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風魔法使いの兄妹は、王女殿下に恋をする  作者: ともP
第一章:第二王女
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001. ギルド本部

◆ 王都にある冒険者ギルド本部。


その受付カウンターでは、受付嬢であるサラが冒険者達の対応に追われていた。


「それでですね! 私達パーティーは……」


「はい、お話は分かりました。ただ今他の職員にも確認して参りますので少々お待ち下さい」


「えぇ!? そんなこと言わずに是非ともお願いします!!」


「申し訳ございません。規則となっておりますので……」


サラは笑顔を浮かべながらも、やんわりとした口調で断りを入れる。

するとその時、背後から別の女性の声がかけられた。


「サラさん、こちらの方達が討伐任務に参加したいとおっしゃっているのですがよろしいですか?」


「参加……、ですか?」


サラが声の主を振り返ると、そこには白いドレスを着た女性が立っていた。腰まで伸びた長い金髪をポニーテールにして纏めており、青い瞳をしている。


顔立ちは非常に整っており、スラリとした体躯も相まって、どこかの貴族令嬢と言われても不思議ではない容姿だ。こんな格好で討伐任務をするつもりなのだろうか?


「なんでも魔の森の近くでオーガが発見されたらしく、討伐隊に参加させて欲しいとのことです」


「魔の森近くのオーガ……、どうしましょうか?」


サラはその言葉を聞くと少しだけ考える素振りを見せた後、目の前の女性に目を向ける。結論はひとつだった。サラはマニュアル通りに断りの文句を入れる。


「申し訳ございませんが、現在この支部は冒険者以外の討伐を許可しておりません。なので、他所の支部に問い合わせをしてみますので、しばらくお待ち頂けますでしょうか?」


「討伐許可だけもらえませんか?」


「申し訳ございません。冒険者の登録確認が取れませんので討伐許可を出すことは出来かねます」


サラは申し訳なさそうな表情を作りながら頭を下げると、そのまま奥へと下がっていった。


サラは心の中でそう呟くと、支部長室へと向かった。

コンコンッ! ドアをノックすると中から返事があったので入っていく。


部屋に入ると中には50歳くらいの男性の姿があり、ソファーに座って書類仕事をこなしている最中だったようだ。サラは部屋に入りながらその人に話しかける。


「失礼します。支部長、先程受付にいた時に討伐依頼が出たのですが……」


「ん? あぁそういえば報告を受けていたね。確かオーガが現れたとかなんとか……」


「はい。ですが、当ギルドには討伐依頼を受けられるような冒険者がおらず、結局は他の支部に依頼することになりました」


「なるほどねぇ……」


男性はサラの話を聞き終えると腕を組んで考え込む仕草を見せる。


「最近は冒険者になりたがる人間も減っておるし、逆に魔物の活動は活発になってきているようだから仕方ないと言えば仕方ないか……」


◆ 翌日――、王都にある冒険者ギルド本部では、定例会議に出席する幹部達が集まっていた。


「ではこれより、第6回緊急対策本部会議を始める!」


司会役の男性が開始を告げると、会議室内は静まり返った。


「まずはここ最近の魔獣や魔物による被害状況についてだが――」


それから約1時間に渡り、冒険者ギルド本部では様々な議題について議論された。

そして最後に今回の討伐依頼についての話になると──、


「では次に討伐依頼についてだが──」


「その前にちょっといいかな?」


一人の男が手を上げて発言を求めた。

その男は60歳前後で、白髪混じりの髪をオールバックにした男性だ。


「何かね?」


「実はつい最近オーガに襲われたという村を見つけてね。それで討伐隊を編成しようと思ったのだが……」


「それがどうしたのかね?」


「それがオーガの数がかなり多くてね。おそらくは群れを率いているリーダーがいるのではないかと思うんだ。そして、今回の討伐任務と無関係ではないと私は踏んでいるのだがね」


「うーむ……」


「だから私としては、是非とも王都に近い場所から討伐隊を出して欲しいと思っているんだよ」


白髪混じりの貴族はこちら側を見てそう言った。支部長は冷静に返事をする。


「うちも、人員がひっ迫しており、とてもではないがそこまでの余裕は……」


「被害は一刻を争う事態だ。対処できなければ被害は甚大になる」


「その通りでございます」


「是非ともお願いしたい」


「どうかお願いします」


男達の口々に言い募られ、困った様子の支部長だったが、そこにサラが助け舟を出した。


「最近は非常に王都の支部も冒険者が魔物に狩られている現状がございますので、王国騎士団から人手を割いていただきたいのですが……」


「なっ!? 何を言っているのかね!? そんなことできるわけがないだろう!!」


「そうですよ!! 騎士団からオーガごときに人員を割けるわけがなかろう」


「何を言うのかと思えば……」


「まったく……」


「ふざけたことを言ってもらっては困りますな!!」


サラの言葉を聞いた途端、会議室内に怒号が飛び交った。

しかしサラは全く怯まない。


「いえ、これは冗談などではなく、本当に切実なことなのです。魔の森の近くで発見されたオーガの件でも分かるように、魔物の動きが活発化している傾向が見られます。このまま放置すれば、いずれ王国全体に大きな被害が出るでしょう。ここは騎士団を含めて冒険者と共闘し、互いに支え合っていくべきだと思っておりますが……」


「そっ、そのようなことは分かっておる! だからこそ、今ここで話し合っておるのだろうが!」


「そうですぞ! だいたい、貴方はパラディン任命を拒否されたはずだ!」


「騎士団を使うなどもっての外だ!」


「そうです! 貴方の個人的な感情で口を挟まれては迷惑です!」


「私が、パラディンの任命を拒絶したのは、貴方方を含む――、ギルド本部が他人事のように冒険者を扱っている点に納得できないからです。騎士団という戦力を保有しておきながら」


サラの発言に皆が一斉に反論し、それに対してサラもまた負けじと言い返す。その後も会議は紛糾し、結局は依頼に関して再検討するという話に落ち着いた。


そして会議が終わった後、サラは支部長に呼び止められた。


「いやぁ~、さっきは助かったよ」


「いえ、この国は本当にどうかしてると思いますよ」


誰も責任を取りたくないの一点張り――、どこかの支部に討伐任務を擦り付けようとしている。そんな時代が続いたことによって冒険者はどんどん減少している。本来ならば、冒険者ギルドが率先して後進の育成に努めなければならないのに……。


そして、王国騎士団も同じように手を組んで国家の平和を守るべきである。


「サラ君、この書類を各支部に届けてくれないかい?」


「はい。分かりました」


サラは書類を受け取ると、冒険者ギルド本部を後にした。


王都【ユグドラシル】は――、他国から『魔物の住む国』と呼ばれている。とある龍の住処であり、七つの龍の一体の討伐に失敗したこの王国には大量の魔物が住んでいる。


王国屈指の騎士『レオン・ステラ』は龍の討伐に失敗し、第一王女レイナ・アルフォードも騎士を守るために国の犠牲となった。それでもなお、この国は誰かを犠牲に、戦い続けている。

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