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序章

馬鹿な人が書いたくだらない小説です

それをわかった上でお進み下さい

1章Turbulent 7th

序章一 世界が変わった日


世界が変わってから1ヶ月。

私はこの手紙を書き記します。


初めまして。

私のこの手紙を読んでいるあなたはどこの誰だか知りませんがここに書き記したいと思います。

この世界は完全に変わってしまった。

それもとんでもなく急に起こったのです。

偽りの日常は崩壊し幻想的で破滅的な非日常が生まれました。

なにより人口が急激に減ってしまったのです。

現在で生きている人間は元いた人数の10パーセント程でしかないでしょう。

ですが諦めないでほしいのです。

そして諦めていないからこそ今私はここで生きています。


九谷 麗



バチバチバチバチ。

私は武装してとある場所に出向くことになっていた。

それはかの有名な浅草。

今の今まで何とかなっていたその場所が陥落したという情報が入ったからだ。

「これは...」

東京都浅草のその場所では既に火の粉が上がっていた。

街の姿は過去の姿はなく。

ただ人が倒れていく。

「これは...もう手遅れですね」

私はこのように呟く。

実際手遅れであることはもう確定事項だ。

助けられる命はあるとは思うけどあって数十人くらいだろう。

それぐらいに今『どうしようもない』状況に浅草は陥っている。

助けて、誰か、死ぬのは嫌だ。

そこらじゅうでそんな悲鳴が聞こえているがでも助けられない。

歯がゆい。

私は走る。

誰か生存者はいないのかと走り回る。

倒壊したビル。人々の悲鳴の中を走り回る。


「悲鳴が近くから」と私は方向転換「大丈夫ですか」と声をかけようとしたのだが。

すでに時は遅すぎた。


大の男が子供に泣きすがられている。

そしてその背後にはもう魔の手が迫っていた。

私の速力であってもこの距離では『もう手遅れ』なのだ。

でも諦めるわけには行かないと必死で近づく。

「おい、そこのガキ。どいてろ」

「ママを・・・ママを助けてよ」

「んなことしてたらあいつらが・・・」

いきなり自分良がりな男の声が途切れた。

男の上半身は姿かたちもなくなり血が噴射する。

ここでやっと化け物の全容が把握出来る。

強靭な牙と足。そして捕まえるのに特化したその手。捕まれば一瞬にして食いちぎられる。

化け物の顔は昔の恐竜。体は鶏のようなもので尻尾はない。手はムチのようにしなっている。

「えっ...」と子供は泣くことすらもやめて化け物を見据えた。

当たり前だ。化け物に頭をまるごと食われて殺されてしまったのだからボケっとしてしまうのも無理はない。だけど...そいつにその行動は『致命的』出会ったと言わざるおえない。

「逃げて」私がそういった時にはもう子供は食べられてしまってました。

この光景を見て私は思うのです。

この世界は間違いなく狂い出したんだ...と。

人は蹂躙され住処を壊され。

このままでは誰ひとり生きられない。

そんな世界が待っているのが見えたのです。

...そしてそれは私に対しても例外ではない。

「私に何か御用ですか?」と後ろに向かって持っていた剣を突き刺す。剣は怪物の頭と口を貫いていた。

「ぐぎゃぁっ!?」

遅れて化け物は悲鳴をあげる。

この場合悲鳴なのだろうかという疑問が浮かぶがとりあえず問題はそこではない。

「こいつ...さっきの種類と同一種のようですね」

もう一度言いますが先程までボリボリと男と子供を食べていたのと同じ種類のようです。

手には大きな特徴があり掴むのが得意、しかし牙が発達しているため丸かじりの方が多いと報告は受けているもののようだ。

名前は『グーヴァ』そう名付けられている。

危険種ランク4程度の怪物だ。

ですが...そんなもの私には興味はありません。

「私にはあなた達を恨む理由はありません。ですが邪魔をするなら殺しますよ」

顔を貫いた剣で内側から外に切りつける。

完全に顔は破壊され化け物は塵となった。

このランクの化け物は一般人では対処は不可能であろう。

しかもひよった人間であるなら尚更。

「おいおい、小学生が何物騒なこと言っているんだ」なにか渋い声が聞こえてきたと思ったら見知った顔が手を振って近寄ってきた。相変わらずぶん殴りたい顔ですね。

「神父様ですか・・・。遅かったですね」と私は皮肉を言う。

教会の神父様が着てそうな黒服。神は黒で短髪。スラリとしていてヒゲがちょびっと生えているこのおっさんのことを神父様と呼んでいます。

元は私の学校の先生でしたが今となっては学校はありませんし元々の職が神父だったということで神父様と呼んではいます。本当は先生と呼んだ方がしっくりとはくるのですがね。

「あれの調達に手間取ってな。ところでもうこんなにやられてんのか」周りを見ながら神父は言葉を紡ぐ「これは悲惨すぎる」とも呟くがそれは私がもう言ったからいいです。

「遅いからですよ」

「そう言うなよワンピのロリータよ」カッコつけながら言われたのでカッチーーンときました。

なので「あなたから始末しましょうか」と指をゴキゴキ鳴らしながら満面の笑みを浮かべて神父に近寄る。

神父は「それはご勘弁だ。さてと・・・人助けと参りますか」話をそらした。

「・・・あなたがそう言うならそれに従う」

それがこの人の意思となるなら。

何度も助けられたこの人の礎となるのなら。

もしそれが望みで神父様は化け物の討伐に向かうというならばっ!

「でも私に遅れはとらないでくださいよ」

あなたは私、九谷麗くたにうるしの希望でもあるのですから。






序章二 当たり前だった日常


2568年7月1日金曜日。

東京都三鷹市のとある公園で、年齢12歳絶賛小学生である私「九谷麗」は1人で外で遊んでいた。

どうしてかって言われたら学校に行きたくなかったから。

理由は、同学年の恨み妬みの的になっていたから。

本当今の子供は容赦ないというか無さすぎ。

あっ、私も子供か。年齢12歳だものね。

カバンはシックな茶色の大学カバン。

中には一応今日使うはずだった教科書とノートが入っている。ちなみに全部丸暗記済みなので本来教科書はいらない。

「よいしょ」

ブランコにのってゆらりと足を伸ばす。

誰もいないこの空間で思い切り自由に行動している。なんて素晴らしい事なんだろう。

でもこんなことしてるとお巡りさんとか変態に声かけられそ...「へぇ、たまには神様のお告げに従ってみるものだ」声かけられた。

ここで自由の時間は終わってしまったようだ。

声の主は神父様のような服を着ている優男。

どう見ても怪しい人だ。

カバンから携帯電話を取り出し「警察に連絡」100当番と番号の0を押す前に「まて、そこの幼女待つんだ」と静止された。

なお怪しさ満点なので躊躇する気はない。

「幼女じゃない。小学六年生」

「なんだ、充分幼女・・・おっとその携帯電話をしまってくれ」と涙ながらに懇願されたので仕方ない。今回は許してやろうです。

「それで? なにか御用ですかロリコンやろう」とできるだけアホを見る目で質問してみたのだが。

「用っていうか君を誘いに来た」なんかナンパされた。

・・・うわぁ本物のロリコンか。

「今君は本物のロリコンと思っただろ」

神父に心読まれた。

なんでバレたのか。

「言っとくけどそういう意味じゃない。もしこの世界が終わってしまったら一緒に組もうという話だ」

この世界が滅ぶ?

