マリ先輩のタイプ
カノン先輩との約束を果たすため、マリ先輩とのコラボを取り付けた。今回で何か分かればいいのだけど。
「今日は久々の雑談配信ですけど、最近どうですか? 元気にしてる?」
《うん、おかげさまで〜!》
【本当に最近よく見かけるよね】
【元気満々マリモッコリ⭐︎】
【えっ……もっこ……?】
【↑帰りなさい。】
《それで今回のテーマは?》
「今回はこちらですっ!」
<< 自粛終わったら何がしたい? >>
【これは深いテーマ】
【語り尽くせぬ】
【ありとあらゆる人が考えるよね】
なかなか外出も出来ない今日この頃、想像が膨らむ良いテーマではないかと思ってこれにした。この話題をキッカケにマリ先輩の近頃の動向についてそれとなく探ってみよう。
「私はそうだな、まず家族旅行に行きたいな。毎年行ってる食べ歩き旅行が今年はまだ行けてないから、終わったら寒い地方に行って、蟹でも食べに行こうかなぁ……」
俺の家族はみんな蟹が大好物である。日本人で嫌いな方が珍しいと思うが、バイキング形式のレストランなどに行くと毎回食べ尽くさんばかりの勢いで蟹を食べまくる。そうなったら最後、蟹食い妖怪と化した我が家の住人たちをもう誰も止めることはできない。
【わかる】
【俺も食いたい】
【てことは名産地に行けば会える可能性?】
【マ? じゃあオレ北海道行くわ】
【俺は北陸担当で】
【山陰は任せろ】
【じゃあ俺は側で蟹食って待ってる】
【≧[° _° ]≦ カニカニカニカニ……】
「マリ先輩は?」
《そうだなぁ……私は温泉かな。最近行けてないし、誰かと一緒に行きたいなぁ》
【俺はいつでも暇よ?】
【※聞いてません。】
【常時暇なことだけバラして去るニキ】
【実際誰を連れてくつもり?】
【温泉と言えば好きな人やろ】
【あぁん、色っぽい……♡】
「先輩は誰と一緒に行きたいんですか? やっぱり……好きな人と?」
《えぇ〜、どうしよう》
【知ってる】
【どうせカノンちゃんだろ??】
《やだもぅ……どうでしょう♪》
【これは決まり笑】
【良き良き】
【あ^〜ええんじゃぁ〜】
「ちょっと気になったんですけど、先輩のタイプってどんな人ですか?」
《私のタイプ?》
頃合いを見て本題に入る。カノン先輩のためにも何かしらの情報を引き出さないと。
【実際気になる】
【誰とでも仲良く出来そうだけど】
【なかでもどんな人がええんやろ】
《うーんとねぇ……》
マリ先輩はちょっと考え込んだ後、すぐに好みのタイプを告げる。
《可愛くて、頼り甲斐があって、後、真面目で一生懸命な人!》
【俺氏全滅】
【これはカノンちゃん……ではない?】
【あー違ったか】
【残念やった】
"何ですって!?"と怒る先輩の声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。やはりマリ先輩の想い人は吉田さんなのか。
まあ、今日の収穫と言ったらこの位かな。若干不甲斐ない気もするけど、カノン先輩に分かったことを伝えよう。
「では次の話題に」
《…………………………くない》
ん……?
いきなり何だこのピリピリとした空気は。
「え、先輩なんて?」
《カノンちゃんは、可愛くなくない!!!》
……!?!?
【どうした突然】
【急に吠えるなよ】
何の前触れもなく声を荒げたマリ先輩は、リスナー達に向かって矢庭に宣言する。
《カノンちゃんは、とってもとっても可愛いんだよ! 今から皆に教えてあげるから!》
【いや唐突すぎん?】
【何の流れ?】
マリ先輩、一体どうしたんだろう。
好きなタイプの話じゃなかったの?




