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第7話『寝取られ男は力不足を実感する』

「ジョン、あんた目に隈ができてるじゃない」

「あ、母さん。ごめん、徹夜で勉強してて」

 なんとかいつも通りの時間に起きられたかと思い、リビングへ向かうと朝食を用意していた母さんからそう言われる。


「急に勉強なんてしてどうしたの。王立学園にでも入るつもり?」

「まぁ……うん。母さんたちにも楽させたいし」

「えっ?本当なの?昨日の晩に確かにお父さんが言ってたけど……」

 感心というより驚きの顔で俺を見つめる母さん。

まぁ、そうだよな。子供の頃の俺ってマジで勉強のべの字すら知らない馬鹿だったし……。


「うーん。私はあまり勉強は教えることはできないけど、根を詰めすぎるのも良くないわよ。ちょっと今日は外で昼寝でもしてきなさい」

 まぁ、確かに徹夜は良くないよな。

ボーグとか寝不足にしてないし……やっぱり才能の差ってやつなのか。


「でも今日は畑の手伝いしなきゃ」

「うちは専業農家じゃないし別に今日くらい良いわよ。お父さんにも伝えておくから」

 






「昼寝って言われてもなぁ」

 シロツメクサが茂る草原。

一本だけ生えた木の下で俺は寝転がっていた。

青い空のキャンバスで、うさぎみたいな形をした雲やドラゴンみたいな形の雲がゆらゆらと右から左へと流れていく。


 いかんせん、昼寝しろと言われたらなかなかできないのだ。

とはいえ、このまま寝ないのも体に悪そうだし。


「どうしたもんかね〜」

「あっ、ジョン!今日はここにいたんだね!」

 クソビッチ!なんでここに!?

一番顔を合わせたくないやつナンバー1じゃねぇか、畜生。

昼寝して寝過ごしときゃよかった。


「あ、あー、エリーゼ。1日ぶりだな」

「ジョン、今暇なの?私すごく綺麗なところ見つけたの、良かったら一緒に来ない?」

 太陽みたいな笑みを俺に見せてくるエリーゼ。

お前が尻軽じゃなきゃ乗ってただろうがな、悪いが俺は乗らねぇぜ。

とりあえず適当な理由つけて逃げよう。


「そ、そういえば俺ってば剣術の練習しないといけないんだった〜。いやー、エリーゼと行きたいの山々だけど剣術は大事だしなー。すまんエリーゼー、また今度ー」

「えっ、あっちょ、ジョン!?」

 いやー、我ながら名演技だったんじゃないか?

まぁいくら嘘とはいえ、そこらで昼寝してバレたら嫌だし適当な河原で木の棒でも振っとくか。







 ――木の棒が石にぶつかり折れる。

パキッと音を立てて先端が川に吹き飛び、そのまま下流へと流されていくことだろう。


「だいぶ劣化してんなぁ俺……」

 技術的には正しいはずだ。

ただいかんせん、体の非力さと追従性の低さが目立つ。脳みそで考えてもそれを体が動かすまでがのろいから、結果的に斬撃の力の配分なり剣筋なりに対して相当の誤差が生まれて劣化を生み出してるんだろう。


 まぁ想定はしてた。

してたんだが、ヒビすら入れることができないのは流石にプライドが傷つく。これでも木の棒で石くらいは砕けたんだけどなぁ。油の抜けた枝でもなさそうだったし、完全に俺のせいなのが尚更歯がゆい。


 まぁ、確定で基礎練だろうなぁ。これは。

とりあえず岩を木の枝で砕けるくらいにならなきゃ山賊撃破なんて夢のまた夢だ。1から技術も持ってないやつならまだしも、なまじっか技術はあるのに非力なやつと変わらないということもわりかし恥ずかしいのだ。


 今日、昼寝はなしで基礎連だな。

そう勝手に目標を決定し、俺は河原で良さげな木の棒を見繕うのだった。

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