三話 花夜視点 殺人事件
今回は、前話でお母さんが言っていた『犯人』についてです。
お母さん視点です。
……汐里、那奈を守ってね。自分の身を守ることも忘れないで。
私――小鳥遊花夜は夜にぬいぐるみを捨てに行こうとし、それに反対した汐里から走って逃げていた。
だが、それがまずかったのだ。私は焦って冷静さを欠いていた。今思えば、その時の私の行動は愚行だったとしか思えない。
あろうことか、持っているぬいぐるみ――確か、チャルン――に殺された。まだ死んではいないけれど、もうすぐ死ぬので間違ってはいない。
そのぬいぐるみはAI機能が搭載されているけれど、いくらAIだからって、意識的に人を殺せるわけじゃない。人間が操っているはずだ。
犯人はすぐに分かった。汐里や那奈のお父さんで、私の夫――小鳥遊竹だ。
差出人の名前が無い宅配の荷物なんて、マンションに住んでいると送れる人が限られている。匿名発送でもシールが貼られているはずだ。あのぬいぐるみは、ビニール袋に包まれていただけだった。
私の夫――竹さんは時々、何かを企んでいるような顔をしている。夜中に汐里達の寝ている寝室に行ったり、あのぬいぐるみをじっと見ていたり、よく分からない機械をいじっていたりと思い当たる節は山ほどある。
それに、私が最初に抱いた彼への第一印象は、『なんだか怖い人』だった。口では笑っているのに、とても優しい口調なのに、どこか鋭い光を帯びた目は何かを企んでいるようで、全く笑っていなかった。
そして私は、今頃になって思い出す。
彼を見たとき、この人、何か知っている気がする、と思ったことを。
十四年前に大ニュースになった、百人もの女性を騙した結婚詐欺師の名前が中田武だったことを。
私が何となく顔を知っているなと思ったことも、彼の名前を組み替えると中田武になることも、全て、彼が犯罪者だったからなのだ。
読んでくださってありがとうございます。
今日の投稿はここまでになります。たぶん明日も投稿します。
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私のペンネームは、友人二人の名前から取ったものです。個人情報流出を防ぐため……とか言って許可を取りました。もしかしたらこれを読んでいるかもです。