよう指示してある。そして、奴らの狙いは王族や貴族を殺すことだという可能性が高い」


「分かりました。レイナは私がこの身をかけて護ります」


「よろしく頼むぞ」


「はい!」


レオンは、王宮を後にして、レイナと合流した後、自分の部屋に戻った。


自分を鏡越しに見ると、黒い薄い影が全身を覆っていた。昨日からずっと自分の中に邪悪な感情が入り混じってきているのを薄々と感じていた。まるで、自分の体の中に別の誰かがいるような感覚。


「まずいな、少しずつ制御できなくなってきてる」


レオンは、レイナに悟られないように、白いローブを被り、その影を隠した。


「レオン、お帰りなさい!」


「あぁ、ただいま」


「そのローブどうしたんですか?」


「これは……」


レイナが目を輝かせながら、こちらを見ている。


「俺が冒険者時代に使ってた白いローブなんだが、久しぶりに着てみたら懐かしくてな」


「そうなんですね!よく似合っていますよ」


「ありがとう」


レイナはニコニコしながら、「私、お昼ご飯作ってきますね」と言って台所に向かっていった。


「危なかった……」


レオンは、ほっと胸を撫で下ろし、窓から外の様子を伺った。


「騎士団も本格的に動き出したみたいだな」


エアリスが魔物になっているとすれば、騎士団が総出で討伐に当たることになるだろう。


しかし、エアリスの討伐が可能かどうかは分からない。既に犠牲者が出てる王国としては、これ以上事を荒らげるわけにもいかないはずだ。


「エアリスが派手な行動に出ない事を祈るしかないか」


レオンは、再び窓の外を眺めると、ふと、見覚えのある姿が目に入った。


「あれは……、クリスティーナ?」


レオンは、急いで部屋を出ると、階段を駆け下りていく。玄関を出て、辺りを見渡すと、ちょうど馬車に乗り込もうとしているクリスティーナの姿を見つけた。


「クリスティーナ!」


レオンの声に反応し、クリスティーナがこちらを振り返る。


「レオンじゃないか」


「学園の仕事はどうしたんですか?」


「あぁ、実はな。王国騎士団に戻されることになったんだ」


「そうだったんですね」


「まあ、こんな状況だからな後任の育成の前に、王国も戦える人材を確保する必要があるんだろう」


「そうですよね」


「お前はどうするんだ?これから、レイナ王女の護衛をするんだろ?」


「はい、そのつもりです」


「そうか……。なら、気をつけてな」


「えっ?」


「エヴァンもエアリスも王都革命派の人間だった。それに今回のエヴァンの件で、奴らは本腰を入れてくるだろう。何があっても王女殿下だけは守るんだぞ」


「はい、分かってます」


「馬鹿な奴らだよ。王国と貴族が気に入らないからって、関係のない人々を巻き込むなんて許せない」


「そうですね……」


「じゃあ、私は王国騎士団に戻るが、また会おう」


「はい」


「じゃあ、元気で」


「そちらこそ」


クリスティーナは、笑顔を浮かべ、手を振っている。


「レオンー!」


声のする方を見ると、レイナが大きな声で呼んでいた。


「今行きます」


レオンは、クリスティーナに背を向けると、レイナの元に向かった。

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