第7話『寝取られ男と再びの王城』
「まさか、王都内に来ていたとは……迂闊だった。ジョン、同時によくやった。お前はやはりよく出来た弟子だ」
持っていたロープできつく縛ったカタコトの暗殺者を城の牢に持っていくと、聞きつけたのであろう師匠がやってくる。
「そんなことはないよ、師匠。本当に紙一重だった……」
こいつに少しでも銃の知識と見識眼があれば確実に負けていた。 そんな場面であったのは事実だ……まさか、グリップで五回殴って失神するとは思わなかったが。
「この男はゼール、竜教会の司祭だ。司祭直々に暗殺へ来るとは、すでに私達二人の動向はバレているのかもしれんな」
「……へ、へへ……銀虎のフローレンス……お目二かかれテ光栄だゼ……」
牢屋にぶち込まれ対魔効果のある紐で固く縛られたゼールは、目が覚めたのか喉の枯れた声でそう喋りだした。
「"夜影"のゼール。司祭が鉄砲玉とは、いよいよ竜教会も危うそうだな?」
「ハハ……まァ、そウかもしンねぇナ……オレほどの男を───ゲホ、ハァ……捨テ駒に使ウなんて、イヨイヨ終わりかもナ……」
すでに諦めたような声で、ゼールは暗く水っぽい鉄柵の中の地べたに転がりながらそう疲れたような表情を見せている。
頭を強く打って気が弱くなったってわけではなさそうだ。なにか企んでるのか?だが王城でさすがにそれは───。
「そうか。なら洗いざらい話してもらうことにしよう、案ずるな。拷問器具はいくらでもある」
「ヒヒ……だけドお前ラに言う事なんザねェヨ……オレも……モゥ……用済ミ────」
師匠がそう返せば、ゼールはまるで事切れるように言葉を無くし……押し黙り倒れた。
「自死魔術式。先程、魔力反応はなかった……遠隔か。どのみち、このことは想定していた。それよりもジョン、改めて怪我はなかったか?」
「あぁ、怪我一つ無いよ。ただ……師匠。これからどうすれば?」
「ひとまず、今日の情報収集の結果を教えてもらおう。宿は危ない故ひとまず、城内の人払いされた部屋を……」
師匠と話していると、石段がカツカツと響く。
敵かと思い、少し身構えるも……そこにいたのは、ヴィクトリアだった。
「フローレンス卿、師匠。これを見てください」
血まみれのヴィクトリア。
どうやら返り血のようだが、なぜ……。
「ヴィクトリア嬢、それは───!」
「師匠、どうしたんだ?ヴィクトリアも……」
そういって彼女が手に持ったものを見る。
短剣とは別の、もう片方のそれは────。
「魔石?」
「はい、先生。これは肉人形のコアとなる魔石です。敵はこれで魔虫を制御し、私を魅力で傀儡にしようとしたようです」
淡々と話すヴィクトリア。
待て、魅力は事前に分かって対魅力用の魔導具を装備するか、訓練をしないと耐えられない。だが今のヴィクトリアに魅力された人特有の雰囲気はない……となれば。
(この子は、事前に全部読んでたってことなのか……!?)
「……恐れ入った、ヴィクトリア嬢。あなたには感服しました、それで──なにかわかったようですな?」
「えぇ。これに関しては師匠の情報と照らし合わせたほうが良いかと思いまして……行きましょう、お二人の借りられた部屋はすでにこちらから人払いしてあります」