どこの中二病患者ですかこの人は。

この日本では数百年戦争という戦争は行われず平和だった。

それなのに世界が滅ぶ?

笑っちゃうね。

今どきそんな滅びの予言しても笑われるだけでしょうに。

「仮に世界が滅ぶとして私に何か出来るとでも?」

「君は救世主になる。そんなお告げがあったんだ」

お告げ・・・随分オカルティックですね。

そんな意味不明なもので私を勧誘するとか・・・。

「バカですね」

素直な私の声が出てしまった。

その様子が目に入ったのか神父は顔を真っ赤にしている。

「バカって言うな。バカって言った方が馬鹿なんだぞ」神父は本気で怒っているように見える。

こんなテンプレで返す人がいるとは・・・希少な人間ですね。

結構気に入った。

少しくらい話聞いてあげようかと思うくらいには。

「でいつ滅ぶの?」

「今年度七月七日」

あら来週じゃん・・・えっ?

そんな近日中に滅んじゃうの?

ありえねぇです。

マジでこの神父何を言ってらっしゃるのですか。

「そんな顔されてもお告げだからな。なるようにしかならねぇよ。さてと、俺はもう行くわ」

変な事言うだけ言って去っていった。

何だったんだろ今の人。

あっ...名前も聞き忘れた。

まぁいいか、縁があればまた会うことになるだろうし。

「明日のことを考えよ。...明日は登校日...面倒...」

明日は第1土曜日。登校日だ。

単位をとるために3分の2は参加しなくてはいけないので登校しないとね。


打算的考えをもって私は明日を待ちわびた。

その日、現実的な過去でもっとも最低一日になるとは知らずに。



7月2日土曜日。

今日は登校日だった。

うだるけがつのる朝だけど行かないわけには行かない。

目覚まし時計はきっちりとアラームで叩き起してきたし、服はなぜか昨日着てた服までアイロンがけまでされて綺麗に掛けられている。


「麗、朝ですよー」

元気な母さんの声。

愛しい母の声だ。

今行くと答えて着替えを済ませる。

小学校なので服の指定はないけどみすぼらしい服を着てると陰口を叩かれる。

子供は無邪気なので普通に言ってくる。

それがうざくでたまらない。

オシャレなんて高校からやればいい。

小学校からお化粧するとか肌荒れしたいのかと言いたい。

着替えを済ませて階段を降りていく。

普通の家に比べてかなりの大きさを持つ我が家。

九谷家と呼ばれる名家。

これも何かと言われる理由でもある。

メイドは身の回りと掃除はするがご飯は母が作る。

そこまではいいのだけどいちいちチェックする必要はあるのだろうか。

階段降りたその先にある食堂の扉を慌てずゆっくりと近づき開く。

だいぶ重い。子供でも簡単に開けられるようにしとこうよ。


「きたか」


偉大なる九谷家。私の父親。九谷四蔵くたにしぞうが腕を組み顎に手を乗せていた。

えらい人はそのポーズがきっと好きなのだろうと目はつぶるけど公共の場でやったらただのマナー違反だということを忘れてはならない。

「はい、お父様。今日の朝食は何でしょうか」

「今日は母さんの得意なオムレツだ」

「やったー」

これは普通に喜んだ。

母の作ったオムレツは絶品だ。

そこら辺のプロにも負けていないと言ってもいい。

父の話だとオムレツの他には小ぶりのトマトが乗ったチキンサラダと焼きたてと思わしきトースト。きっちり軽く火が通っているのにもっちりのものを用意してくれるらしい。

気立てもよく料理のできる美人。よくこの父親を捕まえたものだよ。

「ところで麗。学校の方はどうかね」

いつものこの質問。

これにはいい加減うんざりだ。

いつも適当に済ませてきたけど。こればかりは苦手だ。

心配してくれてるのは分かってる。でも知ってしまえば相手が不幸になることは知っていた。

だからやらない伝えない。

そう、実際に起きていることでも口に出さなければ犯罪でもなんでもない。

だから言った。

「お父様、いつも通りです」と

「それは良かった」この言葉でいつも父は安心する。

私は元気だよアピールができる。これでいい。

これで何も起きない。

私だけが我慢すれば何も起きないのだ。

そういえばお母様の姿が見えませんね。

これはもしかすると朝から期待してもいいということですねっ!

「ご飯とデザート持ってきたわよー」

「お母様待っていました」

サプライズのデザートは、白桃のシャーベット。

旬の食材のデザートなので期待が高まる。

服と身だしなみと料理の待ち時間でゆっくりは食べていられない。

お母様はそこだけルーズなんだから。


「ではいただきます」

「そんなにがっつかなくて平気よ」

今はとにかく食事に集中しよう。

美味しい食事が活力となるしね。


私は手を合わせご馳走様と伝え私は学校に向かう。

姿は花柄の半袖、スカートは赤でベーシックなタイプをチョイス。ありがちでベターだけど金持ちって感じが出なくていいと思う。

むしろ小学生にしては身綺麗にしすぎてないかとも思うがそこは金持ち学校。身綺麗なのかま多い。カバンは小さめのものをに少し教科書つめてあるだけ。

「麗お嬢様。今日も車では登校なさらないのですか、お忘れ物はございませんか?」

メイド長である小此木に声をかけられる。

ナイスバディなのだが性格ドSで心配性だ。

彼女の服装はオーソドックスなメイド服。

だが細かく改造されてるのか裾は七分袖、スカートの部分には程よく生足が出るような切れ込みが本人から見て右側にある。


「平気です。メイド長、余計な心配です」


この確認も毎度のことだ。

もう、飽きるほどやっている。

少しくらい変化が欲しいところなんだけど・・・。

(期待しても仕方ないか...これがお仕事だから)

学校にお屋敷から向かうと徒歩十五分。

別段離れてないしとてもいいことだと思われる。

学校と言うが私自身小学生と言っている通り小学校、しかもエレベーター式の女学園というものだ。男はいるけど別のクラス。私の教室には誰1人男はいない。

全校生徒は300人程度。

年々人は減ってきているとのことだけどお嬢様学校なのでお金だけは潤ってるそうだ。

ちなみに理事の1人が私の父親である

そして一言で省略すると『金持ち』の学校なのだ。


キィィィィィッ!


