表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コンビニのチキンが1番美味いのはこの先一生変わらない

作者: 犬三郎

「はぁ〜、さっみー」


 ここの駅は無人駅。利用者が少なくて、電車も少なくて、コンビニが近くにあるだけ。俺は電車から降りると、自転車置き場には行かず、コンビニに行きチキンを買う。いつもこの時間に揚げたてが食えて、夜飯が遅い俺はここでチキンを買うのが癖になっている。


「……誰だ?」


 駅の周りには腰を休める所は無く、熱々で食べたい俺は駅のホームに戻り、1個しかないベンチに座ろうとしたが、先客がいた。

 高校1年の冬、この時、俺はベンチに座らず立ちながらチキンを食べた。

 少しウザかった、夏から毎日あのベンチで食べてたのに、何故か今日からずっとあそこにいる。


 学校終わりに、電車から降りるとそこにいる。俺の憩いの場所が奪われた。あそこで食べるチキンが1番美味しいのに。


「でも……どけなんて咲宮(さきみや)には言えないしな」


 2週間、彼女はそこにいた。2週間そこにいて、顔を見ていたら薄々誰かって分かってきた。

 疎遠になってた咲宮だ。にひひひっと特徴的な笑い方で、笑顔が可愛かった。ほぼ5年近くも会ってない、向こうは俺を忘れてるだろう。ちょいと気まずいけど、ここで食うチキンは譲れない。


 そんなある日、俺が咲宮の横を通ろうとしたら制服の裾を掴まえられた。


「うえ……? ど、どうしたんですか?」


「これ……」


「え? 200円? どういう——」


「私にもチキン買ってきて」


 チキン? っと聞き返して、うん。と頷く。俺は戸惑いながら、人の良さが出たのか、


「あ、あーうん、分かった」


 俺はホームを出て、胸に手を当てる。


「こっえ〜、止めてくれよマジで」


 ドキドキしてる、マジで焦った。あいつのこと最近見すぎて、気になってた所だから余計に心臓悪い。


 俺はコンビニから揚げたてのチキンを買い、咲宮に渡す。間近で見た咲宮はコロナってもんもあって、マスクをしていて、うん、まあ言いたくないが可愛い。

 肩まである黒髪に、赤色のダウンジャケットにスカート、黒タイツと、学校の女子より上手い化粧。

 こいつ、こんなに可愛かったけ? 小学生以来に会ったことなかったけど、女らしくなったな。


「座ってよ」


「あえ? あー、はい」


 咲宮の顔を見ていたら、買ってきたことを”ありがと”も言わずに左の空いてる椅子をトントンと左手で叩く。

 俺は赤面しながらも座ると咲宮が紙袋からチキンを取り、マスクを顎下まで移し、ハムっと擬音が出るみたいに食べる。


「うわっ、美味い」


 俺もそれを見ていたらゴクンと唾を飲み込み、食欲が出てきた。俺もチキンを取りだし、ガブッと食べる。

 揚げたてだから、溢れ出てくる肉汁とサクサクの衣。ここは脂身が多いところ、柔らかくて旨味が倍増。

 うめぇ〜っと思いながら中心部分に行くと淡白な食感。脂身が少なくて、ここも肉本来の味を感じる。


「間宮くん、いっつもこれ食べると幸せそうな顔するよね」


「——え? そんな顔してますか?」


「うん、してるよ。なんか昔を思い出すな〜」


「……あ〜そんなこと前も言われた……。ってか覚えてたんですね」


「覚えてるよ、私の数少ない小学校の思い出だもん」


『にひひひ! 間宮くんって本当に給食食べる時、幸せな顔するよね』


『——っ? そうかな、給食美味しいし、咲宮がご飯分けてくれるから』


『だって、間宮(まみや)くんの嬉しそうな顔見てたら私、”幸せ”なんだもん』


 咲宮は明るい子だった。クラスの中心で、給食の時は班の皆を盛り上げ、女子と男子からも人気。”1人”でいることはあんまりなかった。図書館に行けば人が付いてきて、最近するようになった日向ぼっこを教室の隅でやってても、誰かが話しかける。

