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第2話『寝取られ男と訓練』

「はぁぁぁぁ!」

「甘いっ!」



 ガィン!と金属の軋み響しあう音が響いた。

ジョンの手にあるのは鋼鉄の剣……最も、刃引きはしてあるようだ。



「さすが……ですッ」

「フッ、お前も筋がいい!」

 


 辺境伯から”銀虎の騎士"フローレンスとの訓練が許されて一週間ほど……。



 だが、この二人はまるで未だ会ったばかりではないほどに共鳴しあっているのが目に見えて分かるほどだ。



「そこっ!」

「うぁっ!?」


 先程から切り合っていた2人。

互いに剣をほぼ互角に見える如く交わしていたが、僅かな隙から容赦なく押し崩され、ジョンはそのまま打ち倒された。



「し、フローレンスさん。やはりお強いですね」

「……よそよそしく敬語は言わなくてもいい。期間限定といえど、君は弟子。あの御令嬢はまだしもな」

 

 尻餅をつくジョン。

その首元には刃引きされた鉄剣が突きつけられていた。



 あの御令嬢……というのは現在進行系で辺境伯の手伝いをしているヴィクトリアのことを指しているのであろう。


 ジョンは一瞬つばを飲み込み……そしてどこか覚悟を決めたような顔で口を開いた



「わかり……わかった、よ」


「それでいい。しかし、その齢で俺の剣と対等に打ち合えるとはな。将来有望……いや、それどころではなさそうだな」


(前世じゃ全然褒めてくれなかったけど、今生じゃすごく褒めてくれるなぁ。……まさか前世であなたから全部教えてもらったからですよ、とは言えないし)

 


 ジョンは愛想笑いのようにぽりぽりと頭をかく。

城の中庭、その上に広がる平和な秋空で小鳥がぴよぴよと舞っている。 



「さて、再開だ。それともまだ休憩は必要か?」


「いや、大丈夫。休憩は……もう十分だ」




  














「フゥ……ヴィクトリア。やけにあの男子おのこへと肩入れするのだな。本来フローレンス殿は数日程度の滞在の予定だったのに……」


「元よりお分かりでは?」


 客用の椅子に座った辺境伯。

本来辺境伯が座るべき執務室の椅子には、ヴィクトリアが座っては積まれた書類を精査していた。



「……私の仕事をすべて奪う気か?」

「心外です、お父様。お仕事をお任せになられたのはお父様ですよ?」


 心内で苦笑いをする辺境伯。

多少簡単な仕事や一部の書類を担ってもらおうとしただけだったのに、まさか殆どの書類を細かく精査するとは思わなかったのだろう。



「クローバー川の木橋修繕、森林に出現したオークの調査または冒険者の派遣、領軍の装備調達……お父様、こう言ってはなんですが仕事をため過ぎかと」


「まさか国内の3分の1の役人が帝国に侵蝕されたとは知らなかったのさ……それらがいなくなったぶんの隙間は領主に来るのは明白だろう?」

 

「言い訳は結構です。ひとまずの精査は終わらせますが、あとのお仕事はお父様がお願い致します」



 まったく、つくづく母親に似た娘だ。

そう声無き言葉を紡ぎ……辺境伯は秋空を見つめていた。


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