自転車が急ブレーキした時に起きる音。

ここでこの音は、『嫌な予感』がする。

登校途中のこの音は大抵あいつらだって確証があったからだ。

「おいおい、お嬢様がまた徒歩登校だぜ」

やはり予想通りだ。

それにしても今どきその口調が流行してると思ってるのだろうか。

(彼女たちにはファッションでやってるのかもしれないですがダサい)

考えてる間に男のような口調の女子を筆頭に4人で自転車を用いて囲まれた。

そう4人だ。

こんなか弱い少女に4人で囲むとか外道ですか。

「囲んで...何のようですか。お山の上の大将」

私がお山の大将と呼んだのは心場こころば つむぐ

東京で長年トップを競い合っている会社の娘。

性格は感じた通りのゲス。顔は綺麗な顔立ちしているがありとあらゆる方向に尖った赤短髪のせいでヤンキー感が漂う。

服装だって上がシャツ、紺色の短パン。

男の子かって言いたい。

「相変わらずの喧嘩腰だな温室育ちのお嬢様が」

あんたも温室育ちだろうがと言いたかったところを口を噤む。こんなの相手にしてる暇はない。

私はつかつかと無視して通り過ぎ去ろうとする。

早く学校に行かないと...。

「おっと、こっちは通さねぇ」

男口調の心場が私の前を塞ぎ通せんぼする。

こいつらも遅刻するというのに頭沸いてますね本当に。

私にとってあんた達と関わるより単位(時間調節)なんですよ。

「邪魔ですよ」私は言うが「あえて邪魔してんだよ」と心場に返された。

それはそれは確信犯な事で。

ということはお仕置きしてもいいんですね。

言質取りましたし。

まぁこの場合多い方が有利なんで私が訴えられそうですが。彼女たちに大怪我しなければ何となく大丈夫でしょう。

目の前の驚異には実力で何とかしないと行けませんしね。

「では実力行使させていただきます」

やる気を見せるといい笑顔で私を笑う。

4人で囲みながら笑うとか間違いなく小物。

こんな娘が親の会社の社長は頭が痛いことでしょう。

私としても金持ちのイメージが悪くなるのでやめて欲しい。

「俺ら全員とやるつもりか? やってみろよおい」

また全員で自転車を使い私を囲い走り始める。

だけどそんなもので怖がるのはいい子ちゃんぐらいです。

短調に回ってるだけなら動きが読みやすい。

多勢に無勢ではありますが。

「誰が真正面からやるなんて言いました?」と私は走り出します。

自暴自棄で走ってるのではなく勝算があるから走っているのです。

自転車でこれだけの連携。

とすれば一つ崩すだけで穴が開く。

自転車に乗っていた4人は走り出すのに驚いてブレーキをかける。

動かない自転車など的に過ぎない。

「こんなとき用に持ってきたわけじゃなかったんですけどね」

カバンからダーツを私は取り出した。

一般的使われる安全なやつではなく本場で使われてるそれだ。つまりは殺傷性がある。だがこれを人に使うつもりは無い。

持ってるダーツは、趣味からきたもの。

長年やってきたので的当ては大の得意だ。

だからこそ当てられると確信する。


「ここっ!」


ダーツは吸い込まれるようにある場所に引き寄せられた。

ダーツを投げられてびっくりした子分動きが止まった。

もちろん計算ずくで狙いは動きの止まった自転車のタイヤだ。

人間というのは予想外の行動には頭にパニックが怒る。

だからこそ計算の余地がうまれる。

投げたダーツはしっかりと目標を捉えタイヤを貫く。


パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!