 俺は咲宮とは仲が良く、咲宮の家に遊びに行くほどだった。そんな咲宮には弱点があって、怒ったところを見た事がない。

 優しすぎるんだ。だから、人が寄りすぎて、”崩れた”んだと思う。怖いぐらいに崩れるのは一瞬だった。気づいたら咲宮は休むことが多くなって、先生から突然咲宮さんに謝りましょうって言われた。

 咲宮は優しすぎるから、小学生の悪ノリを嫌と言えず、溜め込み溜め込み爆発した。クラスの28人の生徒から先生から呼ばれたのは13人。泣いて帰ってきた子もいた、もちろん俺も咲宮の所に行った。


『咲宮さんが水筒で水飲んでる時に、間宮くんが水筒の底を持ち上げるやつが嫌なんだって。それは覚えてる?』


 そこで俺はハッとした。あの行為は嫌だったんだ。なんとも言えない顔で俺の前に座って、咲宮の代わりに先生が喋ってるけど、そうなんだ。あれが嫌だったんだ、笑ってたのに、それで俺達も笑ってたのに。

 嫌なことを俺はやってたんだ、なんだそうなんだ。


『咲宮さんそれが嫌だって言えなくて、だから謝ろうね』


 咲宮はそれを機に1ヶ月、学校にまた通うようになった。なのに前より日向ぼっこの数は増え、そして人が集まり——


 いつの間にか来なくなった。


 俺達は1つの席が常に空白なのに慣れていった。いつも給食の牛乳は残り、デザートのクレープも残った。ジャンケンで勝って、食べて、咲宮を思い出す。


 そんなある日、咲宮が保健室で給食を食べるようになった。日替わりにクラスの2人が給食を届ける。

 俺の番が来た時、咲宮はまた”笑い”ながら受け取り、お母さんが付き添い給食を食べていた。


 また、ある日、先生が給食終わりに保健室に咲宮の様子を見に行くから、それに付いていく女子がちらほらいた。


 それがある程度続いた時、咲宮に会いたいクラスメイト達が我慢できずに雪崩るように会いに行った。

 咲宮は笑顔で迎えてくれたが、弱々しかった、部屋の角に行っていた。次の日、咲宮は学校に来なくなった。


 ————あ、怖かったんだ。


 今分かった。俺達が怖かったんだ、恐怖の対象でしかないんだ。俺達はもう一緒に教室にいることはなくて、行事にも、修学旅行にも来なかった。卒業式に来るかと思ったけど、来なかった。あれ以来、俺達は会ってない。会えないなら自分の気持ちを言おうと家まで行ったけど勇気が出なくて、後悔した。


