四話 汐里視点 最愛のぬいぐるみから逃げる
めちゃくちゃ短いです。500字ちょっとしかありません。すみません。
お母さんが倒れる音がした。
……那奈を守らないと。
悲しさよりも、そういった責任感や使命感が心の大半を占めるのは、わたしの心がさっきの事件で変になったからなのか、それとも元からか。
それでも、まだ失われていない命は大切に守らないといけない。那奈が無事で、お父さんがちゃんと捕まったら、またここに来よう。
わたしがそんなことを思っていると、背後から「ぁ゛ぁ゛……ぁ゛ぁ゛……」とかすれた電子音声が聞こえてきた。
わたしがばっと後ろを振り返ると、そこには、チャルンが立っていた。
意志を持たないはずなのに、自我なんて持っているはずがないのに、まるで自らの野望を果たすかのようにこっちを見ているチャルンに、わたしは背筋が寒くなるのを感じた。
「じおり、ぢゃん……。いっじょに、あぞぼ……?」
「っ。いやっ……。来ないでっ……」
チャルンと話すのが夢だと思っていた。
環や美衣に「チャルンはおもちゃ」と言われても、怒って否定してきた。
環や美衣、お母さん、那奈に、チャルン好きなことに呆れられていた。
けれど、実際に、このような状況になると、チャルンのことが怖くて仕方ない。
「那奈の安全を確かめて、一緒に逃げるため」という名目で、わたしは最愛のぬいぐるみから逃げるようにしてその場を後にした。
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