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第17話『寝取られ男と謎の令嬢』

「……大丈夫ですか?」

 殺した野盗から剣を引き抜き、空振りして血を飛ばす。

先程からこちらを見ていた女の子に対し、俺はそう言葉を投げかける。



「ぇっ……あ、うん、だ、大丈夫」

 氷みたいな透き通った髪に、綺麗なオッドアイ。

ボロボロだが、装いからしてどうみてもお貴族様だ。

 


 今回の人生ではやけに貴族に会うな。

前世のドブみたいな人生とは大違いだよ。




「えっと、とりあえず着いてきます……ですか?今から村に向かう途中で、よかったら」

 敬語は慣れない。

そりゃそうだ、底辺で暮らしてた人間がリセットして一年そこらで敬語を使いこなせるわけがない。冒険者時代でさえ、敬語なんてあんまり使ったことはなかった。




「……それで、大丈夫。連絡も、したいから……」

 クローバー村には大した設備もないからアレだが、早馬とつてくらい出すのは簡単だろう。















「そういえば、ご令嬢はなぜあんな支道を通ってたんですか?」


「ご、ご令嬢?……あの道を通ってたのは、クローヴィス城に向かうためで」


「ん?クローヴィス城は反対方向ですよ」


 ぱかぱかと馬の上にお嬢さんを載せて、俺は歩いて馬を引いている中。そう発言すると、お嬢さんがやけに驚いたような顔になる。



「え……で、でもマリックは確かにあの道で大丈夫と……」



 そうなると今度は深刻そうな顔でブツブツ言い始めた。

まぁ、たしかに俺も野盗ごときに殺られる護衛とか、クローヴィス城の近くなのにわざわざ貴族の馬車を襲う野盗だとか、更に言えばなぜかクローヴィス城の反対方向に向かうとか気になる点はある。



 だが、俺は言わない。

やぶ蛇だからだ。変に首を突っ込んで困ったことにはなりたくない。



 処罰はされてないし後悔もしてないが、貴族の息子をぶん殴った前例があるのだ。世が世で辺境伯が出来た人間じゃ無いなら確実に俺の首は飛んでいた。



 ぶつぶついうお嬢さんを見て見ぬふりして、俺は見覚えのある草原地帯にたどり着く。


 とはいえど、極寒だ。

これで王国の中部地方だと言うのだから、北部地帯なんてとこはいわずもがな、だ。




 冬季なんて北部に行く道は殆どが凍結して封鎖してるか雪崩で通れない上に、冬の北部なんて行くのは自殺行為だ。まぁ前世は仕事の都合で行ったこともあるが……長いはしたくないレベルだったな。





 馴染みのあるボロボロの木製橋を通る。

さて、もうすぐだ。






「お嬢さん、付きましたよ。クローバー村です」

 本来、前世では二度と見ることもないと思っていた村のゲート。山賊の襲撃もあったせいか補強されてるが……子供の頃の思い出の象徴がそこには確かに見えていた。

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