罵倒の匠
ホノカにお願い事をできる貴重なチャンスなので不意にしないよう熟考する。とは言えあまり思いつかないな。ここは今回も彼らの力を借りるとしよう。
「じゃあさ、お願いの内容をリスナーたちに決めてもらうのはどうかな?」
《えっ!? そ、それは嫌よ! だってもし前回のアンタみたいに恥ずかしいのがきたらって考えると……! ……きゃぁああ!! 死んでもありえないわ!! あんなの!!》
それ前回の俺に失礼じゃない?
【悲しいなぁホノカさん】
【俺たちを信用してないのかい】
【寧ろどこに信じる要素が……?】
【全員ブルータス】
「仕方ないな、私がいいの選んであげるよ」
《ねぇ、それがむしろ不安なの!?》
【はい始まりました。】
【ありったけのecchiを書き込め】
【YEEEEEES!】
彼女の悲鳴をかき消すようにコメントが投稿される。その中から最もいかがわしそうなコメントを逃さず俺の慧眼が選び抜いた。
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《って、何よこれ!?!?》
【すまん、あんまり思い浮かばんかった】
【これが発想の限界……】
【いや素晴らしいぞ】
【よくやったお前ら】
【ファンだけど尊敬に値する】
【この子が来ると必ず美味しいイベント発生するんだよな……】
【幸福の青い鳥】
【それ多分邪神の間違い】
「じゃあ行くよ〜ホノカちゃん♡」
《え、何? もう始まってるの?》
こんなこともあろうかと俺は日頃からメスガキに罵倒される系の音声作品に慣れ親しんでいる。断じて趣味を兼ねた遊びなどではないので、皆くれぐれも注意されたし。
「お姉ちゃん、また私との勝負に負けちゃったんだね♡ いつもいつも同じように負けて、本当はわざとやってるんじゃないかって心配になるよ♡ もう、知ってるんだから♡ お姉ちゃんはドMの変態だもんね♡ 私に罵られるのクセになっちゃったんでしょ♡ 可哀想だから正直に答えたら罵倒してあげる♡」
《ちょ、何!? 取り敢えず勢いが凄いけどどうするのが正解!?》
【別に正解とかはない】
【黙って聞いてればおk】
【あー耳が浄化される】
【いっそ丸ごと浄化されろ】
【すまん。お前の罵倒は求めてないわ】
【ホノカファンだけど今日コメ欄やばいw】
【今回は一段と酷い模様】
【地 獄 絵 図】
《え、はい、あの……すみません?》
「ちゃんと言えたね、えらいえらい♡ じゃあしょうがないなぁ……今から罵ってあげる♡やーい、ざーこ♡ ざーーこ♡」
【ィェァアアア!!】
【素晴らしい】
【神回確定】
【コラボの次の日にこんなん見られるなんて生きててよかった……】
【普段どんだけ生活に希望ないの?】
【お前らもっと喜び噛み締めて生きろ】
【あ視聴者増えてきたww】
【幼女が罵倒してると聞いて来ました。】
【もう趣旨変わってて草】
《あ、アンタそんなこと言ってると、また切り抜きされるわよ!》
「いやぁ、もうぶっちゃけ手遅れかなって」
【それな】
【実際それ】
【既にホノカのもあるしな】
【大したことないシーンをそれらしく見せる切り抜きの匠】
【どんな匠ww】
【大改造されそう】
【一般はユウだって分かってるけどルルミ厨の俺としてはあの切り抜きを推したい】
【あー、例のアレな】
【エロく聞こえるセリフ集ね】
【一般とは……】
【垣間見る病み】
「ルルミのセリフ集……!?」
【食いつくなww】
【妹のやぞ】
【これは百合キタ】
【言って平気? これホノカの配信だけど】
【あっ】
【ルルミ : バカてめぇ(怒)】
「え……?」
ドス! ドス! ドス!
ガチャ。
「この前の折檻で分かんないとか"解らせ"方が甘かったかな?」
【この前の折檻で分かんないとか"解らせ"方が甘かったかな?】
「……うん?」
変だな。
どうして瑠美のコメントは音声付きなの?
【後ろwww】
【あーあ】
【今日はこれにて終了】
《え? え? み、みんなまたね〜!》
【おつ〜】
【乙〜!】
【お疲れ様ー!】
【またね〜】
「ま、またね〜……?」
みんな一斉にどうした?
あれ、なんか机の影が濃いぞ。
「!?!?!?」
「そんなにセリフ集が聞きたかったら……」
る、瑠美!?
まさかまた4の字固めされちゃうの!?
脚だ、今度こそ脚をガードだ!
「独りでお前が出せぇええええええ!!!」
「ひやぁああああん!?!? く、くしゅぐりぃいいい!?」
あ、あかん!
脇腹はガードしきれな……。
「あはははははははははははは!!!」
ダメだ息が続かない!
酸素……呼吸……。
「はぁ……ゴホッ……えほっ……ぐるじい、だずげて……」
「もう降参? やーい、ざーこ♪ ざーこ♪」
「いやぁああああああん! ゆるしてぇえええええ!!!! はぁあああッッ♡♡!!」
【おっ切れてないやん】
【サンクス】
【切り抜き班よろー】
夜来ユウボイス集、制作決定。