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風魔法使いの兄妹は、王女殿下に恋をする  作者: ともP
第一章:第二王女
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002. 王女との出会い

◆ サラは書類を届けるために、冒険者ギルド本部のある街へとやってきた。その街の名は、王都【グリムリープ】である。


そして、サラが冒険者ギルド本部へ書類を提出して帰ろうとしたその時──、


「あっ、あの! サラ・ステラ様でしょうか?」


背後から声を掛けられたので振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。


「えぇ、私がサラですけど……」


サラが答えると女性は嬉しそうな表情を浮かべると、勢いよく頭を下げて言った。


「お願いします! 私と一緒に来てください!」

「どういうことでしょう……?」


サラは女性の急な申し出に対して困惑していた。


目の前の女性は、年齢は20代前半くらいだろうか? 身長は160センチ程で、腰まで伸ばしたストレートロングの金髪に碧眼をした美人だ。服装は動きやすそうな軽装で、背中には弓を背負っている。


「私は【アインツ・レイ】といいます。私達は今、魔獣討伐の依頼を受けて旅をしている最中なのですが……、道中でゴブリンの群れに遭遇してしまいまして……」


「それで、一緒に戦ってくれる冒険者を募っているのですね?」


「はい。しかし、残念ながら他の方達も魔獣の討伐依頼を受けて出払っていて……」


「それで私のところに来たというわけですか……」


サラは女性の話を聞き終えて納得すると同時に思った。

(なるほど、そういうことか……)


おそらくはこの女性は、サラが元Aランクの冒険者であることを知っていて声をかけてきたのだろう。サラはそう思い至った。


そして、今回の討伐対象はゴブリンの群れだ。


おそらくはDランク相当の魔物だが、数が多く厄介な相手だ。そのせいでCランク程度の冒険者達では歯が立たず、こうしてサラに声をかけているのだろう。


「申し訳ございませんが、私はこれから冒険者ギルドに戻らないといけないのです。ですので、同行することはできかねます……」


「そこを何とかお願いできないでしょうか? 報酬も上乗せしますので!」


「……すみませんが、お断りさせていただきます」


「どうしてですか!? お願いします! 力を貸してください!!」


「それはできかねます」


サラはそう言ってその場を離れようとした。


しかし、女性はサラの腕を掴むと必死に引き留めた。


「待ってください! 私はもう大切な人を亡くしたくないんです!!」


「…………」


「お願いします!! どうか!!」


女性は涙を流しながらサラに訴えかける。

サラは女性の顔を見て、かつての自分を思い出していた。


かつてサラは、愛する兄を亡くした。そして、仲間も亡くした。


サラはその時に誓ったのだ。二度と誰かを死なせないと。自分は冒険者であることをやめ、サラは冒険者のサポートができる王都のギルド支部で働いている。その誓いを果たすために。


しかし、現実は残酷だった。

今まさに目の前にいる女性が助けを求めているにもかかわらず、サラは何もすることができない。


その事実にサラは胸を痛めるが、それでもサラは決意を変えることはなかった。

するとその時──、


「わたしで良ければ、手伝おっか?」


腰まで伸びた長い金髪をポニーテールに纏めた少女、青い瞳、さっき討伐任務に参加させて欲しいと言っていた少女がそこにいた。


「あなたは確か先程の……」


「あぁ、自己紹介してなかったね!わたしは【ティナ・アルフォード】です」


「これは失礼しました。私は【サラ・ステラ】と申します」


サラは少女の名を聞くと、すぐに挨拶を返した。

そして、隣にいたアインツが驚いたように声をあげた。


「アルフォードって王家の方じゃないですか!」


「はい。一応、第二皇女をしています」


王族であるはずのティナが王族の身分であるにも関わらず、冒険者ギルドに依頼を出していたことにサラは驚いていた。


「そんな王女様に戦わせるわけにはいきません!」


「いえ、大丈夫だよ。それに、困っている人がいれば助けるのは当たり前のことでしょう?」


「そっ、それはそうかもしれませんが……」


「それでどうするの?」


「わっ、わかりました。よろしくお願い致します」


アインツと名乗った女性は、諦めてティナに頭を下げて頼み込んだ。


「はーい、これで契約成立だね。わたしは協力するために魔物を討伐する」


「あっ、ちょっと待ってください!」


早速出発しようとする二人を呼び止めてサラが言った。


「実は私も同行させていただいてもよろしいでしょうか? 」


王族の王女様に何かあったら大変だと思い、サラは自分もついて行くことにした。支部には後で連絡を入れておけば問題ないだろう。あまりにもイレギュラーが重なり過ぎた。


「もちろんです! 」


「ありがとうございます。それともう一つだけ、確認したいことがありまして……」


サラはティナの方を向いて真剣な眼差しを向ける。


「何か?」


「ティナ様は魔物との戦闘経験がお有りなのですか?」


「もちろん」


あるんだ……、あの厳しそうな王族一家がそれを黙認していることにサラは驚愕した。いや、もしかしたら黙認していない可能性もあるな。


だが、この人はあまり言うことを聞くようなタイプではなさそうだ。


「分かりました。ありがとうございます。では、参りましょう!」


こうして、三人はゴブリンの群れを討伐するために王都の外れにある【迷いの森】へと向かうことになった。

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