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風魔法使いの兄妹は、王女殿下に恋をする  作者: ともP
第三章:魔物堕ち
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018. 龍の巣

◆ フォーリナーを後にして、【龍の巣】に向かったサラとティナだったが、やはり目的の場所近辺には相当な数の魔物がいて、到着にかなり時間がかかってしまった。


「はぁ……、やっと着いたね」


「ええ、思ったより数がいましたが、なんとかなりましたね」


「これでかなり魔石が手に入ったし、研究が進むかも」


「あまり欲張らないでくださいよ?」


「分かってるって」


ティナは、魔石が入った袋を大事そうに抱えている。そんなティナを見て、サラは少し不安だった。


「ティナ様、そろそろ行きますよ」


「はーい」


二人は、【龍の巣】に足を踏み入れた。中に入ると、そこには異様な光景が広がっていた。


「この魔力……、尋常だと思う」


「ティナ様、気をつけてください。ここは、今までの魔物とは別格の相手が出てくるかもしれません」


「わ、分かった」


サラは、いつでも魔法を使えるよう準備をした。そして、ゆっくりと奥へ進んでいく。すると、巨大な影が見えてきた。


「あれは……、ワイバーン!?」


二人の目の前にいるワイバーンは、全身が黒く染まっていた。そして、目が赤く光っている。さらに、翼が大きく広がっており、今にも洞窟内で飛び立とうとしているように見えた。


サラの全身が大きく震え――、思わず剣を落としそうになる。


「グギャァアアー!!!!」


その雄叫びを聞いたサラは、すぐに剣を構え直して戦闘態勢に入る。ティナも剣を強く握りしめながら詠唱を始める。


「我は、神の名のもとに命ずる。風の刃で敵を切り裂け!」


詠唱を終えると、無数の風の刃が吹き荒れながらワイバーンを襲う。しかし、その攻撃が当たることはなかった。


「グルルルル!!」


ワイバーンは、その巨体に似合わない速度で洞窟内を飛び、攻撃をかわしたのだ。そして、そのまま急降下してきて、鋭い爪で攻撃を仕掛けてくる。


「くっ!!」


サラは、なんとか剣で防ぐが、衝撃で後ろに飛ばされてしまった。ティナは、なんとかサラの前に出て魔法を放つ。


「我は、神の名のもとに命ずる。炎を纏いし槍よ敵を穿け」


その言葉と同時に、大きな火球が勢いよく飛んでいき、ワイバーンの体に当たった。その瞬間、爆発が起こり、ワイバーンの体は洞窟の最下層に落ちていく。


「助かりました、ティナ様」


「でも、まだ終わりじゃないみたい」


「そのようですね」


「グアァアアッ!!」


最下層から声が聞こえたかと思うと、再び上昇してきた。

ワイバーンは、先ほどよりも速く移動しており、二人に向かって炎を吐いた。


「水の精霊よ、我を守りたまえ」


サラは、咄嵯の判断で防御魔法を使った。すると、サラたちの前に水の壁が現れて、ワイバーンの攻撃を防いだ。反動で後ろによろめいたが問題ない。


「サラ!! 大丈夫?」


「はい、問題ありません」


サラは、すぐさま立ち上がり、体勢を立て直す。

逃げるという選択肢は既に失われてしまっていた。


「ティナ様、魔法で援護お願いします」


「うん! 任せて!」


サラは、ワイバーンの動きに注意しながら、少しずつ間合いを詰めていった。そして、ある程度まで近づくと一気に加速して斬りかかった。


「はあぁあっ!!」


サラは、渾身の力を込めて斬撃を放った。そして、その一撃は見事に命中し、ワイバーンの片目を潰すことに成功した。


「グガァッ!?」


ワイバーンは痛みのせいか、動きが鈍くなった。サラはその隙を見逃さず、何度も切りつけた。


「グギャァアアアー!!」


ワイバーンは、暴れまわりながらサラを攻撃しようとしたが、ティナの魔法がそれを許さなかった。


「今度はこっちの番よ」


ティナは、魔法を発動させた。


「雷の矢よ、敵を貫け」


同時に、いくつもの雷の矢が放たれた。それらは、全てワイバーンに直撃する。


「グアァアアアー!!!」


「まだまだ終わらないから」


ティナは、次々と魔法を放っていく。


「光の矢よ、彼の者を射抜け」


すると、光の矢が無数に現れ、それが一斉にワイバーンに襲いかかった。


ワイバーンはそれを必死に避けようとするが、数が多すぎて対処しきれていない。やがて、全ての攻撃を受けてしまい地面に落下した。その衝撃で洞窟の岩が崩落し、ワイバーンの姿が見えなくなった。


