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第41話『決戦・ヘンリー』

 村のほとり。

真っ白に咲き誇るシロツメクサの海の中に、二人の男が対峙していた。


「よく見つけられたな」


「ヴィクトリアから教えられたんです。おそらくあなたが犯人であろうと。そしてあなたを目撃したという情報をたどったら、ここに辿り着けました」


 ボサボサになった金髪を揺らしながら、幽鬼のような姿の男……ヘンリーはそれを聞いて高笑いをする。だが、その笑いには悲哀しか含まれていない。


「全て、奪われたのさ。俺はあの女に、腹違いの妹に全て奪われた」


 ヘンリーは自身の顔をかきむしるかのように爪を立てれば、狂ったような表情を繰り返す。


「俺は帝国と通じていた。だが、それも、その努力も。帝国の情報を把握し……すべて父上に役立ちたい一心からだった。それが3年前、あの女が見つかったという時から父上の心は俺から離れた」


「お前にわかるか?自身の母親が愛されていなかったとわかったときの絶望が、俺が愛されてないと思わていなかったときの絶望が!」


 その悲痛の叫びに対し、ジョンは満身創痍でありながらもその硬い表情を崩すことはない。


「だからといって実の妹を殺そうとして、帝国の手先ともいえる山賊を扇動してもいいのですか?」


「あぁ。俺の取れる手段すべてを使ってお前らを潰そうとしたよ―――まさか父上が10歳の女に軍の一部の指揮権を渡すまでは想定できなかったがな」


「どちらにせよ、あなたはもう終わりです。大人しく……投降してください」


 それに対し、ヘンリーは笑う。

その瞳からは確かに涙がこぼれていた。


「俺に……投降しろ、だと?平民のお前が―――ふざけるなっ!」


 ビュンッ!と風切り音を立ててジョンの頬を風の矢が掠った。

だがジョンは構わず毅然とした態度を崩しはしていないようだ。


「平民風情が舐めやがってッ……素手でも俺に勝てるとでも言いたいのか?あァ?」

 その言葉に返事はなく、ジョンは静かに拳を構えた。

ギリッ、と歯を鳴らしながらヘンリーは髪を掻き上げ……自らも拳を握り構える。


「その舐めた顔が二度とできないように痛めつけてやるよ」


「――――アンタは、自分のやったことの重みがまだ理解できてねぇのかよ」

 ジョンが、その感情を垣間見せる。

それは怒りだった。まごうことなき、赤い怒りが目に宿っていた。


「そうやって玩具みたいに人の命を扱って、くだらないプライドで人の人生を狂わせようとして……なのにさも自分が悲劇のヒーローみたいに語る」

 

「俺はアンタみたいなくだらない人間が大嫌いなんだよ。ヘンリー・ザ・シャムロック!」

 その言葉に、ヘンリーも表情を大きく歪ませた。

シロツメクサの花びらが突風に乗り散る。まるでモンシロチョウが花畑の上を舞うかのように小さな花びらが吹雪のごとく舞い散る。


「くだらない……だと。俺がくだらないだと?」


「あぁ、死ぬほどくだらないな!何度でも言ってやるよ。死ぬほどくだらねぇってよ!」


「―――殺す。今ここで、お前を殺してやるッ!!!」

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