第4話『寝取られ男、静かな戦闘』
(……さて)
俺、ジョンは今どうすべきか考えている。
人混みの中、お互いに急所へ武器を突きつけ合う状況。
屋台の店主が売り込む声、昼間の買い物に勤しむ家族連れの声、テラスで優雅に茶を飲む紳士の物音、近くの路地裏で猫があくびをして鳴く声。
精神を研ぎ澄ませる。
少しの油断が命取りだ。街中で銃をやすやすと発砲すれば発砲音が響き、余計な混乱を引き起こす。
「オイオイ、どウしたンダ?怖クて撃てねェノカ?」
安い挑発だ。
だが、この男も容易に俺の頸を掻き切ることは出来ない。
こいつは俺がナイフの動きを読めることをさっき理解した。一度理解すれば、余計なリスクは負わない……こいつからはそんな雰囲気がする。
「お前こそ、怖くてナイフを引けないのか?刃を少し引き込めば簡単に頸動脈を切れるだろ?」
「なラ今すグそうしテやろうカ?そレにこのナイフには一滴で人を数十人ブチ殺す毒が塗ラれてルんだゼ?」
力の込められるナイフ。
へぇ、毒ねぇ。
「ならさっきからやたら柄上に手を寄せてるのはなんでだ?お前は万一にでも刃に触れることを警戒しない馬鹿なのか?」
わずかに、ナイフが揺れる。
ハッタリか。
「さて、そろそろ終わらせようぜ。お互い疲れるだろ?」
この男をいかに効率的に仕留めるか、もしくは撃退する方法。
逃げはダメだ、この人混みじゃ効果的にナイフを避けられない。 発砲は論外、花火でもないと音を鳴らせない。刀は抜けない、おそらく俺がまともに運用可能なのは腹前横向きに巻いたベルトに差した小型ナイフのみ。
「……クソガキ、オマエから来イよ」
───あぁ、言わずともやらせてもらう。
俺は撃鉄をわずかに起こし、カチリと引き金を引く。
「バカッ!オレの勝ちダッ!!」
素早くナイフを捨てて回避し、後ろの市民に当てさせようとする暗殺者。あぁ、たしかに普通ならそうするだろうよ。誰でもそうするし、俺でもそうする。
だけどな。
勘違いするなよ。
「俺は撃鉄を"少しだけ"起こしたんだ」
「ㇵ?」
銃声は鳴らない。
否、引き金は僅かに後退しただけで発砲するには至らなかった。
一瞬隙を見せる暗殺者。
俺はそれを逃さず片手でナイフを抜き飛びかかり────奴はそのまま一気に壁際まで押し付けられる!
「な、ナンで。不発?そ、ソンなことガ……」
「おいおい、暗殺には詳しいが銃に関してはまったくのトーシロみたいじゃねぇか?」
予備のナイフなんて抜かせねぇよ。
俺は奴の右手を自身のナイフで手の甲から壁に突き刺し、もう片方は左膝で骨折させるつもりで抑える。
「このピストルにはハーフコックという機能がある。このピストルは引き金を引くと、そこから作動したバネと接続した撃鉄に付けられた火打石が打鉄に激しく下りぶつかって、火花を散らすことで発砲する仕組みなんだ」
「ガッ、ァッ!」
膝を曲げ中腰の姿勢で拘束された奴は苦痛に苛まれる。
何度も反抗しようと試みているようだが、このやり方なら力負けしていても動けはしない。
「だが、撃鉄は完全に下ろさなければ機能しない。一種の安全装置だ、よく考えたもんだよな。だから……ッ!」
俺は銃を空中に投げるとそのまま流れるようにバレルを手に取り握り、金属製の頑丈な保護底が着いたグリップを奴の後頭部目掛けて振り下ろした。
「ギャッ!」
「こうッ!やってッ!」
「ゴッ!?」
「素人を騙してッ!殴り殺すことだってッ!できるんだよ!」
そういって5発ほど殴ると、奴は頭からドクドクと血を流しながらその場に倒れた。
「ハッ……お前が一番なまっちょろかったぜ、暗殺野郎」
そして最後の止めに金玉に蹴りを入れる!
奴はビクッ!と痙攣し、そのまま動かなくなった。
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