「やったの?」


「いえ、恐らく生きてると思います」


ただ岩の向かい側に閉じ込められているので生存を確認することはできない。


サラとティナは、警戒しつつ様子を伺うことにした。


しばらく経っても、何も起きなかった。


そこで、サラが慎重に近づいて確認することにした。ゆっくりと歩いていき、剣を構えたまま近づいた。


その時――、突然地面の中から何かが飛び出してきた。サラはそれが攻撃だと認識出来なかった。


「グギャァアアー!!」


「くっ!!」


サラは、なんとか攻撃を避けたが、腕にかすってしまった。サラの腕からは血が流れ出ていた。


「サラ!!」


「だ、大丈夫です」


サラは、傷口を手で押さえながら答える。ティナが寄ってきそうだったので、すぐに大丈夫だと伝えて安心させる。


「グギャアアアー!!」


ワイバーンは、大きく息を吸い込むような動作をすると、口から火の玉を吐き出した。サラは、すぐに魔法を使って防御したが、先程よりも威力が強く、後ろにあった壁が崩れてしまった。


「くっ……」


サラは、瓦礫に埋もれて身動きが取れなくなってしまう。そして、ワイバーンは再びブレスの準備をしている。


「グギャァアアー!!」


「させない!!」


ティナは、サラを助けようと魔法を放つ。しかし、ワイバーンは簡単に避けると、ティナに向かって突進してくる。


「きゃあ!!」


ティナは、ギリギリで避けられたものの、体勢を崩してしまった。


「グギャァアアー!!」


ワイバーンは、ティナの方を向いて口を大きく開いた。そして、そこに魔力が集まっていく。


「ま、まずい!!」


サラは、急いで立ち上がって魔法を放つ。しかし、間に合わずワイバーンのブレスが発動してしまう。サラの叫び声が洞窟内に響き渡る。


「ティナ様!!!!」


サラが叫んだ瞬間――、ワイバーンの頭上から大量の水が降ってきた。それによりワイバーンのブレスは掻き消され、ティナは無事だった。


「な、何が起きたの?」


ティナが上を見ると、そこにはその中心には人影が見える。王国騎士の服を着ており、腰には剣を携えている男がいた。


「大丈夫ですか?お二人とも」


その人物の片方は、剣を抜いてワイバーンに斬りかかっていった。


「グギャアアー!?」


ワイバーンは、慌てて距離を取る。その人物の攻撃は止まらず、連続で攻撃している。


「はぁああー!!」


その人物が剣を振ると、水の刃が発生し、ワイバーンを襲う。ワイバーンは、それを避けるのに手一杯になり、反撃ができない。ワイバーンが逃げた先からさらに魔法攻撃が飛んでくる。


「グギィイイー!?」


ワイバーンは、とうとう力尽きて倒れた。ワイバーンが倒れた方向からは、こちらも王国騎士の服を着た女性が走ってきていた。


「このワイバーン攻撃をあまりにも喰らいすぎてたようね。一発で力尽きたわ」


二人は、サラたちの所へやってきた。


「大丈夫でしたか?」


「えぇ、おかげで助かりました」


「そうですか、良かったです」


「ところで、あなたたちは?」


「私たちは、王国騎士団の者です。私はクリスティーナといいます」


王国騎士団も【龍の巣】に調査に来ていたようだ。そして、偶然にも洞窟の中でサラたちを見つけたようだ。


「て、ティナ様がなんでこんなところに?」


「ちょっと色々あって……」


「まぁいいでしょう。それよりも早く戻りましょう。この事が、王に知れたらまた怒られますよ?」


「そ、それは嫌かも……」


「ここに魔法陣があるはずなのですが……」


「あぁ、魔法陣なら私が壊しました」


騎士団の女性がそう言う。ワイバーンが魔法陣の守護者だったらしい。この一件まだ裏で糸を引いている奴が居そうだとサラは思った。


騎士団はまだ洞窟内の調査をするらしいので、サラとティナは先に外に出ることにした。洞窟を出るとさっきまで大量にいた魔物が全く居なくなっていた。


「サラ、右腕大丈夫?」


「あぁこれぐらい大丈夫ですよ」


サラは、怪我をした方の手を抑えながら大丈夫だとティナに言った。


「でも、一応治癒魔法かけておくよ」


「ありがとうございます」


ティナは、回復魔法を使ってサラの傷を癒してくれる。


「これでよしっと」


「ありがとうございました。ティナ様のおかげで痛みがなくなりました」


ティナは、得意げに胸を張る。そんなティナを見てサラは微笑んでいた。


すると、遠くの方から馬車がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

おそらく、救援にやってきた兵士だろう。


サラとティナは、お互いの顔を見合わせて笑った。そして、サラはふと空を見た。そこには、雲一つない青空が広がっていた。

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