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第1話『悲哀のサラブレッド』

間章開始です

 私のお母様はカレンデュラ公爵の令嬢だったそうです。

三年前にお父様に迎えられるまで、私はずっとカレンデュラ公爵の保有する別館にて少ない使用人の方達と一緒に暮らしていました。


 お父様に迎えられるまで、私はずっと一人ぼっちでした。

お母様は幼い頃に亡くなり、それまではずっと冷たい館の中で一人だけ。使用人の方々も最低限以上は私に関わってこようとはしてきませんでした。


 外に出ることは許されてませんでしたから、窓の外に写る外の風景に思いを馳せたりすることが唯一の楽しみであったと記憶しています。


 だから、でしょうか?

お父様に迎えられたときはとても嬉しかった。

ページがぼろぼろに擦り切れるまで読み込んだ童話のように、勇者が姫を魔王の城から救うお話のように。どこかそういった気持ちを抱いていました。


 今思えば、なぜお父様がその時になって私を迎えに来たのかはわかりません。辺境伯家、公爵家からしても私は隠すべき存在だったでしょう。


 でも、お父様は優しく私に微笑んでくれました。もう大丈夫だよ、と言ってくれました。

なにより辺境伯家もすごく心地の良い場所だったのも、私にとってはすごく幸せでした。


 ただ、二年前からヘンリーお兄様からのいじめが始まってからは私の風景はずっと灰色でした。

毎日、お兄様の標的にならないようにどうするかばかり考えて。お父様に言うこともできないまま、日々を過ごしていたのです。


 でも、その時の私はお兄様を尊敬していました。

お兄様は魔導の才能があると聞き及んでいましたし、何より私が犠牲になることでお兄様のストレス発散になり……それで、結果的に辺境伯家が栄えてくれるならと。そう思っていたのです。


 ただ、ある日を境にそんな日々は終わりました。

ある日、お父様から兄妹二人でクローバー村近くの森でピクニックでもという話があったこともあり、内心怖いながら向かいました。


 御者や使用人の方々のいるときはお兄様は何もされてこなかったのですが、二人きりになった途端に激しく暴力を振るわれてきました。

当時の私といえば、ただ謝ることしかできず。

でも、そんなときでした。


「いかんでしょ、お兄さん。妹の顔殴っちゃ」

 ふと声の方向を見れば茶髪で、暗めの綺麗なヒスイ色の瞳をした男の子が立っていました。

私と同年代でしょうか?服装は貴族というより平民の方々のようでした。


 でも、彼は毅然な態度でお兄様に詰め掛けて私を助けてくださいました。

当時の私は何がなんだかというようで泣くことしかできず先生を困らせてしまいましたが……。



 でも、それが先生との初めての出会いだったのです。

今となっては、懐かしい思い出ではありますが。

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