オンライン会議
今日は初めての会議の日だ。俺と瑠美はリビングのソファーに並び、タブレット端末とPCをそれぞれ起動させて待っていた。
「まだ誰も来てないのかな?」
「そうっぽい」
【YUUKI】
【RUMI】
双方の画面上には俺達二人のアカウント名だけが表示されている。同僚との初顔合わせにもかかわらず、このご時世ではオンライン会議も止むなしである。
「あ……誰か来たっぽい」
【†幻影の覇者HONOKA†】
《遅くなってごめんなさ〜い! ……って、あれ、まだみんな来てないのか》
「……」
「……」
《良かったー! ちょっと時間過ぎてるけどセーフよね、これ?》
「……うけるんだけど」
「静かにしろ」
《えっ? いま何か言った?》
「別に」
「何も言ってないよ」
《そう? ユウの方が聞き取りづらくて》
「あー……昔のタブレットだから」
自前のPCは現在ゲームをダウンロード中。スマホはもちろん机の下だ。テレワークっていいよね。「夜来ユウ」の名義でやっているSNSの呟きに、ものの数秒で返信してくる人たちがいつも大勢いるのは何でだろうなあ。普通に朝や昼にも呟いてるのに。
まさかみんなテレワーク中にスマホ見て、SNS巡回してるのかな〜?♡
なんて。いい大人がそんな訳ないか。
……ないよね??
【KANON】
【MARI】
《すみません、遅れました》
《みんなお待たせ〜!》
【運営用】
《遅れてしまい、申し訳ありませんでした。それでは会議を始め…………浜崎さん??》
《おや?》
《にゃ?》
【†幻影の覇者HONOKA†】
《ほぇっ? 何ですかー?》
「……ブフォッ!!」
「バカ笑わないでやれよ……ククククッ!」
《なんですかそれ?》
《ホノカちゃん……名前が……っふふ!》
《え、名前………………ハッ!?!?》
気づいたホノカは盛大に大慌てし始める。
《ち、違うんです! これ昔ふざけて作った奴で……! 友達! 友達にやられたの!》
《浜崎さん、気を付けて下さいね》
《は、はい……ごめんなさい……》
「そうだぞ、ホノカ。気をつけろよ?」
《きぃいいい!! 何でアンタら黙ってんのよ〜!!!》
この会議は絶対に長引く。
そう確信した瞬間だった。
◇◇◇
今日は顔合わせも兼ねた打ち合わせ。今後の方針について各自報告するとともに、運営スタッフからも何か連絡があると言う。
カノンさんとマリさんは先輩たちだ。
俺とまとめて後で紹介があるだろう。
《まず最初に、皆に紹介したい方がいます。貴方達のモデリングや元絵を作って下さったイラストレーターの吉田さんです》
《よろしくお願いします……っておや?》
口を半開きにする彼を目にし、俺も思わずあんぐりと口を開ける。彼ってまさか。
《な、ぷ◯きゅあの子じゃないか!?》
【†幻影の覇者HONOKA†】
《え? 吉田さんユウを知ってるの?》
《いや、知ってるというか…………幻影?》
《いやぁあああ! 読まないでぇええ!!》
かくして、波乱の会議が幕を開けた。