隠し味は愛情かウイルスか。
対決も佳境に入ってきた。するとここで、意外にもホノカの進捗が好転し始める。
「さっきから静かだな?」
【それな】
【本気出してきた?】
【いや、ファンだけどそれはない。】
【あの子は不得意分野ではポンコツ】
【寝返ってて草】
【本能寺の変】
《もう、ちょっと失礼ね。アンタたち私のファンじゃないわけ?》
《……ホノカ、これここに置いとくわよ》
《あ、ママ……今喋っちゃ……!》
【あっww】
【知ってた。】
【やっぱりな】
【流石ファンやわ】
どうやらホノカチームは助っ人を呼び寄せたらしい。
《あらーバレちゃったわよ、ホノカ?》
《ふぇええんん!!!》
「あれどうすんの?」
「うーん。まあ、ああでもしないと勝負にならないから今回だけは許す」
《ユ、ユウ……!》
【いや草】
【もう何でもありw】
【これ、バレンタイン企画だよな?】
【ホノカのチョコには何の思いが込められていると言うのか】
【そんなんママの愛情に決まってるやん】
【……なんやと?】
【それは食べる】
《……あれ、そういえば私の仕事は?》
《うーん、今のところないかな。ホノカはパパと歌でも歌ってて》
《そっか!! パパ、ママが頑張ってる間に盛り上げて一緒に応援するよ!》
《え、ちょ??》
《では歌います、聞いてください!!》
♪パ〜ヤ パ〜ヤ パッパヤッパヤ〜
パッパッパヤッパ〜……
ホノカが宣言した瞬間、伴奏が始まる。
って、このイントロは……。
【おぉ懐かしい】
【デュエットだからこれにしたの?】
【でもバレンタインにこれは……】
<< 曲名 : 3年目の浮気 >>
《えぇ!? 何でその選曲……!?!?》
《………………あなた、まさか?》
《ヒェッ!?》
《♪〜》
パパは死んだ。
ホノカの歌は相変わらず上手だった。
【これは家族会議だな】
【ホノカ父乙。】
【R.I.P.】
《まったく。これだから男性は……》
《あ〜またカノンちゃんそんな事言って!》
【出たお嬢様の炎上発言】
【でも何故か男性は浮気するって言うよね】
【素朴な疑問だけど、誰としてんの?】
【相手は女じゃないん?】
【知らないのか。あれは全員ゲイだ】
【え……?】
【┌(┌^o^)┐】
《もぅ〜あんまりカッカしないの〜!》
《別に怒ってなんか……ムグッっ!?》
【お】
【これは?】
《どうかな、美味しい?》
《……甘いですわ》
【尊い】
【ふつくしい】
【お前ら結婚しろ!!】
【ずっとこれが見たかった……】
さっきから先輩達の株上げが凄い。
ここは俺達も負けていられないな!
「そういやバカ、スパチャは?」
「あっ。申請忘れてたから今度で」
「最初はあれだけだときついよ」
「え、そうなの……」
「うん。他にも何か考えないと」
「えー、同人誌とか?」
「バカ。アレはうちらに一銭も入んねーよ」
「そっか……って、マイク入ってる!?」
【お前ら何やってんの?】
【雰囲気壊すな】
【もう黙れ】
「ご、ごめんなさいにゃん♡」
やっぱりダメみたい。
ごろにゃ〜〜ん♡♡
◇◇◇
勝負もいよいよ大詰め。
各々作った料理を皿に盛り付け始める。
「これってさ、誰に渡すとかあるの?」
「いや別にないけど。ルルミどうしたい?」
「う〜ん……特にねぇな」
「じゃあ今年もお父さんかな。あげないと拗ねちゃうし」
「給料にも響くしね……」
【実際今年はチョコあげるとかないよね】
【でもそのお陰でお父さんは大勝利】
《マリモは世の中が元に戻ったら、チョコを誰かにあげたいと思いますの?》
《えっとねぇ……》
マリ先輩は少し俯きがちに考え込む素振りをすると、カノン先輩の方を見て言った。
《大切な人に、あげたいと思う》
《……改まってそんな風に言うのを見ると、ドキドキしてしまいますわね。貰える殿方は果報者ですわ》
【マリモたんのチョコか】
【金払ってでも欲しい】
【頼む俺に売ってくれ!】
【幾ら出せばええんやろか……】
【皆金で買う前提なのかよww】
【貰えないって割り切ってるの切ない】
【スパチャ567万円出すからオナシャス!】
【↑5万までなんだよなぁ】
【上限突破】
それぞれの料理が出来上がったところで、画面に写真が表示される。チョコクッキーやチョコレートケーキなど美味しそうなお菓子の画像が並んでいる。
【一番はやっぱりホノカママのだな】
【経験値が違うからしゃあない】
【でも他の二つもなかなか】
ここまでは予定調和だ。
本番はこっから先である。
「ということで恒例のアピールタイム〜! どういう風に決めるか投票してぇ!!」
【待ってた】
【ユウのファンからするとおなじみ】
【むしろこっからが本番】
【えぇ……】
【マリモファンの俺、困惑】
【料理作った意味??】
【ぶっちゃけ料理はオマケだ】
【全てはパフォーマンス】
俺のファンからの投票が一番多いかも。
なんせ慣れてますから……。
<< 対決 : 今回の対決で使えなかった方の人がアピール対決をする >>
【"使えなかった方"。】
【分かってしまうんだよなぁww】
なるほど。
そう来たか。
「ホノカ、先輩、勝負だ!!」
《使えなかった方って言わないで〜!》
《ん? どっちの事ですの?》
【お前じゃぁあああ!!!】
【お前に決まっとろうが!!!】
【こいつ頭逝ってんの?】
【それはみんな】
【あ、そうだわスマン】
《なっ、私ですの!? きぃいいい!!!》
《か、カノンちゃん……頑張って〜?》
先輩のへっぽこ具合が明かされたところで次にアピール内容を募集する。
「みんなどんどん送って〜!!!」
【素晴らしい発想を頼む!】
【秘められたお前らの妄想力を覚醒させろ】
【うぉおおおおお!!!(妄想中)】
今回の対決は先輩のイメチェンが目的。
それに最も相応しい対決内容は……。
これだ!!!
<< 対決内容 : 疑似告白をする >>
《な、何ですって!?!?》
さあ、先輩!
イメチェンするんだ!!