 中学校もいると思った咲宮は中学校に居なかった。人伝に聞いた話では、他中に行ったらしい。

 そこから咲宮とは会わなかった。約5年振りの再会。


「咲宮さんは、今はどこに行ってるんですか?」


「通信制の高校、あと敬語は使わなくていいよ」


「……あーだよな、変だよな。じゃあ、気になってたけど最近ずっと駅に居ないか? 今2月だぞ?」


「ウチの学校は2月と3月はほぼ休みだよ」


「え、マジか。最高じゃん」


「まー、休みだらけってやることなくて最悪だよ」


「そんなもんか?」


「うん、そんなもん」


 俺はモグモグとチキンを食べ、咲宮もチキンを食べ切る。咲宮からゴミを貰い、レジ袋に入れる。ありがとうも、笑顔もなくなった咲宮、まるで別人を見ているようだ。


「なんで最近、ここにいるんだ?」


「うーん……なんか、小学生の同級生の顔を見て昔を忘れようとしてる」


「忘れようとしてる……。それで見知った奴はいるか?」


「ううん、もう誰も分からない。だけど、間宮くんの食べる顔を昨日みて、間宮くんだって”やっと”分かった」


 咲宮がマスクをし直し、こちらを見るから、俺も気恥しさからかマスクを口元に上げる。


「友達は出来たのか?」


「うん、出来たよ。女の子3人、みんないい子だよ」


「そうか、良かったな」


「うん、良かったです」


 咲宮は晴天とはいえない、鉛色の空を見て微笑む。目が笑った感じだ。そうだ思い出した。咲宮は笑うとえくぼが出来るんだ。皆、その気持ちのいい笑顔に引かれるんだ。


「久しぶりに間宮くんと話せてよかった。分かったこともあったし」


「分かったこと?」


 咲宮はちょっと無言になって、俺の顔を見る。俺はまた気恥ずかしくなり、目をそらす。


「後悔してんだ。過去の選択を、ずっと後悔してた。通信行って気持ちは紛れたけど、ずっと心残りだった。だけど——」


 咲宮は自分の言葉が出ないのか、少し言葉が詰まり、俺は何も言わないで待つ。


「——間宮くんの食べてる姿見て、幸せな気持ちになるのも”変わらない”し、私の選択も”変わらない”って気づいた。私はこの道で生きてきて良かったって思う方が楽なんだって。色んな苦労したけど、今を頑張るよ」


「今を頑張るか……」


 咲宮は俺達みたいな平凡な道を送ってない。

 自分から茨の道を行って、後悔しないはずがない。だけど、俺は昔から咲宮に何かを返したかった。咲宮から貰いっぱなしだった、貰っててロクにあげてなかったから崩れたんだ。あの時から、咲宮と話せず、ずっと心残りだった。後悔してたんだ。だから、今この勇気を出さないと。


 一瞬の勇気、一生の後悔。どちらを選ぶってなったら。


「咲宮……AINE交換しないか?」


「……いいけど、逆にいいの?」


 咲宮は驚いた目で、聞き返す。


「……俺、小学生の頃からずっと変わらないことあってさ。まだ咲宮のこと好きなんだ」


「——えっっ!?」


 咲宮は慌てて立ち上がり、手で顔を隠し、はあ〜っとため息をこぼす。


「私、本当はさっき嘘ついてて」


 咲宮は照れるように言葉を濁しながら、


「間宮くんだけは、直ぐに”気づいてた”の。だって、私もそうだったから」


「え? ほんと?」


「……うん、ほんとです」


 2人は無言になり、咲宮は携帯を取り出し、AINEを開く。間宮も直ぐに携帯を取り出しLINEを開き、2人はAINE交換する。


「また明日ここに来て、チキン食べていい?」


「……おう、俺は毎日ここでチキン食べてるから」


「にひひひ、ありがと」


 間宮は照れながらも、咲宮の久しぶりの独特の笑い声聞いて、マスクで隠れていてもえくぼが思い浮かぶ。

 俺達は高校生になっても、多分卒業しても咲宮の変わらないことはあるし、俺も変わらないこともある。過去も今も変わらない、変わってくのは未来だけ。だから、今を後悔しないで、だから頑張って生きてくんだ。


「でも、コンビニのチキン本当に美味しかったね」


「だろ? コンビニのチキンは1番美味いんだよ。あの美味さは絶対に一生変わらないよ」

カクヨムコンの為に書こうと思って、書きました。深い、あと500文字あったら纏められるけど、纏められない!


【解説】


コロナもあるんで、今と過去を後悔してる人はいるだろうけど、過去と今を後悔するより、今を頑張って、過去を受け入れる。チキンの美味しさのように、コロナがあったてことは一生変わらないから。今を勇気を出して行動して、後悔のないように生きる。=今を頑張るみたいな

っで、今を頑張ると言われた間宮がずっと言えなかった好きという気持ちを勇気をだして告白するっていうことです。

やべぇ、書ききれてない。けど! これは、あれは、どういう事だと、考えて欲しかったのでまあいいかなと。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