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第10話『寝取られ男は出会う』

 はぁ〜、これからどうすればいいんだ俺……。

岩の上に座り込み、頭を思わず抱えてしまう。


 考えなしに貴族の腕掴むとかほんとバカ。

俺のバカ野郎。


俺だけならともかく家族に迷惑かかりかねない事案だから余計厄介なんだよな……あー、スルーしときゃよかったかな〜やっぱり。いやでも、あのまま放置してたら多分ヤバいことになってただろうしなぁ。


「あ、あの」

「うん?」

 鈴のような声が鳴った。

声の方向に顔を向けると、そこには青あざだらけの肌だが綺麗なロングストレートの金髪に深海みたいに色濃く鮮やかな青色の瞳を持つ人形みたいな顔があった。


「ありがと、うございます」

「うん?あぁー。えー、まぁ、いいってことよ。それより君は怪我大丈夫なの?」

 まぁ、人助けは世のため人のためともいう。ぐずぐず後悔するようなもんでもないか。

そう思いつつ金髪妹に傷の具合を聞く。


「あ、だ、大丈夫です」

「いや、明らかに大丈夫じゃないでしょ。ちょっとそこに座りな、塗ってあげるから」

 いつも持ち歩いている首掛けポーチから小さな小瓶に入った茶色の軟膏を取り出す。青あざとか外傷によく効く薬用軟膏だ。こっそり家にあったやつから少し小瓶に移し替えている。


 そういえばこの子も貴族だったな……と思ってしまう。

まぁもう今更か。封を開けた小瓶に指先を突っ込んで、指に付着した軟膏をそのまま青あざや傷に塗り塗りと塗っていく。


「君、庶子なんだって?」

「は、はい。そうです」

「さっきのはお兄さん?」

「……はい、兄様です」

 あんな暴力兄貴持って大変だ。

でもよくよく考えてみると、母親違うだけであそこまでやるのはおかしいな。


 さっきも俺が言った貴族諸法度の事も知ってるみたいだったし、金髪兄は見た感じルール厳守の真面目貴族に思えた。普通そんな人間が庶子ってだけで妹をぶん殴るものなのか……尚更疑問が深まるばかりだ。


「あの、お名前……聞いても大丈夫、ですか?」

「俺の名前?ジョン・ステイメン。ステイメンでもジョンでも何とでも呼びな」

「かっこいい名字……お持ちなんですね」

雄蕊おしべだよ?そんなかっこいいもんじゃないと思うけどなぁ」

 まぁ確かにステイメンって名字は珍しい。 

平民というのはだいたいがスミスだとかテイラーだとかエヴァンズだとかいう名字だ。名字自体が家業とかを示してるし、本来それが普通ではある。


 このブロッサミア王国では花系の名字はだいたい公人関係に多い。


曽祖父が一代限りの騎士爵貰ったことがあるとか父親が自慢してたし、もしかしたらそれ由来なのかもしれない。ちなみにシャムロックは三つ葉の白詰草クローバーだ。 


 昔からクローバーは騎士団の徽章きしょうに使われたり近衛兵の剣の鍔の装飾になったりとか威厳があってロイヤルなものだから、それを家紋と家名にするシャムロック辺境伯家は家格が高い……とか歴史の本にあった気がする。


 まぁそんな由緒正しき貴族の息子の腕をがっしり掴んだのが俺だ。

もうちょい考えてから行動すればよかったな。なんならわざわざ腕掴まずに金髪妹を庇って逃がすだけでも良かったかもしれない。


「君の名前は?」

「私、ですか?」

 すると金髪妹は俺に主に顔付近の軟膏を塗りたくられながら、自分の名を唇で紡いでいく。


「ヴィクトリア・オブ・シャムロック……です」

 勝利者ヴィクトリア

普通、疎ましく思ってるなら庶子にこんな大層な名前着けないよな。ということは親自体はそこまで疎ましく思っていない―――つまるところ、あの金髪兄が独自にやってるってことなのか?

 

「そっか。よろしくね、ヴィクトリア」

 まぁ今、俺にできることは絞首刑にはならないように祈ることだけだな。

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