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第13話『師匠と愚者/中編』

「無駄だと言っているじゃないか!分からず屋だなぁ!!」


 完全に優位に立ったことを自覚し、うぬぼれたピエールの声がいたるところから響き渡る。


「……」

 目を細め、神妙な面持ちで太刀を両手で正眼に構えるフローレンス。刃、鎬、峰……あらゆる"面"が武器であり、それをいかに使うかが剣術である。


「人形軍、かかれ!銀虎の首をもぎ取るのだ!!」


 ピエールの号令が響くと共に、関節を不気味に傾け曲げながら襲いかかる無数の人形兵たち。


 彼ら全員は人間を原料にした存在。

もはや消えかかってはいるが、魂さえもある。


(フローレンス・ペタル!お前の弱点はその人徳だ!そこを突きさえすれば私にも勝機が———!!)


 刹那。

風を切る音が響き渡り、人形兵全員の首が既にそこにあったかのように、一斉に宙へ浮かぶ。


「は?」



「桜流太刀術奥義 "飛花落葉"」


 花が風に乗り、流れるように首は宙を飛ぶ。そして時が経ると青葉が朽ちて落ちるかのように、それらは一寸の狂いもなく、地面へと落ちた。



「に、人間だぞ?全員人間なんだぞ?な、なぜだ!フローレンス・ペタルは善人だろう?」

 ピエールから狼狽する声が往々に響く。

だが、フローレンスは冷徹な眼差しでその言葉を射抜くように睨みつける。



「生の苦難か。或いは死の救済か。少なくとも、貴様が思っているほど……この己の身は清廉ではない」

 ピエールへと近づくフローレンス。

刃に整然と彫られた樋からは、落水の如く血が流れ落ちていた。


「な、なんだと?」 


「答えは単純だ。悍ましき、人道より落ちた愚者よ」

 フローレンスの双眸が、鋭く、怒りに染まる。

獰猛で、気高き虎を彷彿とさせる眼力。逆立つ銀の髪を併せたそれは、まさしく銀の虎だった。



「わが刀はこれより修羅を宿す。奇を衒う搦手など、通じぬと思え」


「は、ハハハ!!人形兵を殺した程度で調子に乗るなよ……フ、フフ、開き直ったか!!この人殺しめが!!」


 そういってピエールは後ろから儀礼用の杖を手に取る。恐らくは、魔術を使うための代物だろう。



「私の体は完全たる人形体なのだぞ?不死なのだ!貴様がいくら斬ろうと、魂に傷は入らん!!」


「そうか。なれば———」

 右手に短剣を携え、もう片手に持った刀の刃先をピエールへと向けるフローレンス。奇しくも、その姿はジョンのそれと酷似していた。



「死ぬまで切り刻んでくれよう」



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