タイヤのパンクした音が響きわたった。

なぜパンクしたのかとあたふたする心場。

狙ったのは奴らの自転車のタイヤなのだから当然の結果なのになぜ慌てふためく。

現在ではパンクしないように施されているのも多いらしいけどダーツの前では無力である

空気が全て抜けきり自転車は活動を停止する。

あのような形では自転車は機能はしないだろう。

やることはやったと彼女らが止まっている横を私は素通りする。

慌てて追いかけようとするがその自転車では...。


「うわぁ!」


あの子達のリーダーの自転車が横転する。

連鎖するように回っていた仲間も倒れていく。

バランス感覚が掴めないのは当然のことで急に曲がろうとしたりすれば尚更転ぶ。

さらに不幸なことに皆さん盛大に絡まっている。

自己中人間だらけならまず数分は抜け出せない。

私はその様子を確認しつつ優川に隣を歩く。

どうせなら悔しがるように彼女に一言言い渡しておこう。

「さようなら」

「おい待てよ。ふざけんなよこのクソ女ー!」


どう見ても負け犬の遠吠えですね。

それほど大きな怪我はしてないとは思うけど気遣う意味はない。自業自得だ。

「はぁ自分から何もアクションを行わなければこんなことにならなかったというのに」

流石に遅刻はしたくないな」私は、走って学校へ向かった。

この早さなら五分とかからないはず。

ちなみに息切れしないのは日頃のトレーニングのお陰でもあるかな。

優雅と言わない走り方をしていると後ろからすごい勢いで変な人が追いかけてきた。

昨日あった変態親父だ。

私はなんか嫌なので全力で走り出すがやはり体格差のせいで追いつかれてしまう。

諦めて立ち止まって向かい合う。

「やぁ、またあったな」

「変態に知り合いはいません」

「君って本当に容赦がないな」


頭をかき分けながら神父様が涼しい顔して登校する私に付いて来る。

変態の癖に運動神経がいいとか...いや、変態だからかも。

そもそも大人だから子供に追いつけるのは普通か。でも私の運動神経などは高校生にも引けは取らないはず。それを平気で追いつくって...。

これでも運動神経、反射神経、動体視力、学力私は生まれた時に全て与えられた。

小学生にしては何やっても上手くいったしできないことは無かった。

もし私が適う相手じゃない場合の条件は努力してる大人と言ったところ。

なんせ経験値が違うし応用力も叶わないだろうし。


「そういえば名前を聞いてないな。君、名前は?」となんか爽やかに変態が聞いてくる。

「変態に教える名前はありません」

もちろんバッサリと切り捨てた。

だって教えたらやばそうだもの。

「私の名前は無罪むつみ じん。英雄王になる男だ」

「慢心ロリコン王の間違いですね」

「...君って本当に辛辣で変なことばっかり知ってるね」

失敬な。

暇な時検索したら欲しくなって買っただけ。

もちろん親の名義でガッツリ買ってやりました。

えへん。

まぁ知らない人に名前を教える訳には行きませんのでここら辺でダッシュしますか。


「無罪さんの名前は多分3分後まで忘れません…さらばっ」


私は間髪入れずに学校せ向かって走る。

変態神父はすこ驚いたあと私の後を駆け出した。

その距離100メートルなははなれていたはずなのに追いつかれてしまったが足を止める気は無い。

「だから名前を教えてくれないか」

「断固断る、知らない人に名前教えちゃいけないってお母さんに習わなかったの」

さらに速度を上げて神父を引き剥がそうとする...がやはり追いついてくる。

しつこい。

爆ぜろそこのロリコン。

走ってると校門が見えてきた。

あと200メートルもない。


「おーいもしもーし」

「もうそろそろ学校ですね」

「なんか無視されると悲しくなるっ!」


そんなことは関係ないと思うんだけど。

校門まであと100メートルを切ったところで神父がとまり携帯を取った。

着信音がどっかのメジャーなフリキュアのオープニングだったけど気のせいだろう。

確認すると「おっとそろそろ時間だ。また会おう少女よ」と神父こと無罪がどこかに向かっていった。

あの変態は一体なんだったのだろう。

まぁ、どうでもいいか。

それよりも目の前の校門だ。


「おい、門を閉めるぞ。急げぇ」


思ったより時間ギリギリだったようだ。

生活指導の先生。体育教師も兼任しているマッチョな先生が大声を上げる。服装は毎日ジャージ上下で徹底してる。ほぼ女子校みたいな学校にこんな犯罪おかしそうな装いだがまぉ人格者で妻がいてなんか色々と幸せらしい…爆発しろ。

さらに毎度朝の時間ご苦労なことで毎回これをおこなっている暇なの?

考えているうちに校門が閉まっていくが間に合いそうだ。

力を振り絞り最終的に閉まりきる前に校舎内に足を踏み入れた。

あそこからよく頑張った私。


「セーフ」

「おっ、毎度のことながら遅刻ギリギリだな九谷」

「それはこれから遅刻してくる馬鹿どもに言ってほしいですね」と皮肉めいて反論した。

「言葉遣いを注意する必要はありそうだが了解だ」このマッチョはいい笑顔で目が輝いている。

生徒を指導するのがたまらないのだろう。親身になる先生だからいい人なんだけどね。

そうこう真面目すぎるっていうかなんというか。

「いつか本当に素行不良で指導室いきだぞ」

「はいはい、注意しますね」

それはそれとして私はクラスに向かいますか。

「にしてもこの外見はどうにかならないんですか…この学校」

校舎もそうだが校内に入れば一目瞭然。

学校そのものの外見は純白のお城。

広い廊下、周りを一望できそうなテラス、有名そうな名画。階段ももうセレブって感じ。

無駄に土足で歩くのが躊躇ってしまいそうなほどだ。

一言でいえば金持ちの通う学校で一般生徒もいるにはいるが普通科と教養学科がわかれている。

学校名は『私立三鷹学園』。小中高大全てが入っているエレベーター式の学校。

だけど小中高大は四つの区分が分けられ交流は文化祭以外一切ない。というかは入れない。その理由としては昔、上級生徒が下級生相手に怪我させたことが原因としてあげられる。そのせいもあり学園内での交流は最小限とされていた。

(相も変わらず金持ちぃという印象ですね)

すれ違う生徒を見てそう思う。小学生だからと侮るなかれ。普通に大人が買えそうもないゴージャスな服を着ている。スパンゴールドドレスとか常時着るなよ。驚くわ。

それにしても私のことはくすくすと笑われているがどうせみすぼらしい子だと思われているのだろう。

好都合だけども。

「服ごときで偉ぶる理由がわからない」

私のクラスは2階であるため階段を上がる。10分くらいでつく手前階段の上がってすぐ側の部屋。補足しておくと、男子は男子の教室。女子は女子だけの教室で分けられている。

そもそも階段につくだけで10分てどうなのよ。

敷地無駄使いしてないかなっ?

6Bの表札。私のクラスだ。

扉の装飾までゴージャス…この金を市民に回せばもう少し普通科もましな教育受けられるだろうに。

「さてと行きますか」

親の地位は高いけれどもクラス内地位ワーストな私は「...おはようございます」と恐る恐る覗いて見た。

誰一人私を見ていない気がしたが教室にはいると奇異な目でこちらを見てくる。

当たり前といえば当たり前か...私という存在が異質だと皆思ってるんだから。

ほら、今もなんで学校に来るのよとか陰口が酷い。あの子達のように手を出してくれた方がよほど対処しやすいのもある。

今日も憂鬱だと自分の責任向かおうとするとどたどたと足音が聞こえた。

そしていつもの元気な彼女の声が聞こえた。

「いやっほー! 今日もみんな元気にしてるぅ!!」

私の後ろからとても元気な声がすぐ横で聞こえて耳を押さえる。。

こんな元気な子はこの小学校で一人しかいない。

例のあの子だ。

トラブルメーカーとムードメーカーを併せ持つ存在。


「春雨 きなこ、爆誕です」

「うるさいです」とりあえず裏拳でしばくことにした。

「ぐはぁっ!顔がァァっ!」

「いきなり背後に立たないでください」

「どっかの暗殺者ですかこのぉ」


ヘッドロックを決められた。

うん、私はこの子が苦手である。

なぜかって純粋にうるさいからという理由。

でも邪険にしてる私に構ってくるのは何故だろう。なにマゾなの?


「もう九谷はつれないなー。いつデレてくれるの?」とめげずに同級生の元気な女の子は話しかけてくるが「その機会は一生無いかもね」なんていったら「ガーン」とか驚いた反応をする。


効果音自分で言うとか本当にいいキャラしてるよね。

春雨きなこ。読み方ははるさめきなこ。彼女が言うには飲料水メーカーのご令嬢でれっきとしたお嬢様。私の親の会社とタメはるんじゃないかな?

総理大臣も同じ名前なのが気になるけど無関係ではないのかもしれない。

飲料水メーカーの方は母親が、総理大臣の方を父親がとすれば辻褄は合う。

いやむしろ血統書付きのチワワみたいなものだ。

そのように適当にしていると「朝の会を始めます。席についてください」などとクラスの扉を開け先生が顔を出す。担任が来たようだ。

相変わらず時間に正確な担任の名前は相模原夢さがみはらかなえ

東京大学を主席卒業して教師になったエリート。

そんな先生だからか要件を伝え挨拶すると帰っていく。

この間1分。

もうすこし時間にルーズでいいと思うんだけどね。

高学歴が泣くぞ。

1時限目の授業は化学。

2時限目の授業は国語。

3時限目、4時限目は体育。

午後は特別授業だった。

そういえば普通の小学校より難しいらしいこの学校の授業。

小学校の授業とは思えない程の授業量だ。


「これで今日は終わりになります、皆さんさようなら」

「「さようなら」」


待ちに待った放課後。

あいつに声かけられる前に退散...。


「ねぇねぇ、七夕祭り行く?」


出来なかった

にしても七夕か...あー、そんなのあったわ。

忘れてた。

祭りごとなんて興味持ってなかったし、行ったとしてもボッチだったりで楽しんだことは無かった。

また両親に限っては忙しいので祭りを回ることなどできるはずもない。

故に行く気など毛頭ない。


「やだ」

「えー、一緒に行こうよー」


人が嫌がってんのにこの子はどういうつもりなのだろう。

悪い子じゃないとは思うんだけどな。

私には根本的合わない気がする。

それに罰ゲームとかで何回か話しかけられたこともあるのでそれである可能性も捨てきれない。

(いやいやならこんな笑顔はしないしテンションなんて下がってるとは思うし)

