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プロローグ

「ジョン、すまないが君は追放だ」

 宿。

パーティーメンバーの集う一室で、俺はリーダーであるフィールからそう伝えられる。


「な、なんでだ?」

「なんでって、それは君が力不足だからだよ。俺たちは明日からA級パーティー。君の実力じゃ俺たちにはついていけないんだ」

 違う。そう確信する。

確かに俺は先天的に属性がない。



 だがそれ故にひたすら自分を磨いてきた。客観的に見ても俺はA級にはついていける部類だと思っている。なのに、なぜだ?



「フィール。今夜も可愛がってくれるのよね?」

 ふと、甘い声が響いた。

ドアの音とともに。


 フィールが驚いた顔をしている。

振り向くと、そこには俺の幼馴染であるエリーゼが呆然とした顔で立っていた。



 肌は上気していて、頬はふんわりと赤く染まっている。服もローブで隠されてはいるが、浮き出た肉体からして下は裸だろう。




「お、い。エリーゼ、どういうことだよ」

「じ、ジョン。なんでここにあんたが……?」


「あんたが、じゃねえよ。なんだよその服装、一体どうなってんだよ!お前、俺と結婚するって、一年前、告白したときに言ったよな。なのに、なんで」




 エリーゼは俺の幼馴染で恋人だ。

魔術と細剣術が得意で、パーティーでは魔導剣士を担当してる。髪は亜麻色ですごく綺麗で傍から見ても美人であると言われるくらいに顔が整っている。



 


子供の頃から俺と一緒で、遊んでて。あいつの純粋なところとか女の子らしいところが好きで。それで、ずっと好きで一年前に告白して受け入れてもらって嬉しくて。



 なのに、これってなんだ?

どうなってんだよ。



「なぁ、フィール」



「な、なんだ」

「お前、イリスとルキナにも好かれてるんだろ?これ、どういうことだよ。まさか2人とも関係持ってんのか?いや、3人になんのか?おい、フィール。どうなってんだよ!」



「うっ、ちがっ」

「違うならなんで人の彼女が裸同然で部屋に入ってきてんだよ!エリーゼ、お前もなんで!」



 すると、エリーゼがいきなり顔を怒りに染めて、俺を蹴り飛ばしてきた。無防備で受け身も取れなく、思わず壁に体を打ち付けてしまう。


「ぎゃーぎゃーうるさいのよ!私は昔からあんたのそーいう女々しいところが大ッ嫌いだったの!」


「は?どういうことだよ!」


「たしかに一年前は受け入れたわ。でもあんたは夜誘っても私に付き合ってはくれないし、それにフィールのほうがかっこいいの!あんたみたいな芋臭いのとは違うのよ!」


 お前は俺に夜誘ってくれた事とか一度しかないじゃないか!


 


 しかも、そのときは俺が結婚資金をためてるって事をお前は知ってたはずだろ!?なんでだよ!




 言葉を喉に詰まらせて、真っ赤に熱くなった顔で二人を見る。


 

そうか、俺を追放しようとしたのも……全部、邪魔になったからか。俺がいると、こういうことになりかねないから。


  








 雨の降る王都で、俺は一人空を見つめていた。

ふざけてる、あんまりじゃないか。


 俺が、こうやって必死に頑張ってきても。

こんな目に合うなんて。



 ふと、道を見ると倒れている人がいた。

近寄ってみると、息が短く絶え絶えだ。もう、長くはないのだろう。




 これからどうしよう。

ひとまず、最後に人助けでもしよう。


 そう言って俺は倒れている人を背負う。

診療所に行けばまだ間に合うかもしれない。



 そういって背負ったまま後ろを振り向いたとき。

眼の前から馬車が迫ってきていた。




 なんだよ。

人助けもさせてくれないのか。




 そして、俺はそのまま空を飛ぶ。

彼女を寝取られてパーティーを追放された上に馬車に轢き殺されて、俺の生は幕を閉じたんだ。

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