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第34話『寝取られ男は証拠を見つける』

 夜になるまでになにか見つけられるように、修道院跡の中を探っていく。

人気ひとけはまったくない。どこぞの冒険者が遺跡を乗っ取ってキャンプでもしていたのかと思えば、人の気配は一切感じないのだ。


 だが、ゴブリンが住んでいたのは確かなようだ。

中にはほのかにゴブリンの獣臭がするし、ゴブリンたちが住んでいたのであろう箇所にはすっかりとカピカピにくたびれた獣の皮が穴だらけで置かれている。ベッドにでもしていたのだろうか?


 そして遺跡の壁にへばりついた黒く変色した血痕。

数は少ないが、ゴブリンらしき骨が散乱している。


 もっとも、ゴブリンを殺すの自体は不自然ではない。

どこかから依頼をされてゴブリン狩りをしにきたという線もある。

でもそうなると露骨に疑問点が浮かび上がる。


 冒険者は中途半端な狩りはしない、ということだ。

しかもホブゴブリン狩りをするような階級の冒険者は正直言って逃すような真似はしない。でないとホブゴブリン狩りができるようになるまで成り上がることはできないからだ。


 ゴブリンたちを逃せば、潜在的な被害をもたらすことになる。

事実上の依頼失敗。更には冒険者ギルドの汚点にも成り得る……それなのにギルド側がみすみすゴブリンを逃すような冒険者を派遣するわけがない。


 つまりこれは冒険者の仕業ではない。

だからといって一般人の仕業でもない。返り討ちにされるからだ。だいたい普通の人間は近づきはしない。


 なら、なにが犯人なのか?

広い修道院跡を歩きながら、あたりを見渡す。


 壁や屋根を失い支えるもののなくなった柱がいくつも並び、柱の表面にまとわりつくツタもあいまって、まるで悠久の時が流れているように感じさせる。


 修道院の真上は木の葉のない場所なのだが、崩壊していない箇所もあるせいで実際の光の量は森の中と大差ない。

建材の切れ目から生え伸びた木をナタで切りつつ、奥を探っていく。


 すると、ある場所にたどり着いた。

修道院の一番奥……おそらくはもともと礼拝堂だったのだろう場所。


 六大精霊の聖像が半壊して緑に侵食されながらも確かに存在感を示すその場所の奥に、明らかに風景とは違う異質なものを見つけた。


 松明の焦げ跡……それにランタンの壊れたあと?

急ぎ近寄ると、そこには明らかに人がいたという痕跡がべっとりとこびりついていた。


 そして、そこには一枚のくしゃくしゃにされた羊皮紙が一つ。

それを拾うと、そこにはこう書かれていた。






 まもなく準備完了。

精霊祭に決行せよ。




 たった短い二行。

だが、俺はそれに寒気を感じる。

感じたことのあるものだ……そう、これは。


「まさか」

 もしかしてとは思い、しかし成立してほしくはなかったその考えがとたんに現実味を帯びさせていく。

修道院跡を追い出されたホブゴブリン、ホブゴブリンの率いる集団を返り討ちにするほどの武力を持った連中、そしてまるで犯行の決行を示唆するようなこの紙。


 そんなやつら、軍隊と冒険者以外に一つしかない。

武力を持ってすべてを奪う、悪の権化とも呼べる連中。


「山賊……っ!」

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