学校では唯一教師以外で話しかけてくる相手。

普通に考えれば友達としてはいい相手なんだけど...。

「あの子もうざいよね。男子の人気者で容姿が整っていて」

「私たちのお父様より偉くなければどうにかしてあげたものを」

やっぱり陰口が聞こえる。

今度は春雨も一緒だ。

というか九谷の家をなぜこの人たちは知っていないのか。もし知ってて手を出してたらそれ相応の目に遭わせる。

この話題からわかるようにあの二人もいじめグループの一員である。

(聞こえてるはずなのにね。どうしてそんなに私に興味あるんだろ)

そう思わずにはいられない。

だって私に関わるだけでこんなにも酷い言葉を浴びせられるんだ。

普通なら声をかけすらしない。


「帰る」

「くーちゃん」


馴れ馴れしい。

私はすたこらと遠回りしながら巻くように学園内を歩き回る。

時間にして30分。

ここまでやればばったりとしない限りは平気のはず。

春雨...あの子に下駄箱で待つなんて知性があるとは思えないからだ。

「いませんね」

予想通り春雨はいない。

私は自分の下駄箱に向かい開いて靴を取ろうとすると手紙が靴の上に...さらには酷く生物が腐った匂いがした。。

またあいつらかと手紙をちぎる。

カミソリレターだとも思ったが違かったらしく普通に便箋が入っていた。

内容はとてつもなく不快感を感じるものだ。

『逃げたお前へ。屋上までこい。さっきまで話していたやつが待っているぞ』

ついにあいつら春雨に手を出したか。

手紙を放り投げ屋上へと向かった。



「あの子...お人好しにもほどがあるでしょ」


手紙から春雨きなこは朝のグループに呼び出されてのこのこついて行ったらしいことがわかる。

あの子がついて行った理由はまだわからない。

だけど私の代わりになることなんて有り得ていいはずがない。

しかし彼女も馬鹿なら私も馬鹿なんだろう。

信頼してない人間を助けに行こうだなんて...本当に偽善者だ。


「それにあいつらも馬鹿だ馬鹿だと思っていたけどここまでなんて」


いくら金持ちだろうとやっていいこととやって悪いことの区別くらい少しはついてると思っていた。

まぁ私をいじめようとしてる時点でやってはいけないことをしてるがそれは別に構わなかった。妬みだと考えていたし。

だけど他人を巻き込むと言うなら話は別だ。

許されることでは断じてない。



バァン。


屋上の扉を勢いよく開く。

その先にはやはり想像通りのメンバーがいた。


「春雨!」

「ついに来たかよオメェ」


状況の確認。

今朝潰したはずのお山の大将は春雨きなこを踏みつけている。周りには取り巻きがいて春雨は体と顔がコンクリートに密着していて顔に複数箇所傷がある。抵抗した様子はない。

このことからわかるように春雨きなこは抵抗などしなかったのだ。

彼女の性格を利用した悪辣な手だ。


「あんたら、やったことわかってんの?」

「あん。単なるテメェを呼び出すためのことに理由なんてねぇだろうが」


なるほど、こいつらは馬鹿だ。春雨を超える馬鹿だ。

何度もいうがこいつらは馬鹿を通り越して大馬鹿だ。


やってはいけないことを自分が正しいからやったと言っている子供だ。

こんな鬼畜に遠慮する必要は無い。殴るのに躊躇する必要も無い。

1歩ずつ近づいていくが春雨が私の方に顔を上げる。


「逃げ...ガハッ」

「誰が喋っていいって言ったよ」


お山の大将がさらに春雨の腰を蹴り潰す。

何度も何度も何度も何度も蹴り潰す。

春雨はもう顔から血が出ている。

小学生の蹴り程度なのでこの程度で済んでいるが普通に重症だ。早く病院に向かった方がいいレベルの怪我だ。


「おまえ、こいつが嬲られるのをずっと見とけよ」

「ぐっ」


もう止めて。

あなたは私の友達じゃないはずでしょ。

なんで私を助けようだなんて考えたの。


「春雨はなんで...なんで逃げろなんて言おうとしたの!?」

「...だってさ」

「喋るな、九谷...お前は偽善者だ。だからウザイんだよお前」


流石にもう我慢の限界だった。

全力を持って春雨の元に向かう。

私の行動は予測できていなかったのだろう『反応』が一瞬遅れている。

『クソが』と彼女は再び踏み潰すと叫び頭に向けて踏みつけようとする。

間に合え。


「きゃっ」


間一髪で春雨をもう1度蹴り潰そうとするお山を体当たりして私がなぎ倒すことに成功した。

そして彼女は仰向けになってこう言う「だって私達...もう友達でしょ」と。


友達...友達?

私のことを友達?

なによそれ。なんなのよそれ。

なんでそんな臭いセリフが出てくるのよ。

しかも自分が傷ついて、痛くて、辛くて...そんな時に。


「やろう...やっちまえテメェら」


一斉に私たちに襲いかかる取り巻き。

2人で1人は重症。

逃げられるとも思えない。

こんなときに正義のヒーローなんていてくれたらな...と思う。

けどそんな都合よくは...。


「春雨っ!」


襲われる刹那。春雨を抱え込み目を閉じた。動かずにはいられない。

だって私に関わるだけでこんなにも酷い言葉を浴びせられる、痛みを与えられる。

普通なら声をかけすらしない。

だからこそ彼女は私からしたら太陽だった。

だからこそそんな彼女が私を友達と呼んでくれた。報いなくてはならない。


「とぅーーっ!」


幻聴かな?

