カラオケ対決!
話で場が温まり、雑談もいよいよ盛り上がりを見せつつある。次もどんどん行こう!
「はい! 三通目! ラスト!」
<< こんばんわ! おはようございます! 可愛いお二方に質問です。最近あった失敗談を教えて下さい!>>
《何故かこれ系の質問が多いのよね》
「ああ、何故だろうなぁ」
【何となく察しがつくw】
【豊富にありそうだからや】
【話題に困らない気遣いできるファンの鑑】
《失敗談か、そうねぇ……》
羽咲ホノカは考え込むように一拍置いた。あまり思いつかないようなら俺から先に言った方がいいのかな。幸いネタは尽きないほどにあるし。
《ぱっと思いつくものだと、前にお父さんと買い物に出かけた時に店の人に『奥さん』って呼ばれたことかしら》
「ブフォ!?!?」
《いやほら、今みんなマスクしてるじゃない? ちょうど休みの日にオシャレとかせずにお母さんのコート借りて出かけたのよ。ちょっと赤っぽい派手目な色の。それで家電量販店のカメラ売場とかにいたわけ。そこで店員さんに何か質問したら、おじさん店員が最後に笑顔で『奥さん、分かった?』って聞き返してきてさぁ。いや流石にアンタの同世代じゃないんですけど!? ってなったわ》
【これは笑】
【ババア顔確定ワロww】
【BBAじゃん】
【老け顔ってはっきりわかんだね】
《誰が老け顔よ!! その時は喉も痛めてたの! 本当なんだから!》
「クククッ……!」
《笑うなアホ!!》
「ご、ごめんごめん。私はそうだな、主に自業自得系が多いかな。この前もファンから届いた衣装着てコスプレしてたらテンション上がってきて、何となくカーテン開けたら家の前の道路歩いてる会社員と目があっちゃってさ。コレはもうかますしかない! と思って小さい子っぽく手振ったら笑って振り返してくれた」
【微笑ま】
【そんなん遭遇して会社行きたいわ】
【あ〜、あれユウちゃんだったか〜】
【それ俺】
【いや多分俺】
【今度から他所の家のカーテン注意深く見ることにするわ】
【通報不可避】
《なんかズルくない? あんただけ》
「そ、そんなつもりじゃ……!」
【ジェネレーションギャップ】
【お婆さんと孫】
【ホノカ婆】
《きぃいいい! 誰よ今ホノカ婆とか言った奴!!!》
「お、落ち着いてホノカちゃん! もう次行こう!」
収集がつかなくなる前に打ち切る。
《ちっ……これで雑談は終わり?》
「き、気を取り直して今度はカラオケ配信に進もう〜!」
【逃げたな】
【全く最近の若者は……】
【ここって年寄りも見んのか】
【幅広い階層に人気】
「続いてはカラオケ配信! 今日はなんとただの歌配信じゃない! 私とホノカちゃんでどっちが高得点か勝負する対戦形式だよ!」
《勝負って勝ったら何かあるの?》
「うーん、じゃあ勝った方は負けた方に何かお願い出来るっていうのはどう?」
《面白そうね! やりましょう!》
【婆さんいるけど大丈夫?】
【疲れて倒れたりしない?】
【老人の冷や水】
【ご老体に鞭打つのも大概に】
《きぃいいい!!!》
「はっ、はじめるよ! スタート!」
カラオケ配信と言っても採点機能付きの機材を使って歌うだけだ。実際に店へ赴くのは今の時期なかなか難しい。
《じゃあ私から歌うわ! 皆よく聞いてなさい! 婆さんなんて言わせないんだから!》
【お婆さんに失礼ですよ?】
【やめろ小学生】
【血圧上げてやるなよ】
《ユウちゃん早く準備して!》
「はっ、はい! それではどうぞ!」
振りと共に曲名が表示される。これは去年爆発的に流行った某アニメの主題歌だ。定番中の定番ではあるだけに歌い手の実力が多くの人に分かってしまう曲でもある。
【まずこれか】
【定番よな】
【あの年に歴代記録塗り替えるとは】
【日本人アニメ好きすぎやろw】
【一体あれで何人感染したのか……】
【やめなさい!】
【不都合な真実で草】
《♪♪♪〜♪♪♪〜……》
【おっ?】
【普通に上手くね?】
【てかめちゃ上手い】
《……♪♪♪ーーーー!!!!》
【鳥肌立った】
【進めぇえええ!】
【うぉーーー!!】
予想はしていたけど流石に上手い。羽咲ホノカは雑談やゲーム実況などでも知られているが、中でも歌配信は別格の人気を誇る。歌っている場面の切り抜きが大量にサイト内に出回り、そのどれもが高い再生回数を記録するのでvtuberに詳しくない人でも彼女を知る人は多いのではないだろうか。
【羽咲ホノカって歌上手いんだ】
【人気出るはずだわ】
【別の動画も気になる】
【凄え歌手並】
【言っとくけどこれ生だからな?】
サビに差し掛かる前に視聴者の人数が急激に増えていく。彼女が歌うと聞きつけた人達が次々と参加してきているんだ。
《……♪♪♪……♪♪♪〜〜♪♪♪〜〜!!!》
【ここ好き】
コメント欄が大人しい。彼女の抜けるような高音がマイクを通じ世界に広がっていく。vtuberとして一緒に歌配信を出来るのも今のうちかもしれないな。彼女が大成した暁には必ず今日のことを自慢させて貰おう。
【これが羽咲ホノカだ!】
【正直舐めてた】
【婆さんとか言ってすまん】
【これが無料で聞けるなんて良い時代だ】
《……♪♪♪♪♪〜〜♪♪♪♪!!》
「……はい! みんな拍手〜!!!」
【おつかれ〜!】
【圧巻】
【素晴らしい!】
【YEEEEEEES!!!!!】
英語のコメントまできた。
まさか、海外の視聴者まで!?
《ハァ……ハァ……》
「ホノカちゃんすごい! 本当に上手!」
《ふ、ふん……当然よ……!》
「だ、大丈夫? 息切れしてるけど」
【だから無理すんなって】
【婆さんの癖に最近の曲も知ってんだな】
《きぃいいい!!!》
「あ、元気出た。じゃあ次は私の番!」
【期待大】
【楽しみ】
【きっとこっちも上手いんだろうな】
って、あれ?
もしかしてこの後に歌うのか……?
「でっ、では。いきます!!」
《ユウちゃん! ファイト〜!!!》
俺もホノカに合わせてアニソンにした。こちらも非常に有名なタイトルだ。90年代の曲にも関わらず、未だにその人気は衰えることを知らない。
【お、こっちも】
【映画来るってマ?】
【空白の八年】
《今は曲に集中〜〜! サンハイ!》
「♪〜♪♩〜♪♩♪♪♪〜♪♩♩♪〜〜」
【は??】
【え、マ?】
【冗談言ってる?】
【oh my god・・・】
《o……oh……ユウちゃん》
あ、アカン!
助けてええええ!!
「♩〜♩〜……!!」




