遥かなるレディへの道のり
「次はこれ!」
<< コーデ③:女子高生の制服 >>
今度は光の中からブレザーとスカートを身にまとった俺のアバターが現れる。
【本体ちっさw】
【クラスに一人はいる発育不良のヤツ】
【でも可愛い】
【こんな子にチョコを貰いたかった……】
【あっ】
【やめろ。俺にも効く】
「あれ、何か追加の要望が……」
<<追加コーデ:チョコレート>>
うわ、短時間で凄い沢山きた。
みんなチョコを貰えなかったのか……。
ポンと手元に現れたチョコレートを画面にかざすとコメントが大量に流れてくる。何か現役の学生たちは思いもよらぬ苦労をしているようだ。
【もうチョコレート難民は嫌だ】
【義理チョコの数で競う虚しさ……】
【最早自分で買ってカモフラージュする術を身につけたわ】
【その手があったか】
【策士いて草】
その後もいろいろな格好を試してコーデについて学んだ。これなら瑠美がいなくなった後もまともな服を着て生活できそうだ。
「お次はこれ!」
<< コーデ:ちょっとセンシティブな衣装 >>
えっ……?
【絶妙な際どさ】
【過激すぎないのがイイ】
【スレスレを攻めていく感じよね】
ちょっと胸元とか脇とかが露出するドレスが選択されてしまった。これは今、ちょっとお呼びではない。
「こ、今回はパスで」
【おい】
【何だと?】
【そんなん許されると思ってんのか】
うーん、どうしよう。
これを着るのは理想の"大人のレディ"の像に反する気がするんだが……。
【決して許されない】
【夜来ユウともあろうものが】
【何かの代名詞みたいになってて草】
…………
【バカのくせに生意気】
ん?
なんかまた見覚えのあるコメントが……。
【ここで着なかったらバカじゃない】
【そうだそうだ】
【着なさい】
【着ろ。】
【(¥50,000)オナシャスッ……!】
突然スパチャが投げ込まれた。
動画サイトのギフテッド機能だ。
【うわww】
【有償依頼ニキ出現】
【(¥50,000)俺からも頼むわ】
【(¥50,000)俺も】
【(¥50,000)私も】
【($450)me too.】
…………
す、すごい集まってる……!!
何でこんなことになったんだ?
これじゃ安易に断れないじゃないか!
【(¥50,000)着ーろ、着ーろ♪】
【(¥50,000)脱ーげ、脱ーげ♪】
【(¥50,000)↑通報しました。】
【冗談が通じない通報ニキ】
【そしてそっと支払われるスパチャ……】
【さあ着ろ、着るんだ!】
【Vtuberとしての未来のためだ】
「くっ…………ぅうううううう!!!!」
そうして尊厳と実益を天秤にかけた結果。
「…………どうですか」
【あら可愛い♪】
【着せた甲斐がある】
【スクショしてSNSに上げようぜ】
次々に拡散されていく画像たち。某有名SNSでは早速画像がトレンド入りし、不本意なそれらが飛ぶように広められていく。
【テレワークになってからSNSの勢い凄い】
【めっちゃすぐにイイねとかつくよね】
【イイね10万とか最近だとザラ】
吉田さん、見ないで下さい。多分そんな祈りは届かず、恥ずかしい俺の画像は瞬く間に世界中に拡散されていくのであった。
◇◇◇
寝る前に新しいパジャマに着替えると、何やら隣から足音が響いてきてドアが開いた。
「あっ、瑠美」
光るパジャマもいいけれど、最近は背伸びして普通の人が着るような無地のパジャマも買ってみた。これで瑠美のお眼鏡にもかなうといいのだけれど。
「ふふん。どう? もうダサいだなんて言わせないよ?」
「…………じゃない」
「ん、瑠美?」
「そんなん、アンタらしくない!」
「なっ!?」
せっかく頑張ったのに個性を否定されたような気分だ。突然そう言い放った瑠美はずんずんと部屋の中へ入ってくると、確かめるかのごとく聞いてくる。
「まさかパンツも……?」
「いやパンツは前と同じだけど」
「証拠見せろ」
「え、い、イヤなんですけど?」
「……見せなさいッ!」
「ギャア〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?」
普段はダサいダサい言うくせに、実は案外気に入ってるとかどんだけわがままなの!?
暴走してズボンを引き下げようとする瑠美に必死に抵抗しようとするも、どったんバッタンするうちに段々と摺り下がっていく。
やめて!
苺パンダが!!
苺パンダがコンニチハしちゃうッ!!!!
「おい、うるさいぞ下まで響いて」
「ハァ……ハァ……」
「うぅ、パパァ……」
床に押し倒された俺の上にのし掛かる瑠美ちゃん。下に敷かれたせんべい布団。
組んずほぐれつ。
「ぬわにをやっとるかぁああああ!?!?」
父さんにめちゃんこ怒られた。
主に俺が。
いや、何でだよ……?