変な声が聞こえる。

これは最近聞いた声だ。

思い出したくもない声だ。


「...あれ?」

そういえば取り巻きに襲われているはずなのに痛くない。

全く痛くないぞwhy。

確認のためそっと目を開く。


「よぉ、救世主の少女よ。間に合ったようだな」


目を開くとそこには...やはりあの男...いや変態がいた。

それもやばめな格好で。

何故かうつ伏せでやつらに踏みつけられて恍惚な表情をしている。


「うわぁ...助けられたくないNO.1大賞だ」

「褒められるとら大変恐縮」

そこの変態さんよ、私は褒めておらんがな。

そんな感じで呑気に話していると

「やっちまえ」

「「オラオラ、金出せや」」

このように私たちに攻撃してくるはずの取り巻きが変態男無罪迅を総攻撃していた。

無罪はもちろん無抵抗でニヤついている。

完全無欠に気持ち悪いです。


「なんだこいつ弱いでやんの」

「大の大人癖に弱いとか救えないですわ」

「しかもニヤニヤしてるとか救いようがありません」


それはごもっとも。

言葉恰好良く登場しといてそれはないわー。

侮蔑的視線を無罪に向けていると「言っとくが私は弱い訳では無い。小さく可愛い少女を殴らないだけだ!!」と熱弁。

やばい。色々終わってる。

さらに目を輝かせながら声高らかに宣言する。

「yes Lolita no touch。それが私の生き様だ」

「全然格好いいとは思いませんよ...変態」

偽らざる私の本音である。

「私ながらベストタイミングだと思ったのだがな。これは失敬」すくっと何事も無かったかのように立ち上がる。

不良グループの大将『心場』を始め何が起きていたのかグループが理解出来ていないのかアホヅラを晒している。

そもそもここにどうやって入ってきた。セキュリティもかなり厳重のはずなんだけども。

少なくともこの学園事件のあった日から監視カメラの死角は教室とトイレの個室以外はない。


「変態、お前は何者だ」


お山の大将心場が聞いてくれた。

そこだけはグッジョブ。君のことは褒めたたえよう。それ以外は特に褒め称える気はないが。

よくぞ聞いてくれましたとばかりに歯を煌びやかせて目輝かせてる子の男の精神はどうなってるんだ。


「私? 私か? 私は...」


バサバサと神父服をたなびかせ右の手の甲を額に。

左手は手のひらをおへその当たりに当てるポーズをしてこう叫んだ。


「この学校の新任の先生『無罪迅』だ。フハハハハ!!」


嘘ぉ!!

なんでこんな奴雇ったの学園。

今年一番の驚きだよ。いやいやいやいやその前にこの男教員免許持ってたの。

いやまってここの教員の倍率割と高いよ?

かなりの一流大学でも入れないことのある狭き門だよ。

なのにこの男平然と教師になっているという事は相当頭が良いということに…。

世の中理不尽なのでは?


「げっ、先公かよ...」


取り巻きが先生だってよ。

思いっきり殴ったり蹴ったりしてしまいましたわ。

とか後の祭り的な会話をしてる。


「君たちは早く逃げろ。私たちは君が見てない前でこいつらにお仕置きしなくてはならない」


なんで私たちの前ではダメなのかの説明をしてもらいたいけど。それを聞くのは怖い。

むしろこのロリコンの行為を見たくない。


「頼んだ...無罪先生」

「任されたぞ生徒よ、さて調教のお時間だ」


不穏な言葉が聞こえたが私はその場から春雨を抱き抱えて立ち去った。

この後すぐに屋上からなんか卑猥で変な悲鳴が上がったりしたけど聞こえないふりをしておくのも今はしないといけない。

それにあの変態でも校舎内で愚行はしないだろうし...にしても軽いなこの子。

体重30もないんじゃない。


「あはっ、結果助けられちゃったね」

「あの変態に貸し作るとかまじ死にたいです」などと言うと「死んじゃダメだよ!!」凄い剣幕でくわっと言われたので「死ぬのは冗談です」と返してあげた。

怒ると意外と怖いのね春雨。


それにしても大きな貸しを作ってしまいました。

貸しを返すために不純異性交遊とかやりたいとか言ったら警察に通報しますけれども。

むしろ社会的に抹殺待ったナシ。私は身内以外には非常な人間なのです。


「もう大丈夫だと思うし。下ろして貰っていいかな」

「疲れてないけど?」

「なんか恥ずかしいの察してっ」


そこまで言われたら仕方ない。

下ろすとしましょう。

春雨は下ろされると「ありがとう」と傷がついた顔で私に笑顔を振りまいた。

強い子だ...私なんてあんなことされたら笑ってなんていられない。

笑うまでもなく相手にどう報復するかを考えてしまう。

悪い癖だと思うけどやられたらやり返してしまう。

もちろんそれが悪いことは分かっている。

けれどもそれ以上に自分にかかる火の粉は振り払いたい。たとえそれが負の連鎖となったとしても自分を守ることになるというのならだ。


「ところでうるちゃん」

「いきなり愛称とかで呼ばないでください」

「いいじゃん、友達って否定しなかったじゃん」

「そ、それは」


確かに友達じゃないなんて否定しなかった。

だから即友達というのもなんかおかしい気がする。でもこの強引さ...悪くないかも。


などと考えているうちに保健室に着く。

取手に手をかけるが開く様子はない。


「保健室...は開いてないか」


土曜日の放課後ということもあるのだろう。

人の気配がない。しかも下校時刻は多分すぎてるため校門は締まっているはず。

そして時期的にテストまで1週間もない。申請して部活をやっているところがないのだからもうあの変態とあいつら以外は警備員を含まず全員帰っている頃だろう。


「それなら教室に行こう。カバン忘れてきちゃった」

そうしますかと今度は教室に向かう。

教室からはそう離れてないので2分ほどで到着。

実は私もカバン置いてきてしまっていたし決して忘れたわけじゃないからね。

勘違いしないでよねっ!

教室は鍵が空いている。

まだ戸締りしてないところを見ると今日の宿直はあの変態なのかもしれない。


「あったよー」


二人分のカバンを持って教室を出た。

私のカバンの惨状?

きくな。

一言で言うなら例に漏れず酷いことになってるとだけ言っておく。

きなこに見られないようにしながらカバンを回収。こんな時カバンが小さいとかなり楽だ。

回収したところで「よぉ」と先生らしき神父に声をかけられたので「げっ、変態」ととっさに反応してしまった。


「助けてあげた人物に酷くないその仕打ち」

「あれを見てそう思うと思いますか?」


この先生の後ろにはあの暴力を奮ったヤツらがいた。完全になにかに溺れた顔をしており「こんなの感じたことない」みたいな問題発言している。


「何もしてないぞ」

「嘘おっしゃい」

変態が下駄箱でトロンと呆けているあいつらを見たら言いたくもなるわ!!

無罪はきなこに駆け寄って全体を舐めまわすように見る。


「おっと、そう言えば春雨。体は無事か?」と心配するあたりまだ人間なのかもしれない。

でも先生が言うと変態のセリフにしか聞こえないなー。


「平気です。ちょっと左足が痛いですけど」抑えながらきなこが言うので「どれ、見せて貰えないかぶるぉう」途中で触ろうとするのを理解して蹴り飛ばした。


「ちょっ、なにうぉア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


私はさらに腰に背後から蹴りを入れる。

先生は大人だったのでそこまでは飛ばなかったけど引き離すことには成功する。

にこやかな笑顔をしてるのは気持ち悪い。


「幼女の癖にいい蹴りを持ってるじゃないか」

「触れるな変態...先生」

「取ってつけたように言わなくていい、一応私も少し前まで殴られたり蹴られたりしてたんですけどねっと」まるで何事も無かったかのようにまた立ち上がる。


...あれ?

