コラボ!!
画面上の配信ボタンに指をかける。今日が運命のコラボの日。今後の成長をスムーズに出来るかどうかを左右する瞬間だ。
《準備はいい?》
「おっけー!」
ホノカとは何度か連絡を取り合い、配信の内容を決めた。PC画面には早くも待機人数を示す数字が表示されている。一万人超えの視聴者相手に上手くアピール出来るだろうか。
《せーのっ!》
「せーのっ!」
《こんばんわーー!!!》
「お待たせー! 始まるよー!」
【始まったぞ〜】
【おまちかね】
【こんばんはー♪】
【待ってました!】
【楽しみや】
【どんな話すんのかな】
【今来た】
【二人ともかわいい!】
【小さい方初めて見るな】
【羽咲ホノカ見たの地味に初】
………………………………。
とても目が追いつかない!
開始から既に二分ほどが経過し、大勢の人が詰め掛けている。固定の視聴者の数も二人分なので、相乗効果で平時の数倍コメントの数が多いのだ。
普段にも増して勢いがすごい。
これがコラボの熱量なのか。
《まず自己紹介からね! 羽咲ホノカです!
今日はユウちゃんのチャンネルにお邪魔させて貰ってます。みんな、よろしく〜!!》
【はじめまして!】
【声可愛いな】
【元気な子は◎】
流石はホノカ。先輩なだけあって手慣れている。こっちも負けていられないな。ホノカのファン達にしっかりアピールせねば!
「あっ……あっ……えっと、いつもこのチャンネルで配信してる夜来ユウといいます! vtuberです! よろしくお願いします!!」
【かわいい】
【Vなのは知っとるわw】
【ボイチェン?】
【地声やぞ。ルルミの乱入動画見てこい】
【あれで証明されるとは草】
【今夜も光るパジャマは健在か?】
【エッッッ……!】
【↑お前いい加減にしろ】
……なんだろう。
明らかに自分の普段のファン達だと分かると安堵してしまう。俺にもファンっているんだよな。応援してくれる人達に恥じぬよう、精一杯今日を乗り切らないと!
《ユウちゃん、今日の予定は?》
「はいっ! 今日は雑談とカラオケ配信! リスナーからきたお便りや質問に答えつつ、お互いについて知れたら嬉しいな!」
《オッケー! 早速いくわよ! みんな準備はいい〜!?》
【おっけー!】
【いいゾ〜】
【ええで】
【はよ始めんかい!】
「あははっ! みんなありがとう。まずはお便りからだな。一通目はこれ! はい!」
<< おはこんばんわー! 二人とものファンなので、コラボと聞いてすごく楽しみにしてました! 初絡みの二人だけどお互いの印象はどんな感じ?>>
《なるほどいい質問ね! 最初に私がユウちゃんを知ったのはルルミの配信からだったんだけど、デビューするなり瞬く間に話題を攫って、スゴイ子が出てきた〜! っていうのが第一印象だったわね》
【わかる】
【実際すごい】
【始まって未だ一ヶ月も経ってないのに配信も安定してる】
【古参です】
【小ちゃくて可愛いから好き!】
【ロリ神様】
【今の俺の生きがい】
あ……温かい! そんなに褒められると嬉しすぎて舞い上がりそうだ。
「て、照れるな。皆ありがとう。私はルルミを通して知ったのがまず最初で、とにかく可愛い子だな、っていうのが最初も今もホノカちゃんの印象だな」
《いや〜上手いこと言っちゃって〜♡ こいつぅ〜〜!!》
【チョロいww】
【愛され上手だな】
【こいつは伸びる……!(確信)】
彼女のアバターの外見は髪を茶色に染めた少女で、ブレザーを着た高校生のような格好をしている。正直現実のイメージと余り乖離がない。
一方俺のアバターは桃色の髪の毛を高い位置で二つ結びにし、洋画に出てくるプリンセスのようなドレスを身に纏っている。一部の層には堪らないであろう濃いデザインが目を引くのが特徴だ。
《でも後で話してみたら意外と話しやすいっていうか、ルルミと違って親しみを覚えるタイプね。この子となら仲良くなれそう、ってその時思ったわ》
【 "ルルミと違って" で草】
【言ってやるなww】
【初コラボで喧嘩したのは黒歴史】
【何それ見たい】
【確か切り抜きあったよ】
【サンクス! 行ってくる!】
そうそう。こういうのがコラボの醍醐味だ。お互いを通じてファン同士が交流することで双方について知ってもらうことが最大の魅力であり、目的でもある。
《そろそろ次行こうかしら?》
「はい! 二通目はこれ!」
<< 絡みの多い二人に質問! ルルミの事は実際どう思ってるの? >>
「ライバル」
《天敵》
【何故この質問選んだww】
【結果見え見え】
【これ絶対本人見てるだろ】
【ルルミ:<◉><◉>見ているぞ〜】
【↑今配信中だからそれはない】
【後でゆっくりお仕置きされるんやで……】
《本当っぽいからやめて!? そ、そうね。あの子に実力があるのは認めてやるわ。努力家だし雑談も上手いし。でもちょっと素直じゃないのが珠に傷かしら》
「それは分かる。自慢の妹だけど乱暴で口が悪いのは確か。主に私に対して。私ここ何年かバカ以外で呼ばれたことないよ? ねぇ酷くない? ねぇ?」
【いやそれ単なる事実】
【本当のことやし……】
【流石妹、よく分かってらっしゃる。】
「いや、お前らも酷くないっ!?!?」
【この流れ好きw】
【ノリいいね笑】
【段々クセになってくる感じ】
【俄然興味出てきた】
掴みは上々。けど、勝負はこれからだ。
コラボはまだ始まったばかりなのだから。




