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風魔法使いの兄妹は、王女殿下に恋をする  作者: ともP
第四章:レオン・ステラ
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026. 任命式の一波乱

◆ 任命式の日が訪れた。任命式は城の大広間で行われることになっている。そして、国王陛下から直接パラディンの称号を任命される。


「これより、パラディン任命式を始める!!」


国王であるギルベルト・アルフォードが声高らかに宣言すると、歓声が上がった。パラディンは王国最強の称号であり、騎士団長と同等の地位を持つことから、国王の権力の象徴でもある。


「それでは、レオン・ステラをパラディンに任命する」


国王の宣言と共に、レオンは前に出る。国王の前に膝まずき、剣を鞘から抜き、頭上に掲げた。


「汝レオン・ステラを王国最強のパラディンとして認める!!王国に永遠の繁栄を!!!」


「王国に永久の栄光を」


レオンは誓いの言葉を口にした。その後、レオンは元の場所へと戻った。


レオンはほっと胸を撫で下ろす。これで終わりかと思っていたその時、外野から予想外の出来事が起こった。


「認められない。この者がパラディンなど認められるわけがない!」


そう叫んだのは、王国騎士団団長代理のバルバロッサだった。国王はバルバロッサの言葉を遮らずに次の言葉を待つ。


「この者は、所詮は冒険者の成り上がりに過ぎない。パラディンは王国騎士から選ばれるのが妥当です」


「だが、すでに任命は終わっている。お前が何を言おうと、任命は覆らん」


「しかし……、くっ、決闘だ。私、バルバロッサはレオン・ステラに決闘を申し込む!!」


バルバロッサはレオンに指を差し、決闘を宣言する。その言葉に会場は騒然となった。決闘という言葉に賛同するものもいれば、否定的な言葉もある。


雑踏の中――、切り裂くような鋭い口調でバルバロッサは宣言する。


「貴様のような男が、レイナ様のそばにいることは許せない。この場で叩き潰してやる」


「……分かった。その勝負受けよう」


レオンは静かに了承した。


「ふんっ、最初から素直に認めていればいいものを」


バルバロッサは鼻で笑うと、レオンを睨みつけた。レオンはその視線を平然と受け止める。騎士団はプライドだけ高い貴族の集まりだとレオンは思っていた。


「それでは、今より二人の決闘を執り行う。場所は訓練場にて行う。二人とも武器を取れ」


国王は呆れたように二人に指示を出した。


「レオン、気をつけてくださいね」


任命式を見守っていたレイナは心配そうな表情でそう言った。


「必ず勝って戻ってきますよ」


レオンはレイナに微笑むと、訓練場へと向かった。



◆ 訓練場に着くと、そこには既に大勢の観客が集まっていた。


「レオン・ステラ、後悔するなよ」


「フンッ、それはこっちのセリフだ」


二人は軽口を叩き合うと、それぞれの愛剣を手に取った。


「両者共に準備は整ったようだな。それでは、これより、レオン・ステラ対バルバロッサ・レウスの決闘を行う。ルールは相手を戦闘不能にさせるか、降参させること。相手が気絶した場合、または、戦えなくなった場合、勝敗を決めるものとする。それでは、始め!!」


国王の合図と同時に両者は動き出した。


「死ねぇぇ!!」


先に仕掛けてきたのはバルバロッサの方だった。上段から剣を振り下ろしてくる。その攻撃に対し、レオンは冷静に対処した。振り下ろされた攻撃を最小限の動きで回避し、そのまま懐に入り込み、腹に向かって拳を突き出す。


「ぐはぁっ」


バルバロッサは勢いよく吹き飛ばされる。そして、壁に激突し地面に倒れ込んだ。


「どうした?もう終わりか?」


怒りの形相を浮かべながら立ち上がると、再び斬りかかってくる。王国騎士なんてものは、名ばかりのもので、シンの方がまだ動けると思った。


「調子に乗るんじゃないぞ!クソガキが!」


レオンはバルバロッサの攻撃を避け続けた。そして、バルバロッサは遂に魔法を使ってくる。これは火属性中級魔法のファイアボールか……。


「これで、くたばりやがれ!」


「くだらないな」


レオンは迫り来る炎の球に対して、水属性初級魔法のアクアボールを放つ。二つの魔法がぶつかり合い、相殺される。


「そんな……、馬鹿なこと……」


バルバロッサが驚きの声を上げる。その隙を見逃さずに、バルバロッサの目の前まで移動し、レオンは剣を構える。


「風よ、我が刃となれ」


風の刃がバルバロッサを襲う。咄嵯に防御の姿勢を取ったが、間に合わなかった。バルバロッサの鎧に一筋の傷をつけた。


「くそっ、ふざけんなよ。なんでお前みたいな奴がこんな」


レオンは余裕の笑みをこぼす。

そして、バルバロッサは歯ぎしりをしながらレオンを見つめた。


中級魔法までは詠唱が必要のない魔法であるが、威力はそんなに強くない。子供が遊びで使うようなレベルだ。そんなことは冒険者ならば誰でも知っている。


レオンは不敵な笑みを漏らす。


「王国騎士団はこんなもんなのか?」


バルバロッサは理解した。レオン・ステラという男は、ただの冒険者では無いと……。


「騎士団を愚弄するとはいい度胸だ。叩き潰してくれる」


バルバロッサは剣を構え、レオンに突っ込んでいく。そして、力任せに剣を振るった。レオンはそれを難なく避けると、バルバロッサの背後に回り込み、首筋に剣を当てた。


「そこまでだ!!」


国王の終了の合図と共に、決闘は終了した。決闘後、レオンの元にレイナが現れた。


「レオン、怪我はありませんか!?」


「大丈夫ですよ」


「良かったです。あなたに何かあったらと思うと、私……」


レイナは目に涙を浮かべている。


「ほら、無事ですから安心して下さい」


そんな二人を王は見守りながら、膝から崩れ落ちるバルバロッサに声をかけた。


「バルバロッサ・レウス、お前の敗けだ。潔く認めろ」


「はい……、私の敗けです」


こうして、王国最強の『パラディン』が誕生したのだった。

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