この先生の怪我が見当たらない。いくら何でもあれだけ無抵抗にやられれば多少の痛みや跡が残るはず。

そして私の一撃...あれを無傷で終われるはずがない。すくなくとも腰を全力で蹴り飛ばしていた。


「...どうかしたのか?」

「いえ、なんでもありません」

「ですか、それはそうと病院に連れていくとしますか。怖い連れがいる事ですし」


信用がないあんたが悪い。

それに...。


私は無罪迅を再度見た。

春雨は気にしてないが本当に何一つ無かったかのように晴れやかな顔だ。

さっきまで蹴られたり殴られたりした人間の顔ではない。


「車を取ってきますね」無罪が車の鍵をくるくると回し、職員室へ向かい鍵を取りに行った。


「教師なのは分かりましたが...」


初めてあった時は嘘ん臭いにわか神父。

今回はちょっと頼りがいがある変態教師だ。

いったい...なにものなんだあの先生。

謎すぎる。


「持ってきた、乗ってください」

「お邪魔します」

「...私も乗る」

高級車...ではないけどそれなりに高い車に乗ってきていた。

多分メッソの車当たりだろう。

それでも神父ならほとんど変えないような値段だ。


「少し飛ばしますよ」

今どき珍しいマニュアル車。

正式の手順を踏みながら順序よく加速させていく。30秒もせずに60の速度を超えたのでこの人なにものだろうと考えずにいられない。


何度か赤信号に捕まるも15分で到着。

なおついてきた理由は皆さんお察しだろう。2人きりにはさせたくなかっただけ。


病院で受付を済ませ春雨は診察室に入る。診察を行ってる間2人きりだ。

これは考えていなかった。

しかし好都合でもある。


「さて、俺に聞きたいことがあるんじゃないか?」

「猫やっぱり被ってたんですね」

「それはバレるか。最初にあった時は一人称が『俺』だったからな」


にこやかな先生から真面目になった先生。

ギャップ萌だろうか。気持ち悪い。

男がやってもイケメンに限るだろ。


「俺に言えることならなんでも答えよう」

「ならまずは一つ目。どんなお仕置きしたの?」

「最初に聞くべきはそこなのかいっ!!」声を荒らげた。病院では静かにと変態は看護師さんに怒られていたが私はコクンと頷く。

それ次第では対応を考えざるおえないし。


「はぁ、あの子達にしたのは単なる科学の力だよ。こんなの見たことあるかい?」


取り出したのはボールペンみたいなもの。

なんかどこかの映画で見たようなものだ。


「これは記憶を消す装置だ。副作用として性的快感を1~2時間与える程度で」

「...近寄らないでください」


ドン引きです。

そんなものを小学生に使うなんて...変態が。

もっと穏便に出来たんじゃないかなぁ。

まぁ快感与えるだけなら穏便なのか?

絶対違うと思うけど。


「そんな顔をしないでくれ。せっかく貰ったのに使わないなんて損じゃないかっ」

「しかも好奇心で試したよこの人最低だ」

「やってしまったものは大目に見てくれ。それに一つ目ということは二つ目があるのだろ?」と今度はこちらに問いかけてくる。

「そうですね。変態トークに構ってはられないです」


一呼吸おいて私は確信に触れる決意をした。


「あなたは人間ですか?」

「ほう、やはりそう来たか」


先生はくすくすと微笑む。

何がおかしいのか。

まず尋常ならざる体の強靭さ。

いくらなんでもあれだけやられてほぼ無傷は筋肉がない細身では無理だ。

さらに何事もなく立つことも出来ない。


「そうだな。結論から言うと半分は正解だ」

「半分?」

「大部分の骨、腕と背中の皮膚少しを特殊な金属で加工してあるんだ。後は特に何もしてない。それに顔の傷がこの程度なら最新技術で数分とかからない。あとは怪我なんだけど鍛えてるからくらわないだけさ」


なるほど。

どうやら相当近未来にこの人はいるようです。

病院いらず、医者泣かせです。

ついでに人間を超えてます。


「だからといって無敵ではない。常人よりパワーが出るだけだ。その他の部分は人間だよ...そろそろ出てくるだろうから無駄話は終わりだ」


「なんの話しをしてるのかな」とにこやかな顔で診察室からでてきた。

良かった何事もなくて。

何かあったら私が私を許せなかった。

こんな事態を起こす原因はあいつらにと私だった。

無関係な人を巻き込むのは私としての大失態。

謝りたい。でもこの子は謝って欲しいと思っているのか分からない。

人間というのは難しい。

自分基準で考えたら酷い目にあってしまうと思ってしまうくらいには。


「大丈夫?」

「何ともないって...傷薬貰っちゃったけど」


どうやら何も無かったらしい。よかった。

本当によかったよ。

安心したせいで涙がでてくる...えっ?


「うらちゃん泣いてるの?」

「なんでっ...」


涙?

私に涙?

ここ数年枯れ果てたとばかりに思っていた涙?

そうか私にもこんな感情が残っていたのか。


「そうか、久しぶりだけどこんな感じだったんだね」


久しぶりに流した涙の味は塩味だった。


次の日からの日々は楽しかった。

時間が早く過ぎていった。

春雨のとの時間はとても充実したものになり毎日一緒に行動。

登校から門限まではいつも遊んでいる。


4日間で地元の遊びスポットは遊び尽くしたと思う。

それだけこの街が狭いということなのだけど。


そして7月6日の放課後。


「ねぇ、うらちゃん。この前も聞いたけど七夕祭りいくの?」きなこがいつも通り声をかけてくるので「どうしようか迷ってる」と答えた。

前の私ならおざなりにしていた。

だけど今ではこの通りだ。

「迷ってるなら一緒に行こっ!」


こうやって強引に誘われるのも久しくなかったので本当に楽しい。

こんな時間がずっと続けばいいのに。

この時はそう思っていた。


きなこに連れていかれていると例の変態が目にはいった。


「よっす。お二人さん」

「あっ、先生じゃないですか」

「私の時間を邪魔するのはどこの変態ですか?」

「相変わらずひどいぞ九谷。それと比べて春雨は素直でいい子だ。ところであの時のことを覚えてるか?」


あの?

