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第二話 冒険者パーティーと報酬

「お帰りなさいませ、旦那様」

「出迎えありがとう、ハワード」


「お連れのお客様は用心棒ご希望の方々ですね」


「ああ。冒険者パーティー『聖杯(せいはい)欠片(かけら)』の五人で、彼がリーダーのジルクだ」


「ようこそお越し下さいました。執事を仰せつかっております、ハワードと申します」

「これはご丁寧に。『聖杯の欠片』のジルクと申します」


 他のメンバーは、二人が剣士で共に二十六歳のマットとノーマン、火魔法が使える二十四歳のエレナ、それに水魔法が使える二十二歳のローラだ。剣士が男性で魔法使いの二人は女性である。


 ちなみにリーダーのジルクは二十七歳だそうだ。


 マットは角刈りの金髪で、顔から何からとにかく世紀末のアレを彷彿とさせる筋肉マッチョだった。ちゃんと服は着ているが、教会の子供たちが見たら泣くかも知れない。


 一方のノーマンは、一言で言えば乙女ゲーなどに出てきそうな攻略対象である。長めの青い髪に涼しげな目元は、王子様とか貴族様とかそんな感じ。着痩せするタイプなのかも知れないが、一見して剣士とは思えない痩身だった。


 エレナはライトブラウンでウェーブのかかったハーフボブに、鮮やかな青いリボンを結んだお洒落さんだ。顔は可愛いというより美人といった方がしっくりくると思う。


 白基調でストライプ柄のロング丈ワンピースもよく似合っているし、変にフリルとかはついてないから雰囲気も落ち着いていて好感が持てる。


 対してローラは全体的にゆるふわな印象だった。腰まで届く長いサラサラの髪はモスグリーンのストレート。輪郭も丸っこいので、実年齢よりも若く見える。


 また胸もそこそこ膨らんでいて腰が括れているので、エロさはイライザといい勝負と言わざるを得ない。


 そして件の家族が病気というのはこのローラのことだった。


 ちなみに水魔法は攻撃ではなく生活のためのものだ。魔物狩りなどで長期間遠征する場合、飲み水の有無が死活問題となってくる。ところが遠征先で水場が見つかる保証なんてどこにもないし、よしんばあったとしてもそのまま飲めるわけがない。


 そこで一般的な冒険者パーティーには、必ずと言っていいほど真水が出せる水魔法の使い手が入っているのだった。


 だから彼女は基本的に戦闘には参加しない。


 余談だが、この世界で治癒魔法を使えるのは極限られた者だけなので、冒険者パーティーに所属しているような者はいない。いてもルーミリン教に利用されるだけだから能力を隠しているのだろう。


 とにかく治癒師がいるパーティーなど、勇者のところ以外で俺は聞いたことがなかった。回復は主に薬草や毒消し草、またはそれらから精製されるポーションが主流なのである。


「ひとまず彼らに屋敷の中を案内してやってくれるかな。終わったら応接室に通してくれ。俺はキャロルを呼んでくる」

「かしこまりました」


 それからしばらくすると、応接室で待つ俺とキャロルの許に『聖杯の欠片』の面々がやってくる。彼らにキャロルを紹介するとマットとノーマンが顔を上気さて鼻の下を伸ばしていたが、それに気づいたジルクに窘められていた。


 マットはマジで気持ち悪かったし、ノーマンはイケメンが台無しだったぞ。さすがのキャロルもこれには少々引いていた。


「うちのメンバーが失礼致しました」


「まあ、気持ちは分からないでもないが、こう見えてキャロルのレベルは50だからな」

「「「「「えっ!?」」」」」


 全員で同じリアクションかよ。


「もっとも実戦経験はあまりないから、第一の警護対象はこのキャロルだ」

「第一警護対象はキサラギ様ではないのですか?」

「俺は不要だよ」


「もしかしてキサラギ様はレベル50以上……?」

「ま、そんなとこ」


 本当は300を超えているが、正直に言う必要はないだろう。


「そして第二警護対象がこの屋敷と使用人たち。第三は教会とシスターや子供たちだ」


「教会も警護対象になるのですね?」

「反ルーミリン教とかではないよな?」


「あ、はい。それは大丈夫です。むしろ神の守護のような役割も頂けるなら光栄の限りですから」


「日当は危険手当も含めて小金貨三枚を考えている。平時は二人常駐で残りは休みだが、二十四時間の交代勤務になるから無理のないシフトを組んでくれ」


「小金貨三枚ですか!?」

「少ないか?」


「いえ、緑毛鼠(グリーンラット)討伐報酬の十倍ですから驚いてしまったんです」

「それが毎日頂けるなんて……一カ月で金貨九枚分ですからね」


「うん? 違うよ。一人の日当が小金貨三枚だ。二交代で昼夜二人ずつの勤務だから一日だと合計十二枚。一カ月だと金貨にして三十六枚の計算になるはずたぞ」

「き、金貨三十六枚ぃぃぃっ!?」


「ただ俺もお前たち『聖杯の欠片』のことをよく知らないからな。最初の一カ月は試用期間として、日当は半分とさせてくれ」


 今はまだ礼拝に訪れる者がいるくらいで、危険なことはほとんどないしそれで十分だろう。


「一カ月後に互いに雇用関係を望んだ場合は正式採用とする、というのでどうだ?」


「「「「「お願いします!!」」」」」

「お、おう……」


 彼らが常駐する受付兼守衛室は、ルドルフに依頼した通りエントランスの入り口にあり、寝泊まりする部屋はその奥に六畳間が四つだ。


 当初は用心棒を四人と考えていたので部屋も四つ用意したのだが、男性陣と女性陣でそれぞれ一部屋ずつでいいと言うので、二つは空き部屋として残しておくことにした。


 これなら急な来客などがあった場合にも困ることはないだろう。


「食事は屋敷の賄いでよければ一食小銀貨三枚だ。これは使用人一律だから納得してもらうしかない。支払いは報酬天引きになる。

 共同だがキッチンもあるから、自分たちで料理するのももちろん構わない。ただ食材の仕入れの関係上、賄いを利用するなら三日前までにハワードに言うようにしてくれ」

「分かりました」


 小銀貨三枚は日本円なら三百円くらいだ。使用人たちから儲けるつもりはないし、料理人を雇っているわけでもないから妥当な額だと思う。


 ラルルとリルルの作る料理は好評だからな。次に皇都に行った時にレシピ本でも買ってくるとしよう。このまま二人にはがんばってもらいたい。


「それじゃひとまず一カ月間よろしく頼む」

「「「「「はい!!」」」」」


 この後彼らは利用していた宿屋を引き払い、荷物をまとめて屋敷にやってきた。

 これで役者は揃ったわけだ。そろそろ治療院を始めてもいい頃合いである。


 ということで俺はオリビアを伴い、冒険者協会へと向かうのだった。

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