ああ、あれのことか。

意図的に情報が伏せられているということは春雨にはきかれたくないのだろう。

そんな与太話聞かせたところでどうってことないと思うのだけど。

誰も信じないだろうし。


「刻限が迫ってきている覚悟はしとくように」

「はいはい」

私の反応にやれやれと無罪は首を振る。

「それじゃ春雨くんも気をつけて」

「わ、わかりました?」


無罪は職員室の方に向かっていった。

準備をするとかブツブツといいつつ。

きなこはポツンと立ってこう一言。


「先生は何が言いたかったんだろ」

「さぁ?」

何考えてるか分からないし改造人間だし。

「まいっか。えとね、えとね。明日行くなら時間なんだけど...」


約束の時間を取り付けた私は家に帰宅した。


※ ※ ※


明日が楽しみだな。

約束の時間は放課後だし。

時間も余裕がある。

お父さんとも話して夜遅くまでの外出許可もとった。

春雨の方は最初からとっていたのか問題ないよ帰ってきたのを見て笑がこぼれる。

実は分かれる間際携帯のアドレスを教えて貰っていたのだ。

待ち合わせするならこの方がいいよって。

初めての友達。初めてのお祭り。胸が高鳴っていく。


「麗、今日はご機嫌だな」

「そんなことはありませんお父様」

「あなた、私は最近もっと可愛くなってる娘を見ると心が踊ってくるの。そんなに詮索してあげないでください」

「それはそうだな。麗、楽しんできなさい」

「はい、お父様」


楽しみにしつつ落としやかに口にものを入れる。

うまい。


「ご馳走様でした」


自室に戻ってお風呂の準備。

食事も終わったのでそれさえすめばあとは布団にもぐって寝るだけだ。

お風呂に入るため脱衣所に入り来ている服を脱ぎ生まれたままの姿になっていざゆかんお風呂へ。


...しかしそこには先客がいた。


「ひゃっはーーー!!」

「なにごとっ?」


なんかふざけたなにかが飛んでいる。

声も出てるしなんだあれ。

見た目的に人形のような形だけどもしかして人型?


「おっ、誰かきた...なんだつるぺたか」

「よぉし、あとかたもなく消滅させてやる」

私はお風呂場に飛んでいるまだ謎の生物を鷲掴みした。機動が読めていればこんなものは速度など関係ない。

握ったものは服を着た天使の翼が生えたなにか...えっ、マジで人形が動いとるん?


「はなせつるぺた!」カチン

「このまま握り潰してやりましょうか」

「痛い痛いいたぁい」


こんな天使がいてたまるか。

人の体型に文句言うやつは死すべし。

是非もない。


「くそぅ、暴力女め」

「今の状況でまだそんな口を...てい」

「いぎょーーーーっ!」


あらやだなんか気持ちい...へっくしゅ。

寒いからお風呂入ろ。

掴んだままお風呂に入ろうとしたら結構邪魔だけどこのままお湯に漬け込むか。

お風呂の湯船に人形らしきものを突っ込む。

空気が出てきているあたりなんだかリアルだ。

30秒程で引き上げるとゼーゼー


「頼みますから離して下さいお願いしますつるぺた様っ!」

「つるぺた?」

「いえ、美少女様」


よろしい。

しかたないので離してやることにした。

お風呂入れないしね。

私は空中に人形を放り投げる。

すると空中で飛び止まった。


「ふぅ、やっと開放された」

「それであんたは何?」

「よくぞ聞いてくれました私は天空の使者。天使ラファエルです!!」


本のイメージと全然違うんですけど。

もっとかっこよい感じじゃなかったっけ?

こうちっこくて、鷲掴みできて、金髪で、幼稚園児みたいな体型をしてるわけがないでしょ。

ついでにこんなガキみたいな性格してるはずもない。


「あっ、信じてないなっ!」

「うん」

だって質問に答えてくれてないし。

「あら正直...て聞いといてそれはなくない!!」

「声うるさい」

「ふぎゃ」


容赦なく天使(仮)の顔に裏拳を行使。軽々と吹き飛んでいった。手応えが軽いので空中に飛んでるのが吹っ飛んだ原因かもしれない。意識は数秒失っていたらしく立ち上がらなかった時はやっちまったかと考えてしまったのは内緒です。


「いい?」拳を握りしめながら強めに言うと「はい、静かにします」静かなトーンで人形はしょぼくれていた。

「よろしい」


これ以上話を平行線に持ち込みたくない私は直球で質問する。


「なんでここに来たの?」

「あっそうだった。忘れてた。神父に伝えに言ったあとこれ渡されたんだった」


神父、先生に託された手紙を渡される。

中身は...。


「ストップ、まだ開けちゃダメ。ことが起きなければ開ける必要は無いと言ってたから」

「...了解」


手紙も湿気でやられちゃうからね。

もうだいぶびしょびしょだけど。

いつからいたんだこいつ。

いや私のせいかこれ。


「また会うことがあったら宜しくな。天界が今騒がしいし」

「待って今なんか不吉な事言わなかった」


言い終わる前に天使の姿はなくなった。

一体何が起きてるんだ。

ここで思い出したのは神父様の言葉。

ピンクで花柄のパジャマを着つつ思い出していた。

「世界の...崩壊」

そして急にその時がやって来る。




1か月前


世界再誕の時来たれり。

現在人間という生物に対話の必要なし。

人間どもには試練を与える方向で神が動かれたし。

我が代行者よ。我が息子よ。

人間にも神にも試練を与えるがいい。

この世は再誕する。

理を全て変えてしまえ。

今の地球…地獄はまだ試練にならんだろうからな。


「どう思うよこれ」


僕の頭に流れたのはこの無駄に矛盾と同じことを何度も言っている文章。

なぜ僕なのかという疑問は置いとくとしてなぜこのようなことを提案してくる。

確かに今の世界はつまらない。

髪さえも死にそうなほどつまらない。

むしろ神様の方が似たようなことの繰り返しで飽き飽きする。

だからこそなにか一石を投じて僕が世界を変えることも望んでいた。

だからこんな言葉が僕の頭に響いたのかもしれない。


「もしやれるとしたら僕たちが守っている冥界の門を開くくらいか…はっ、今まで護ってきたものが世界を変える鍵とはね」


僕は力をつけなくてはならない。

早めに未来を知る力を奪い壊滅、再誕の道を確定させなくてはならない。

だが冥界の門を開けることにより人間は新たな力を得ることになる。

さらには冥界の門から出てきた化け物と戦うことになったりするだろう。

まさしく試練、まさしく地球という世界が生まれ変わる日。

僕がそれを作り出せるなら光栄じゃないか。

たとえどんなに汚名を受けようとも、どんな悪役を演じようとも、たとえ姉に殺されるような運命があったとしても僕がこの世を変える。

この下らない世界を変えてみせる。

だからせいぜい期待して見てろよ頭に直接来た声の主よ。

お前すら巻き込んでこの世界を壊してやる。

お前の全てを奪ってやる。

絶望が強いほど光は…希望は輝くのだから。


「ここから始まるは最も醜きものたちの戦争だ。意地汚く生きるものこそこの戦いに勝利をもたらすだろう。たとえ何百年かかろうとも僕という悪を倒してくれる日を待っているよ。人とそれに抗うもの達よ」























読んでくださってありがとうございます。

かなり更新は遅いですが気長に待ってくれると幸いです。

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